次世代PET

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作成： 2004/09/07 大西輝明データ番号　　　：040300 次世代PET 目的　　　　　　：次世代PETとその周辺技術の開発放射線の種別　　：ガンマ線,陽電子放射線源　　　　：生体投与した標識放射性同位元素線量（率）　　　：20-50kBq/mL 利用施設名　　　：放射線医学総合研究所照射条件　　　　：大気中応用分野　　　　：核医学、創薬、再生医学概要　　　　　　：　PET（陽電子放射断層撮像法）は放射性の¹⁸F標識デオキシグルコースなどを体内投与し、これから出る陽電子消滅放射線を体外計測して生体組織の機能画像を得ようとする技術である。これを用いれば生体内の様々な生理パラメータの時間変化を3次元的に探ることができ、核医学のみならず創薬や再生医学の分野においても、その発展と活用とが注目されているものである。詳細説明　　　　：　体内から出る消滅放射線をセプターと呼ばれるコリメータに通し、セプターに平行な人体層毎にX線CT手法を転用した画像再構成法を適用するのが従来のPET（陽電子放射断層撮像法）データ処理法である。この方式で近年、PETとX線CTの両者から画像を得るPET/CT技術が開発されている（原論文１）。図1　A schematic of the combined PET/CT showing the PET components mounted on the rear of the CT support. The axial separation of the two imaging fields is 60cm. The entire assembly within the gantry rotates at 30 rpm. The co-scan range for acquiring both PET and CT is 100cm (maximum).（原論文1より引用）　一方、セプターを除去し、斜め方向から入射する放射線についても高分解能と高感度とを保証する３次元位置検出器（DOI検出器）装着のPETが、第３世代PET装置または次世代PET装置と呼ばれるものである。これら新旧両PET装置の性能目標を表１に示す（参考資料１)。表1　頭部用次世代PET装置の性能目標（参考資料1より引用） ---------------------+---------------------------+---------------------------- | 現在の商用PET装置 | 次世代PET装置 ---------------------+---------------------------+---------------------------- 検出素子 | BGO | GSO 検出素子段数 | 1段 | 4段検出素子数 | 12,000個程度 | 120,000個以上受光素子 | 光電子増倍管(18㎜角) | 52mm角の位置感応型PMT 検出素子数／受光素子 | 16個程度 | 1000個以上検出器ユニット数 | 250個程度 | 120個以上体軸視野 | 15㎝程度 | 25㎝以上同時計数番地 | 10M(10⁷)程度　 | 1G(10⁹)以上データ収集モード | ヒストグラムモードのみ | リストモード解像度 | 5㎜ | 3㎜感度 | 30kcps/MBq程度 | 100kcps/MBq以上同時計数時間窓 | 20ns程度 | 8ns以下同時計数転送速度 | 2Mcps程度 | 10Mcps以上 ---------------------+---------------------------+---------------------------- 　　　　　(注)BGO(ゲルマニウム酸ビスマス),GSO(ケイ酸ガドリニウム) 　　現在までにいくつかのタイプのDOI検出器が提案されているが、これらの中で、同一のシンチレータ素子を３次元的に配置して光分配する方式は、波形弁別の必要がない点で優れている。放射線医学総合研究所で開発中の次世代PET装置「ｊPET-D4」では、2.9×2.9×7.5cm3の小型シンチレータGSO（ケイ酸ガドリニウム）結晶を２行２列に置き、これを４段に重ねて３次元的に配置したものをDOI検出器の１単位としている。当該検出器は３次元光分配方式と波形弁別方式とを併用したものであり、GSO結晶素子の第１および第３層目のCe濃度を1.5mol%、第２および第４層目を0.5mol%とすることにより蛍光減衰時定数がそれぞれ37および60nsと、異なった値を持たせ、弁別機能を高めている。この検出器単位をさらに8行8列に配置し、52mm角で256チャネル・アノードの位置感応型光電子増倍管に光学結合している。これを１ユニットとし、リング状に24ユニット、体軸方向に６ユニット並べたものがjPET-D4の人体頭部用PET装置である（原論文2）。図2　Schematic representation of the detector module (left) and an example of the detector ring geometry (right).（原論文2より引用）　jPET-D4の体積は9㍑、重量60kg、検出器リング直径382mm、体軸視野258mm、視野中心での受容角33O、幾何学的検出効率は0.54である。これによってjPET-D4は解像度を従来の5mmから3mmに高め、感度を従来の3倍、すなわち検出時間を従来の1/3に短縮することが可能である。　次世代PET装置のこうした高性能化のためには、単にDOI検出器の導入のみではなく、そのフロントエンド回路では特定用途向け集積回路も導入して高密度化と並列処理化を図り、また様々な要素技術についても見直しを行い、新規技術の開発を図ることが重要となる。これらの要素技術間相互の関連性を図３に示すとともに、それらの進歩の概要を以下に記す（参考資料１）。図3　次世代PET装置の要素技術（参考資料1より引用）　シンチレータの発光量を増す技術として、最近ではLuAP:CeのようにLuを含む結晶に微小量のCeを添加する方法が採用されており、Luの長寿命放射性同位体による自然発光を検出器の保守に利用しようとする試みもある。また、662kevのγ線に対してエネルギー分解能が約3%、蛍光減衰時定数が約30nsのLaCl₃やLaBr₃も注目されている。　さらに、最近の受光素子開発の進歩も著しく、PET用の小型シンチレータの高密度配列に対しても充分高い位置弁別性能やエネルギー特性が実現され得るものに改善されつつある。