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作成: 1999/10/27 刈谷 稔男

データ番号   :040178
γ線による非破壊検査
目的      :品質管理及び品質保証へのγ線の利用
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :192Ir(370GBq),60Co(370GBq),169Yb(370GBq)
照射条件    :大気中
応用分野    :構造物の溶接検査、素材の品質管理、構造物及び機械部品の内部構造調査、経年劣化調査

概要      :
 放射線透過試験は非破壊検査に利用される代表的な試験技術であり、工業分野においては主にX線発生装置、γ線照射装置が用いられている。γ線は検査精度(鮮鋭度)の面ではX線にやや劣るが、電源設備を必要とせず機動性に優れていることから、各種プラントや工場における品質管理に幅広く利用され、検査目的に応じた種々の線源核種と、放射線使用施設外において安全かつ機能的にγ線照射が可能な専用装置が開発されている。

詳細説明    :
 放射線透過試験は、試験体の不連続部における放射線透過量の差を写真フィルム上に影像化するものである。ここで、「不連続部」とは、試験体の形状や材質が変化する部分のことをいうJIS用語で、「きず」ともいう。微少な不連続部に対して、如何に鮮鋭度の高い影像、即ち「良い像質」を得るかが重要な課題である。
 放射線としてはX線及びγ線が用いられるが、両者を区別する必要がないときには単にX線と記すことが多い。従って、X線フィルムを使ってγ線透過写真を撮るという言い方をする。
 X線フィルムに放射線を照射して現像すると黒化するが、その程度を表すものがフィルム濃度である。濃度Dは、フィルムに光を当てた場合、入射光と透過光の強度の比の常用対数で表す。例えば、透過光の強度が1/100になれば、D=2.0であるという。フィルム濃度は写真濃度ともいい、一般にいう光学濃度(optical density)のことである。
 試験体の放射線透過写真は、試験体の背面にX線フィルムを密着させて撮影する。透過写真について、不連続部に対応する濃度と周囲の健全部に対応する濃度の差を ΔD で表し、透過写真のコントラストと呼ぶ。透過写真のコントラストは、使用されるX線フィルムの種類、フィルム濃度、増感紙の種類、撮影配置など、線源の種類には直接関係しない因子によって変化する。これらの因子が一定であれば、線源寸法を小さく、試験体の吸収係数を大きくする程、コントラストは大きくなる。上記の鮮鋭度は、この透過写真のコントラストΔDが場所の関数としてどのように変わるかによって評価される。
 透過写真は径の異なる細線の組からなる透過度計を用いて、試験部と同時に撮影する。透過写真の観察条件などを検討する際には、透過度計の識別を問題とする。そこで、一例として、試験体(鋼板)の上に置いた細い鋼線の場合を考えると、その透過写真のコントラストΔDは次式で与えられる。
   ΔD=-0.434μσγd/(1+n)
ここで、μは放射線のエネルギーと試験体の材質で決定される線吸収係数である。σは線源(焦点)の寸法と撮影配置で決定される幾何学的係数である。σは線源の寸法が小さく、撮影距離が大きくなる程大きな値となり、最大は1である。γはX線フィルムの種類とフィルム濃度によって決定される係数で、通常の使用範囲ではフィルムに塗布されたハロゲン化銀の結晶粒が小さく、フィルム濃度が高い程大きな値となる。dは試験体表面においた鋼線の直径である。nは、X線フィルムの表面における、透過放射線量率に対する試験体内部や周辺の散乱体による散乱放射線量率の比率であり、散乱比という。透過写真のコントラストを大きくするには、μ,σ,γを大きくし、nを小さくしなければならない。試験体中に径がKのきず(空洞)がある時のコントラストは、上式のdのところに-Kを代入すれば得られる。
 X線フィルムの特性は、照射されたX線量(露出量; X線強度に照射時間をかけたもの)の対数を横軸にとり、その関数としてフィルム濃度Dを縦軸にとって表される。これをX線フィルムの特性曲線という。この特性曲線の勾配が上述のγであり、このγのことをフィルム・コントラストと呼んでいる。ノースクリーン用フィルムの場合、γはDにほぼ比例して増加する。
 図1に示すのは、放射線透過試験に使用される代表的な線源送り出し方式のγ線照射装置であり、線源を送り出すレリーズワイヤを操作する操作器、線源を収納する線源容器、先端金具で構成され、それぞれ操作管、伝送管で接続されている。レリーズワイヤは操作管を通して線源容器内の線源ホルダに接続されており、線源ホルダは操作器によって線源容器から伝送管中を通って先端金具の中に押し出される。


