RI計測を利用した高速道路盛土の品質管理

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作成： 2004/10/01 北村　佳則データ番号　　　：040278 RI計測を利用した高速道路盛土の品質管理目的　　　　　　：高速道路盛土の品質管理放射線の種別　　：ガンマ線,中性子放射線源　　　　：⁶⁰Co(2.6MBq), ²⁵²Cf(1.1MBq) 照射条件　　　　：大気中応用分野　　　　：コンクリートの品質管理、地盤調査概要　　　　　　：　高速道路の盛土は、道路構造物の最も基本的な構造物であり、安定した盛土を構築することが要求される。このためには、土の締固めの管理を十分に行うことが重要であり、土の密度などを測定することにより品質管理が実施されている。高速道路では、放射線技術を利用し、土の密度や水分量を測定することにより品質管理を行う手法が適用されている。最近では、コンクリートの品質管理などでも利用され、非破壊検査手法として種々の応用が期待される。詳細説明　　　　：　高速道路は、土を切盛りして構築する土工、コンクリートやスチールなどにより構築する橋梁・高架橋、トンネルなどにより構成される帯状の連続構造物である。これらのうち、盛土は、道路構造物の最も基本的な構造物であり、安定した盛土を構築することが要求される。降雨や地震などの外力に対して安定した盛土を構築するためには、土構造物の材料である土をよく締固めることや排水処理を確実に行うことが非常に重要となる。　　土に力を与え、土の中にある空気を追い出し、締り度合いを増すことを“土の締固め”といい、土を締め固めると、図１に示すように、間隙が減少し、密度が増加する。このことにより、①圧縮性の低下、②せん断強さ・変形抵抗の増大、③透水性の減少などが図られ，安定した盛土を構築することができる。図1　土の締固めの概念図（参考資料1より引用）　従来、砂置換法や炉乾燥法と呼ばれる試験方法などで、土の締固めの度合いを示す密度ならびに水分量の測定が行われてきたが、測定結果を得るのにかなりの時間と労力を必要とした。これらの課題への取り組みとして、放射線技術を応用した密度計および水分計（以下「RI計器」という。）が開発され、このRI計器を利用した盛土の品質管理が現在主流となっている（原論文１）。図2にRI計器の概略図を、図3に現場でそれを使っている様子を示す。図2　RI計器の概略図（参考資料1より引用）図3　現場におけるRI計器による盛土の密度測定　図２に示すようにRI計器は、あらかじめ設けられた孔（土中20cm）に挿入される線源部と放射線を検出する検出部および測定された計数値から密度や含水比を算出する演算部から構成される。さらに、計器には、プリンターが装備されており、盛土の品質管理に必要な情報を同時に印字する機能を持つ。　　密度計は、ガンマ線源（⁶⁰Co）を先端に封入した線源棒を地中に所定の深さまで挿入し、地表面におかれた検出器（GM（ガイガーミューラー）管）に入射する透過ガンマ線の強度から物質の密度を求めるものである。ガンマ線と物質との間では、光電効果、コンプトン効果、電子対生成など、いろいろな相互作用があり得るが、密度測定に特に関係があるのはコンプトン効果で、密度計に用いられる線源から放射されるガンマ線のエネルギー領域は、コンプトン効果が得られる１MeV程度である。ガンマ線が土中を通過する場合に、コンプトン効果でガンマ線強度が小さくなる割合は、途中で出会う電子の数に比例する。すなわち、一定の大きさの物体を考えれば、単位体積当りの電子密度に比例して物質の密度が大きくなり、ガンマ線が抜け難くなる。　　水分計は、中性子線源（²⁵²Cｆ）と検出部（³He（ヘリウム3）管）との間にある土中を通過してきた速中性子を検出するものである。中性子は、重い原子核に衝突するとはじきとばされるが、水素の原子核（陽子）に衝突するとエネルギーを与えて熱中性子となる。高速中性子が様々な原子核からなる物質の中に入っていくと、その中に水素原子核が多く含まれているほど、中性子は水素原子核との衝突で急速にエネルギーを失い、速中性子が熱中性子（低速中性子）になる。従って、透過速中性子の強度（速中性子を熱中性子に変化させて検出）を測定すると、物質中の水素原子核の密度が推定できることとなり、土中の水分量を評価することができる。図4に密度計および水分計による土の密度および水分量の測定の概略図を示す。図4　土の密度、水分量測定の概念図（参考資料１の図を一部変更）　高速道路建設に放射線技術を利用しているのは、盛土の品質管理の他にも、地盤の調査、コンクリートの水分量の測定などがある。今後、いろいろな分野での技術が、土木の分野で要求する技術に適合するものがあれば積極的に取り入れ、建設の効率化・省力化、コストの縮減が図られることが望まれる。コメント　　　　：　高速道路の各構造物の品質管理は、品質向上、耐久性向上のためにも継続的に取り組んでいかなければならない課題である。現在、全国の高速道路の盛土の品質管理は、RI計器を用いた管理方法が標準となっており、施工管理要領（日本道路公団）にて基準化されている。今後もこのような非破壊検査手法の技術開発が望まれる。原論文１ Data source 1： RI計器による盛土の締固め管理瀬在　武、三嶋　信雄、井口　忠司日本道路公団第20回土質工学会研究発表会講演集 (1985) 原論文２ Data source 2： RI計器を利用した盛土締固めの品質管理五十嵐　己寿、瀬在　武、三嶋　信雄日本道路公団第16回日本道路会議論文集 (1985) 原論文３ Data source 3： RI計器の導入と盛土の締固め管理石井　恒久、三嶋　信雄日本道路公団日本道路公団試験所報告　Vol.23 (1986) 参考資料１ Reference 1：高速道路建設におけるRI計測の利用－盛土の品質管理への応用－北村佳則日本道路公団放射線と産業、96号、29-35 (2002) 参考資料２ Reference 2： RIによる土の密度試験（社）地盤工学会地盤調査の方法と解説、592-604 (2004) キーワード：密封線源、ガンマ線源、中性子線源、盛土、締固め、品質管理、現場密度試験、密度、水分量、含水比、非破壊検査 sealed radiation source, gamma-ray source, neutron source, landfill, bundling and hardening, quality control, field density inspection, density, water amount, water content, non-destructive inspection 分類コード：040204, 040205, 040301
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