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作成: 2001/1/01 石原豊之

データ番号   :040228
加速器施設の廃止
目的      :加速器施設の廃止における放射線安全管理の解説
放射線の種別  :エックス線,アルファ線,ガンマ線,電子,陽子,軽イオン,重イオン,中性粒子

概要      :
 近年 高エネルギー加速器の多方面への利用が進展し、高エネルギーで高強度ビームの加速器計画が相次いで出されている。一方 1960年代に建設された加速器施設はその機能を十分に発揮し、日本の初期の原子核、素粒子実験研究及び放射光実験に多大な成果を上げ、最近では廃止、解体されつつある。加速器施設廃止では、放射化物品の取扱が重要である。

詳細説明    :
 加速器施設の廃止において、放射線安全管理で最も重要なのは放射性物質の取扱い及びその廃棄である。事業所の廃止の場合はRI廃棄物業者(RI協会)に引き渡すことである。
1.放射性物質の定義
 放射性物質とは次のものをいう。(1)密封された放射性同位元素。(2)密封されていない放射性同位元素。(3)放射化物(表面での空間線量率が自然放射線レベルx3σ以下の物を除く)。(4)放射性廃棄物。
 加速器施設では(1)と(2)は多くの場合、RI協会から購入した放射性同位元素であり、検出器や測定装置の校正に使用する程度で量的には少ない。従ってここでは主に(3)と(4)について述べる。加速器等の放射化物については科学技術庁原子力安全局放射線安全課長通達(平成10年10月30日付け) で『放射線発生装置使用施設における放射化物の取扱いに係るガイドライン』がある。
2.撤去の基本方針
 文部科学省への届出等;廃止の際には各加速器取扱い施設に於いて行われた措置の報告が法令で義務付けられている。放射線施設廃止届には廃止時に行った次の措置の記録を添付する。(a)健康診断記録及び被曝線量記録を指定機関へ引渡した記録。(b)所持または廃止に伴って発生した放射性廃棄物の措置(放射化物を含む搬出物品毎の汚染検査、表面線量測定記録)。(c)所持している放射性同位元素の措置。(d)放射化物品の他の施設への譲渡。(e)施設の汚染検査(放射化の評価を含む)。(f)工事を伴う場合は工事内容(手順を含む)。(g)工事作業者に対する教育訓練、立入記録、健康診断記録、被曝線量測定記録。
 事前に文部科学省へ廃止作業のスケジュール等その内容を連絡、打合わせをすることが望ましい。
3.工事の手順
 各施設の撤去手順を次に示す。(a)装置の汚染、放射化量の評価。(b)非放射化物の搬出(分類分けは事前にする)。(c)放射化物の搬出、除染が必要なものは除染。(d)建物の放射化の評価(建屋内が空になった時点で行う)。しゃへい壁等の内部測定、汚染検査、除染。(e)全管理区域の解除。(f)建屋の解体、撤去。
4.物品の管理
 (1)撤去にあたって放射化物品は、(a)再利用可能物品は他の施設へ譲渡、(b)放射性廃棄物としてRI協会へ引渡す、(2)非放射化物については、(a)他の施設への譲渡、(b)産業廃棄物、(c)有価物として売却、ここで放射化物とは自然放射線レベルを越えるもの(BG計数の標準偏差の3倍をもって有意とする。)とする。評価は汚染検査(GMサーベイメータ)と表面線量測定(NaIシンチサ-ベイメータ)で行う。サーべイメータはあらかじめ核種分析を行い、表面線量率から放射能評価(Bq/g)が可能となるような変換係数を求めておくと便利である。加速器室等の高線量区域のコンクリート壁、床、天井などはボーリング調査を行う。(3)保管廃棄する場合は、1〜2m3のコンテナー(収納物容器)を用意し、コンテナー毎に管理する。収納物はコンテナー毎に内容物(ビームパイプ類、マグネット類、ポンプ類など)を揃える。コンテナー毎に収納物品の一覧表、容器表面線量、汚染の有無、重量等の表示をし記録をとる。(4)RI協会に引渡す場合は、引渡記録を保管する必要がある。この場合の容器は協会支給のドラム缶となる。なお、(5)次のような建屋の構造に密接に関連する部分は、建屋の解体の際の汚染検査に含めて行う。ただし建屋の設備周りの廃棄するケーブル類は除く。(a)配電盤と配電盤までの電気配線。(b)エアコンとその配管、配線、ダクト。(c)上下水道管、排水ピット。(d)電話、通信ケーブル。
5.人の管理
 (1)管理区域解除までは、立入りの作業員は放射線作業従事者として管理する。放射線管理室は作業前に放射線取扱いのための教育訓練を実施する。また、安全教育、モックアップ訓練は請け者側で実施する。請け者側の被曝管理、健康管理、入退室管理は請け者側で行いその記録を放射線管理室に提出する。(2)物品搬出口と人の出入口は別々に設け、入退室管理を確実にするために人は物品を伴って出入りしない。(3)退室の際は、作業者及び持ち込み工具等の汚染検査をする。
6.廃止建屋の管理
 放射線管理区域を解除した後も建屋解体までは施錠し、人が立ち入らないように管理する。
 ここでは、高エネルギー加速器研究機構田無分室(旧東京大学原子核研究所)のつくば市への移転に伴い、FF.FMサイクロトロン、1.3BeV電子シンクロトロン及びSFサイクロトロン等の大小7基の加速器を閉鎖し、廃止、解体が行われた。その時の加速器施設廃止に関する貴重な体験に基づく自由用事項を簡単な解説と共に示した。

キーワード:加速器, 放射線, 放射化物, 廃止, Accelerator, Radiation Radioactivition, Abolition
分類コード:040107

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