図1 透過写真撮影用γ線照射装置(ポニー工業株式会社のカタログより引用)

 γ線源のエネルギーは放射性同位元素の核種により、線源寸法は必要とする強度によって決定されるため、試験体の材質や厚さに応じて適当な核種を選択して使用するが、焦点寸法やエネルギーの選択肢が多いX線源に比較すると、鮮鋭度は一般的に低くなる。
 像質の面では劣るにもかかわらず、γ線が工業分野で幅広く使用されているのは、照射装置が比較的小型軽量で携帯性に優れ、しかも電源を必要としないことによる機動性や、伝送管方式であるためX線発生装置では不可能な狭隘部への適用が容易なことが大きな要因である。また、稼働中の火気使用を制限される石油プラントなどでは、電源が不要であることが重要な保守検査装置の条件ともなる。
 γ線による非破壊検査の対象となる材料は鋼材が大部分であり、利用されている放射性同位元素は192Irが主流であるが、30mmを超えるような厚い鋼板で は60Co、10mm以下の薄い鋼板では169Ybなど、試験体に適合したエネルギーを 有する核種が使用されている。線源強度は核種に関わらず、放射線使用施設外に移動して使用が可能な上限値の370GBqのものを使用するのが一般的である。

表1 ガンマ線源及びガンマ線照射装置の仕様
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   項  目                   192Ir          60Co        169Yb
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線源強度(GBq)                 370          370          185
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エネルギー(MeV)           0.3〜0.6    1.17,1.33   0.06〜0.31
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半減期                     74.2 d       5.27 y       31.8 d
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線源寸法(mm)               2φx2        3φx2        1φx1
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形態                       酸化物         金属         金属
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原材料・存在比(%)       191Ir(37.3)    59Co(100)   168Yb(0.13)
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製造方法                中性子照射   中性子照射   中性子照射
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主な使用範囲(鋼板mm)        10〜80      30〜180       10以下
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線源容器重量(kg)               22          200            3
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線源容器寸法(mm)      230x250x350  450x450x500     48x50x90
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注)線源容器重量、寸法は一般的な値でありメーカによって異なる
 表1は、非破壊検査に使用されている主な核種及び装置の仕様である。γ線源や装置の選択に当たっては、像質に関わるエネルギー、線源寸法の他に、安全性、作業性、経済性も考慮する必要があり、半減期、原材料の存在比、製造の難易度、透過能力、線源容器の重量及び寸法などが使用条件に適合したものでなければならない。

コメント    :
 γ線による非破壊検査での主な問題点は、検査技術の面ではエネルギーが限定されていること、安全管理面では常時放射線を放出していること、経済性においては線源の交換が必要なことである。これらは放射性同位元素を利用する限り完全な解決策のない問題であるが、近年の169Yb低エネルギー線源の開発 などのように、新線源の開発による核種の特性を生かした利用範囲の拡大も今後の課題である。
 更に、イメージングプレートによる画像のデジタル化や照射時間の短縮、あるいはγ線CTのような画像処理技術など、従来のX線フィルムによる直接撮影法から脱却した技術の確立も重要である。

原論文1 Data source 1:
RI・放射線の産業利用 .産業各分野におけるRI等利用例 2.非破壊検査分野
刈谷 稔男
非破壊検査株式会社 〒290-0056 千葉県市原市五井9138
Radioisotopes, vol.46, 378-385 (1997)

キーワード:非破壊検査、放射線透過試験、γ線、透過写真のコントラスト、照射装置
nondestructive inspection (NDI), radiographic testing, gamma-rays, radiographic contrast, radiographic apparatus
分類コード:040204,040303,040503

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