放射線関連量の国内トレーサビリティ

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作成： 2002/12/2 鈴木　功データ番号　　　：040269 放射線関連量の国内トレーサビリティ目的　　　　　　：放射線計測値の保証放射線の種別　　：エックス線,ガンマ線放射線源　　　　：X線発生装置、⁶⁰Co(148TBq，他)、¹³⁷Cs(34TBq、他)、γ線利用施設名　　　：（独）産業技術総合研究所計測標準研究部門量子放射科放射線標準施設照射条件　　　　：0.1μC/kg～0.1C/kg 応用分野　　　　：原子力施設、放射線防護、医療診断、治療、照射試験、非破壊検査、単位の設定（標準の開発と確立）概要　　　　　　：　放射線測定器の目盛りの正しさを保証してゆく計量法トレーサビリティ制度では、防護レベルのX線、γ線について、（独）産業技術総合研究所（産総研）の平行平板型自由空気電離箱式照射線量設定装置、グラファイト壁空洞電離箱式照射線量設定装置が特定標準器に指定されている。認定事業者4機関が特定二次標準器で校正業務を実施しているが、二次標準器によって校正された常用参照標準を用いても認定事業者になることができる。放射能分野においても1機関が認定事業者になっている。詳細説明　　　　：　放射線から人体を守る、あるいは放射線を有効に利用するためには放射線を正しく計測する必要があり、その計測法は産総研について重要なエネルギー強度範囲において標準として確立されており、国際的斉一性も確認されている。それらの値の正確さが正しく一般ユーザーまで行きわたることが不可欠であるが、それらを保証する制度として計量法にトレーサビリティ制度が1993年に取り入れられた（JCSS制度）。トレーサビリティ制度とは、一般の計量機器の値がある不確かさの範囲で国家標準と切れ目なく継がっていることを保証する制度であり、その継がり具合は“不確かさ”で表わされ、それを明瞭にして値を移すことを“校正”と呼んでいる。　　計量法におけるトレーサビリティのスキームを図1に示す。図1　計量法トレーサビリティ制度のスキーム(原論文1の図1を修正) 　　経済産業大臣に委託された産総研が国家標準である特定標準器を保有し、それを用いて認定事業者の保有する特定二次標準器の校正を行う。この過程に従って、各人の計量器についての"確かさ"が保証される。認定事業者は、特定二次標準器を用いて一般ユーザーの計量器の校正を行う。発足時は、認定事業者は特定二次標準器を保有することを義務付けられたが2001年に、特定二次標準器によって段階的に校正された計量器（常用参照標準）を用いてもよいことになり、認定事業者の階層化を可能とするように改正された。ただ2002年末の時点では放射線分野での階層化は進んでいない。　　X線、γ線について、特定標準器、特定二次標準器の具体的な内容を、表1に示す(現在は、電子技術総合研究所（電総研）は、産総研に組織再編されている)。これは、1993年に通産省告示として発表されたものの抜粋である。また現在、常用参照標準としては、特定二次標準器と同型機種が指定されている。表1　通産省(現、経産省)告示平成5年第556号の抜粋(原論文2の表2) 通商産業省告示平成５年第５５６号の抜粋 ----------------------------------------------------------------------------- 特定標準器に特定標準器による校正等を行う計量器又は特定標準器による校正よる校正等を標準物質等に用いる特定標準器行う者等又は特定標準物質 ----------------------------------------------------------------------------- 通商産業大臣照射線量、照射線量率、吸収線量、吸収線平行平板型自由空気電量率、線量当量、線量当量率、カーマ又は離箱式照射線量設定装カーマ率校正用の軟Ｘ線用電離箱式照射線置であって、電子技術量計であって、Ｘ線の実効エネルギー範囲総合研究所が保管するが10kV以上40kV未満の電圧で加速された電もの子によって生じるエネルギー範囲の場合において、校正範囲が照射線量における放射線の量が1μC/kg以上0.1C/kg以下のもの ---------------------------------------- 