高エネルギー重イオン加速器施設

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作成： 2002/12/12 山内良麿データ番号　　　：040265 高エネルギー重イオン加速器施設目的　　　　　　：重イオン衝突型加速器の開発とその応用放射線の種別　　：陽子,中性子,重イオン,中間子放射線源　　　　：Relativistic Heavy Ion Collider (200A GeV) 利用施設名　　　：BNL-RHIC, CERN-LHC, GSI-SIS 照射条件　　　　：真空中応用分野　　　　：素粒子物理、核物理、天体物理、物性物理、天文学概要　　　　　　：　　BNLでは、RHICによる重イオン衝突実験がスタートし、宇宙のビッグバン直後に生じる高温、高密度状態の基本的な性質の研究が始まった。重イオン衝突のエネルギーが高くなるほど、この状態に特徴的な現象がよりはっきり現れることから、CERNでは、より高いエネルギーまで重イオン加速が可能なLHCの建設が進行中である。一方、GSIグループでは、重イオン加速器を用いて新超重元素合成等、重イオンによる研究を精力的に進めている。詳細説明　　　　：　　BNL(Brookhaven National Laboratory),　CERN(Conseil Europeen pour la Recherche Nucleaire), および GSI(Gesellschaft fur Schwerionenforschung) は世界の３大高エネルギー重イオン加速器施設である。これらの３大研究所の中で、BNLと CERN は主として、高エネルギー重イオン衝突による素粒子の基本的な性質とクォーク・グルーオン・プラズマの特質の解明に重点をおき、GSI は新超重元素の合成と素粒子レベルでの核反応の理解の研究を目指している。　　BNLでは、RHIC (Relativistic Heavy Ion Collider) が 2000年に完成し、重イオン衝突実験が始まった。RHICは、相対論的エネルギーにまで、お互いに逆向きに加速した、Au等の２つの重い原子核ビームを正面衝突させる衝突型加速器である。このような衝突により、原子核は個々の陽子と中性子が重なり合うほど激しく圧縮され、高温状態になる結果、反応中心部の数百fm³の領域は、約15GeV/fm³　に至るエネルギー密度になると予想される。従って、この衝突は、瞬間的に、沢山の自由なクォークとグルーオンが存在できるような異常に高いエネルギーを持つ状態をつくりだす。この状態をクォーク・グルーオン・プラズマ (QGP)と呼ぶ。　　QGP 中では、クォーク、グルーオン、反クォークは通常の束縛から解放され、お互いに自由に動くことができる。ビッグバン直後の、宇宙の夜明けの10^-⁷秒までは、宇宙は正にこのようなQGPの状態だったと考えられている。RHICによる高エネルギー原子核・原子核衝突実験は、宇宙の夜明けに存在した高温、高圧の状態を実験室の条件下で再現し、極限的な高密度、高温状態での最も基本的な物質の性質を探ることを目的としている。　　重イオンは先ず、15MV タンデム加速器で加速され、TTB(Tandem-to-Booster line)を経て、前段加速用のブースターシンクロトロンでさらに加速されて、AGS(Alternating Gradient Synchrotron)に導かれる。重イオンが AGS 中で最高速度まで加速されると、次にATR(AGS-TO-RHIC)ラインのスイッチングマグネットによって時計回りRHICリング、または、２番目の反時計回りRHICリングに振り分けられる。周囲3.8kmのRHIC 中で、２つのリングが６カ所で交差し、そこで２つの重イオンを衝突させる。RHICによる重い原子核・原子核衝突のエネルギーは200A GeV（Aは重イオンの質量数）に達する。現在ビームが交差する４カ所にそれぞれ、衝突反応による放出粒子を検出するための　STAR, PHENIX, PHOBOS, BRAHMS と呼ばれる大がかりな実験装置が設置されている（残り２カ所は将来の実験用で、今のところ未使用）。図1にRHIC 加速器複合体の概略を示す。図1　Layout of the BNL relativistic heavy ion collider complex. Courtesy Brookhaven National Laboratory.（原論文4より引用）　　CERNでは、これまでSPS(Super Proton Synchrotron) が陽子加速、陽子ー反陽子衝突、重イオン加速、および LEP(Large Electron Positron Collider)の入射器に使用されてきた。SPSは質量数 208のPbイオンを核子あたり170GeVに加速できる。衝突で生成される高温、高密度状態は、衝突のエネルギーが高くなるほど、よりはっきりと特徴的な現象をあらわすことから、CERNは、RHIC より高いエネルギーまで重イオン加速が可能な LHC (Large Hadron Collider)の建設を進めている。CERNはこれまでの投資を建設に有効に使う戦略から、周囲 27kmの LEPトンネルを LHCと共用して使うほか、既存の粒子イオン源や前段加速器を活用する。LHCでは、Pb等の重い原子核同士の衝突実験で得られるエネルギーは 6300A GeVである。LHCの運転開始は、2005年の予定である。図2はCERN のLHC 加速器複合体の概略である。図2　Layout of the CERN accelerator complex.