これと同時に、受光素子から得られる出力信号を高速処理するため、回路の占める容積をできるだけ小さくした高速データ処理用フロントエンド回路や、並列処理回路の開発も行われている。　　多くの情報を少ない容量で記録するにはリストモードによるデータ処理が有効であるが、PETではこのモードによって時間情報を保持したデータを集積し、組織内放射能の時間曲線の精度を改善する手法が開発されつつある（原論文３）。また、リストモードデータ収集により動態機能画像再構成の高速化や体動補正が容易に実現できるため、次世代PETにとっては当方式採用の意義は大きい。一方、種々のタイプのPET装置の最適設計のため、あらかじめ当該装置での計測を計算機内でシミュレートする技術の高度化や、DOI検出器の様々な幾何学的配置における応答関数を算出するシミュレーションも行われつつある（原論文４）。コメント　　　　：　PET診断を広く普及させるには検出時間の大幅な短縮が要請され、このため、装置の高感度化と応答の高速化が必須となる。これらのためにはDOI検出器のさらなる高密度化と、取得データの並列処理化とが進められねばならない。同時に、高速同時計数回路やデータ収集法の開発、吸収および散乱線補正法などの関連技術の改善も図られねばならない。jPET-D4の開発に要求されるこうした様々な要素の技術革新は容易であるとは思えないが、現在、着実に発展中であり、近い将来におけるjPET-D4の完成に期待したい。原論文１ Data source 1： PET/CT Scanners: A Hardware Approach to Image Fusion D.W. Townsend, T. Beyer^*, T.M. Blodgett^*^* Department of Medicine, University of Tennessee ^*Department of Nuclear Medicine, University of Essen ^*^*Department of Radiology, University of Pittsburgh Seminars in Nuclear Medicine, 33, 193-204 (2003) 原論文２ Data source 2： Count Rate Analysis of PET Scanner Designs Based on a GSO Depth of Interaction Detector With a Large-Area PS-PMT K. Kitamura^*^,^*^*, M. Amano^*, H. Murayama^*^*^* ^*Shimazu Corporation ^*^*National Institute of Radiological Science ^*^*^*National Institute of Nuclear Sciences IEEE Transaction on Nuclear Science, 49, 2218-2222 (2002) 原論文３ Data source 3： Resolution recovery for list-mode reconstruction in SPECT L.R. Bouwens*, H.Gifford**, R.Van de Walle^*, M.A. King^*^*, I. Lemahieu^*, R.A.Dierckx^*^*^* ^*ELIS Department, Ghent University, Belgium ^*^*University of Massachusetts Medical School ^*^*^*Nuclear-Medical Department, Ghent University Hospital Physics in Medicine and Biology, 46, 2239-2253 (2001) 原論文４ Data source 4： The ECAT HAAT : Performance and First Clinical Application of the New High Resolution Research Tomography K. Wienhard^*, M. Schmand^*^*, M.E. Casey^*^*, K. Baker^*^*, J. Bao^*^*, L. Eriksson^*^*,^*^*^*, W.F. Jones^*^*, C. Knoess^*, M. Lenox^*^*, M. Lercher^*, P. Luk^*^*, C. Michel^*^*^*^*, J.H. Reed^*^*, N. Richerzhagen*, J. Treffert**, S.Vollmar^*, J.W. Young^*^*, W.D.Heiss^*, R. Nutt^*^*^*^*^* ^*Max-Planck Institute for Neurological Research ^*^*CTI PET Systems,Inc., USA ^*^*^*Karolinska Institute, Sweden ^*^*^*^*Catholic University of Louvain, Belgium ^*^*^*^*^*CTI, Inc., USA IEEE Transaction on Nuclear Science, 49, 104-110 (2002) 参考資料１ Reference 1：次世代PET装置の開発村山秀雄放射線医学総合研究所 RADIOISOTOPES, 53, 179-188 (2004) キーワード：陽電子放射断層撮像法、核医学、放射線検出器、深さ方向位置情報、シンチレータ、計装、量子イメージング、リストモード再構成、イメージング・シミュレーション positron emission tomography (PET), nuclear medicine, radiation detector, depth of interaction (DOI), scintillator, instrumentation, radiation imaging, list-mode reconstruction, imaging simulation 分類コード：040203, 040301, 040304
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