照射線量、照射線量率、吸収線量、吸収線量率、線量当量、線量当量率、カーマ又はカーマ率校正用の中硬Ｘ線用電離箱式照射線量計であって、Ｘ線の実効エネルギー範囲が40kV以上250kV以下の電圧で加速された電子によって生じるエネルギー範囲の場合において、校正範囲が照射線量における放射線の量が1μC/kg以上0.1C/kg以下のもの ---------------------------------------- 照射線量、照射線量率、吸収線量、吸収線グラファイト壁空洞電量率、線量当量、線量当量率、カーマ又は離箱式照射線量設定装カーマ率校正用のγ線用電離箱式照射線量置であって、電子技術計であって、γ線源の核種がセシウム137 総合研究所が保管する及びコバルト60の場合において、校正範囲ものが照射線量における放射線の量が100nC/kg 以上0.1C/kg以下のもの ----------------------------------------------------------------------------- 　　本制度の運営は製品評価技術基盤機構（NITE）(http://www.nite.go.jp/)が経産省の委任を受けて実施しており、国際的にもILAC(国際試験所認定協力機構)で承認されている。運営委員会で制度の進め方、法体系の整備等を検討し、技術委員会でそれぞれのレベルでの技術的要件等を検討し、評定委員会で認定を希望する事業者の個々の申請の可否を決定する。各委員会にはNITEの職員だけでなく、各分野の専門家、産総研、経済産業省の職員等から構成されている。　　認定事業者の技術能力の確認のためには仲介計量器の持ち回り試験が行われ、結果は次式で表されるEn数によって評価される。 En=Abs{(1-KL/Ks)×100}/{UL²+Us²}¹^/² ここでAbsは絶対値化、KL、Ks は認定事業者と基準機関(産総研)の校正定数、UL、Uｓはそれぞれの95%信頼度相当の不確かさを表す。　　2002年12月現在における認定事業者は、（財）放射線計測協会、㈱千代田テクノル、（社）日本アイソトープ協会、（財）日本品質保証機構の4機関である。放射能標準については、産総研の保有する放射能絶対測定装置群が特定標準場に、加圧型電離箱、γ線スペクトロメータ、液体シンチレーションカウンタ、荷電粒子測定装置が特定二次標準場にそれぞれ指定され、（社）日本アイソトープ協会が認定事業者として認められている。コメント　　　　：　放射線はエネルギー、線種、強度によって計測法が異なるので、それらに応じて計量器も様々なものがある。放射線の計量器の縦軸の目盛りを、全てにわたって保証することは困難なので、防護レベル線量などのように、よく用いられ、且つ人体等への影響の大きなものが、法体系の中では最初に取り上げられた。まだ十分円滑にトレーサビリティ制度が運用されている訳ではないので、関係者の理解と能力の向上だけでなく、制度改善の検討が今後も必要になるであろう。本制度は世界的に認知されているので、ILAC加盟機関のある国では、JCSS校正証明書は十分に通用するものであり、また放射線の種類に応じて特定標準器、特定二次標準器を増やすことにより、より多くの放射線計測器の信頼性の向上に継がってゆくと考える。原論文１ Data source 1：放射線分野における計量法トレーサビリティ鈴木　功（独）産業技術総合研究所医用標準線量、Vol.1, No.2, p.25 (1996) 原論文２ Data source 2：計量法トレーサビリティ制度における放射線関連量鈴木　功（独）産業技術総合研究所フィルムバッチニュース、No.255, p.1 (1998) 参考資料１ Reference 1：計量法トレーサビリティ制度の最近の動向鈴木　功（独）産業技術総合研究所医用標準線量、Vol.4, No.2, p.1 (1999) 参考資料２ Reference 2：放射線の標準鈴木　功（独）産業技術総合研究所 O plus E, Vol.22, No.6, p.723 (2000) キーワード：トレーサビリティ、X線、γ線、計量法、防護レベル、照射線量、特定標準器、認定事業者 Traceability, X-ray, γ-ray, Measurement Law, Protection level, Exposure, Designated primary standard instrument, Accredited calibration laboratory 分類コード：040302, 040301, 040306
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