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作成： 1998/09/11 山内 良麿
データ番号 ：040121
加速器による中性子発生(30MeV以下)
目的 ：加速器による中性子発生とその応用
放射線の種別 ：陽子,中性子,軽イオン,重イオン
放射線源 ：タンデム加速器 (9MV, 10nA)
フルエンス（率）：2.6x101/(cm2・s)
線量（率） ：2.6x10-9Gy/s
利用施設名 ：カリフォルニア大学ロスアラモス科学研究所、ウイスコンシン大学タンデム加速器、デューク大学タンデム加速器、日本原子力研究所タンデム加速器
照射条件 ：大気中
応用分野 ：線源技術、放射線検出、線量測定、工業用計測、RI治療
概要 ：
加速器による中性子の発生には、主に水素の同位体をターゲットとするT(p,n)3He 、D(d,n)3He やT(d,n)4He反応 、この他に7Li(p,n)7Be 反応、12C(d,n)13N 反応等が用いられる。さらに重イオン加速による新しいタイプの中性子発生反応も用いられるようになってきたので、これらの中性子発生反応の性質の概略を述べる。
詳細説明 ：
これまでバンデグラーフ加速器やタンデム加速器、サイクロトロンなどの加速器により発生する中性子を用いて、数100keVから30MeVの中性子エネルギー領域で多くの中性子実験が行われて来た。中性子発生反応は、800keV以下の低いエネルギー領域の単色中性子源として7Li(p,n)7Be反応、10MeV以下のエネルギー領域では主としてT(p,n)3He 反応とD(d,n)3He 反応、10MeV以上のエネルギー領域ではT(d,n)4He反応が用いられる。
7Li(p,n)7Beを除く後の三つの中性子発生反応については、カリフォルニア大学ロスアラモス科学研究所において系統的な研究が行われた。この研究からT(p,n)3He反応については、陽子エネルギー4-16MeVの範囲で0゜から140゜までの微分断面積が測定された。D(d,n)3He 反応については、重陽子エネルギー6-17MeVの範囲で0゜から88.4゜までの微分断面積が、またT(d,n)4He 反応については、重陽子エネルギー5-16.5MeVの範囲で0゜から130゜まで微分断面積が測られている。
0゜方向の実験室系の微分断面積は、T(p,n)3He反応では陽子エネルギー4MeVで99.5mb/srである。 D(d,n)3He 反応では重陽子エネルギー11MeVで99.1mb/srであり, T(d,n)4He反応では6-16.5MeVの範囲にわたって約26mb/srになる。図1にD(d,n)3He 反応の重陽子エネルギーに対する重心系での0゜方向の微分断面積の変化を示す。
図1 Absolute 0-deg cross section for the reaction 2H(d,n)3He in the center-of-mass system.（原論文1より引用。 Reproduced from Nucl. Sci. Engin., vol. 67, 190-220 (1978), Figure 2 (Data source 1, pp.196), Copyright (1978) by American Nuclear Society, La Grange Park, Illinois, USA, and with kind permission of the copyrighter and the author.）
これらの中性子発生反応では、単色の中性子ピークの他に、放出粒子が3体に別れる3体崩壊反応によるエネルギー幅の広い中性子を伴う。この3体崩壊による中性子は中性子源の単色性を損なう点で問題となる。DおよびTターゲットに関するD(d,np)D, T(d,np)TおよびT(d,2n)3He 3体崩壊反応については、ウイスコンシン大学のタンデム加速器を用いて調べた報告がある。中性子発生反応のスペクトルで3体崩壊による中性子は、単色中性子の鋭いピークより数MeV低いところに半値幅数MeVに至る幅の広いピークを形成する。
図2にD(d,np)D 3体崩壊反応からの0゜中性子スペクトルの入射陽子エネルギーによる変化を示す。
図2 Zero-degree yield of neutrons from the D(d,np)D reaction in the laboratory system. （原論文2より引用。 Reproduced from Phys. Rev., Vol.128, No.3, 1328-1335 (1962), H.W.Lefevre, R.R.Borchers, C.H.Poppe, Figure 3(Data source 2, pp.1331): Neutrons from Deuteron Breakup on D, T, and 4He, Copyright (1962), with permission from the American Physical Society and the authors.）
12C(d,n)13N 反応も中性子発生反応として使用されるが、この反応には偏極中性子源としての特性がある。12C(d,n)13N 反応についてはデューク大学のタンデム加速器を使った測定結果が報告されている。ここでは、重陽子エネルギー 2.8-4.2MeVの範囲で5゜-145゜の微分断面積と10゜-136゜の角度範囲の偏極の測定が行われた。5゜での微分断面積は~20mb/sr, 偏極は重陽子エネルギー3.63MeV で -59.8% と大きい値を示す(原論文3)。