（原論文5より引用）　GSIでは6.7MeV/u UNILAC (Universal Linear Accelerator), 1GeV/u SIS (Heavy Ion Synchrotron), ESR (Experimental Storage Ring)を用いて、大がかりな重イオン核反応測定装置 SHIP, ALADIN , FOPI等による、先駆的な重イオン核反応実験が行われてきた。特に、新超重元素の合成の研究では大きな成果を上げていて、世界における新超重元素合成研究の、センターの１つになっている。今後、GSIでは23GeV/uの重イオンシンクロトロン SIS200 を含む加速器の増設が予定されている。図3に GSIの現在の加速器施設と増設計画の概略を示す。図3　Layout of the existing GSI facility and the proposed accelerator complex.（原論文6より引用）コメント　　　　：　　RHICを用いた高エネルギー重イオン衝突実験により、実験室条件下で宇宙のビッグバン直後の高温、高密度状態を再現できることは、物質の最も基本的な構成成分である素粒子の性質の解明を飛躍的に発展させ、宇宙創生の初期に関する深い理解のために大いに役立つであろう。RHICの実験には、日本からの研究グループも大勢参加して、研究の一翼を担っている。今後、このような高エネルギー重イオン衝突実験から得られる情報は、核物理、素粒子物理、天体物理、物性物理、天文学等の進展に大きく貢献すると思われる。　原論文１ Data source 1： Thermalization in ultrarelativistic nuclear collisions. Ⅱ. Entropy production and energy densities at the BNL Relativistic Heavy Ion Collider and the CERN Large Hadron Collider Klaus Geiger School of Physics and Astronomy, University of Minnesota, Minneapolis, Minnesota 55455 PHYSICAL REVIEW D, Vol. 46, No.11 (1992) , 4986-5005 原論文２ Data source 2：高エネルギー重イオン衝突実験　Review of High Energy Heavy Ion Rxperiments 三明康郎　Yasuo MIAKE 筑波大学　物理学系　Inst. of Physics, Univ. of Tsukuba 原子核研究　Vol.44 No.4 (2000) 65-81 原論文３ Data source 3： Dynamics of Multifragmentation in Heavy Ion Collisions Willibrord Reisdorf Gesellschaft fur Schwerionenforschung (GSI), Postfach 110552, D- 64220 Darmstadt, Germany Progress of Theoretical Physics Supplement No.140, (2000) 111-133 原論文４ Data source 4： RHIC Web page; http://www.bnl.gov/RHIC/RHIC_complex.htm 原論文５ Data source 5： LHC Web page; http://public.web.cern.ch/Public/about/how/complex/ complex.html 原論文６ Data source 6： GSI Web page; http://www.gsi.de/accelerator/Projects/GSI-Future/Fut_3col-neu-w600.jpg 参考資料１ Reference 1： Possible Application of an EBIS in Preinjectors for Large Heavy Ion Colliders H.Haserroth and K.Prelec* CERN, 1211 Geneva 23, Switzerland, *BNL, AGS Dept., 911B, Upton,N.Y., 11973, USA Physica Scripta Vol. T71, 23-27, 1997 参考資料２ Reference 2： Heavy Ion Program at the PHENIX experiment Hideki Hamagaki Center for Nuclear Study, School of Science, University of Tokyo, Midori-cho, Tanashi, Tokyo 188, JAPAN 原子核研究　Vol.42 No.4, (1998) 23-34 キーワード：RHIC, AGS, 重イオン、重イオン衝突、QGP, LHC, SPS, PHENIX, Relativistic Heavy Ion Collider, Alternatiog Gradient Synchrotron, heavy ion, heavy-ion collision, quark-gluon plasma, Large Hadron Collider, Super Proton Synchrotron, Pioneering High Energy Nuclear Ion eXperiment 分類コード：040101, 040106, 040301
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