中性子発生反応は、通常3体崩壊反応を伴うので純粋に単色中性子源として使用することはできず、その利用には注意が必要である。最近の重イオン加速器技術の進歩によって新しいタイプの中性子発生反応が可能になった。日本原子力研究所ではタンデム加速器を使って1H(11B,n)11C反応について調べた結果、この反応が中性子エネルギー7-12MeVの範囲で優れた単色中性子源として利用できることがわかった。
図3に入射 11Bエネルギー61MeV において、0゜方向に発生する11.2MeV 中性子のスペクトルを示す。0゜方向の微分断面積は中性子エネルギー11MeV付近で最も大きく実験室系で180mb/sr に達する。
図3 TOF spectra measured at 0゜with an incident 11B energy of 61MeV. The peak is formed by neutrons produced from the 1H(11B,n)11C reaction. Background is not subtracted. （原論文4より引用。 Reproduced from Nucl.Instr. Meth. Phys. Res., A281 (1989) 581-588, S.Chiba, M.Mizumoto, K.Hasegawa, Y.Yamanouti, M.Sugimoto, Y.Watanabe and M.Drosg, Figure 2 (Data source 4, pp.583): The 1H(11B,n)11C Reactions as a Ppactical Low Backround Monoenergetic Neutron Source in the 10MeV Region, Copyright (1989), with permission from Elsevier Science.）
コメント ：
これらの中性子発生反応は使用する中性子エネルギー、使用する加速器、どのくらいの単色性が必要になるか等の条件により中性子発生反応の型が決まる。特にトリチウム(T)は放射性のガスであり、その取扱には注意が必要になる。
原論文１ Data source 1：
Unified Abusolute Differential Cross Sections for Neutron Production by the Hydrogen Isotopes for Charged-Particle Energies between 6 and 17MeV
M.Drosg
University of California, Los Alamos Scientific Laboratory, Los Alamos,New Mexico 87545
Nuclear Science and Engineering, vol. 67, 190-220 (1978)
原論文２ Data source 2：
Neutrons from Deuteron Breakup on D, T, and 4He
H.W.Lefevre, R.R.Borchers, and C.H.Poppe
University of Wisconsin, Madison, Wisconsin
Physical Review, Vol.128, No.3, 1328-1335 (1962)
原論文３ Data source 3：
Cross-Section and Polarization Determinations for the 12C(d,n)13N Reaction from 2.8 to 4.2 MeV
J.R.Sawers, JR., F.O.Purser, JR., and R.L.Walter
Duke University, Durham, North Carolina
Physical Review, Vol. 141, No.3, 825-832(1966)
原論文４ Data source 4：
The 1H(11B,n)11C Reactions as a Ppactical Low Backround Monoenergetic Neutron Source in the 10MeV Region
S.Chiba, M.Mizumoto, K.Hasegawa, Y.Yamanouti, M.Sugimoto, Y.Watanabe*) and M.Drosg2*)
Japan Atomic Energy Research Institute, Tokai, Ibaraki 319-11, Japan. *)Kyushu University, Hakozaki, Fukuoka 812, Japan. 2*)University of Vienna, Wien, Austria
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, A281 (1989) 581-588
キーワード：中性子発生反応、単色中性子源、偏極中性子源、3体崩壊反応、中性子スペクトル
neutron production reaction, monoenergetic neutron source, polarized neutron source, three-body breakup reaction, neutron spectrum
分類コード：040301,040302,040103
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