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作成： 1997/10/01 佐藤 乙丸
データ番号 ：040099
ベータ線ラジオグラフィ用線源の調製とその応用
目的 ：ラジオグラフィ用低エネルギ-ベ-タ線源の製法と応用
放射線の種別 ：ベータ線
放射線源 ：3H線源(111GBq)、63Ni線源(222MBq)、14C線源(550MBq)
利用施設名 ：AECL, Chalk River Nuclear Laboratory, Royal Canadian Mounted Police
照射条件 ：大気中
応用分野 ：裁判科学
概要 ：
8x11インチの標準フイルムに使用できる、放射能を均一に分布させた大面積の3種類の低エネルギ-ベ-タ線源の製造方法と、3H、63Ni、14Cのエネルギ-差を利用する、旅行小切手からパスポ-ト表紙までのラジオグラフィーの条件を論じている。
詳細説明 ：
ラジオグラフィ-は、裁判上の証拠文書の検査にきわめて有効である。この目的に適する波長1〜10オングストロムのX線発生装置は、高価でこわれ易く取扱いにくい。その代替として、3H、63Ni、14Cの低エネルギ-ベ-タ線源の開発を行い、平面上に均一に分散させた直経約10数cmの面状放射線源の製法を確立することができた。
3H線源は、まず酸素を含まない銅板(10X12X0.3mm)上に300℃で電子衝撃によってチタニュウムを蒸着する。つぎにこれを350℃の真空中に置き、3Hガスを66kPa以上の圧力でチタンに吸着させる。十分に吸着させてから、室温に戻して、表面に酸化チタン膜を形成させ、その上に硝酸セルロ-ズをかぶせてコロジオン膜を保護膜としたものである。ふきとり試験によって表面汚染密度が許容値以下になるまでコロジオン膜を重ねる。
63Ni線源は、まず塩化ニッケル液を硝酸ニッケル液に変えてタングステンボ-トの凹部に注入し、蒸發乾固させ63Niが発散しないようにタングステンメッシュをかぶせておく。これを16cmΦのクロムフェロタイプ板を取り付けた蒸着室に入れて真空に引いた後、初めはゆっくりと、ついで急速に2000°Cまで加熱すると、硝酸ニッケルは分解し、金属ニッケルと酸化ニッケルの化学形でフェロタイプ板上に蒸着される。3Hの場合と同じようにコロジオン保護膜をかぶせる。
14C線源は、まず炭酸バリュウム(14C)からアセチレン(14C)を調製する。16cmΦのクロムフェロタイプ板を陰極とするクラッキング室を真空にした後、アセチレン(14C)を導入しその圧力を10Paとし。2500ボルトの高電圧放電によって14Cを陰極板上に捕集させたものである。保護膜は、3Hと同様に調製する。
これら3種類の線源のベ-タ線の最大エネルギ-は、低い方から18、67、156keVであり、3Hは紙幣などの薄物に、また14Cは旅券の表紙のような厚物の透かし模様の検出に有効である。
3H線源に関しては、数年間に数百回もの露出を試み、満足すべき結果を得ており、現在放射線業務従事者でなくても取り扱うことができるよう原子力局(カナダ)と接渉中である。図1のうち左は露出中のカセットで、右はカセット内にフイルム切片、旅行小切手、3H線源をかさねてあるところである。
図1 Cassette closed(left) and open(right) showing one tritum source overlain by a document and sheet of film.（原論文2より引用。 Reproduced from Nucl. Instr. Meth. Phys. Res., A257 (1987) 26-28, F.M.KERR: Using Low Energy β-Sources For Radiography,Figure 3 (Data source 2, pp.27), Copyright (1987), with permission from Elsevier Science, Oxford, England.）
図2 Watermark radiographed using 63Ni(222MBq).（原論文2より引用。 Reproduced from Nucl. Instr. Meth. Phys. Res., A257 (1987) 26-28, F.M.KERR: Using Low Energy β-Sources For Radiography, Figure 4 (Data source 2, pp.28), Copyright (1987), with permission from Elsevier Science, Oxford, England.）
図2は63Niによる透かし模様のラジオグラムであるが、放射能が弱かったため露出に長時間を要した。実用する場合には、約10倍の放射能の線源が望ましい。14C線源については、14C化合物をプラスチックなどに混入した後、板状に整形した面状線源もあるが、われわれの製法の方がよりクリ-ンなものといえる。
コメント ：
放射能の均一さを示すオ-トラジオグラムの写真がないので、どの程度均一であるのかがわからないが、3Hを用いた透かし模様のラジオグラムによれば、十分実用化が可能な程度と思われる。コロジオン膜が薄いので、取り扱いに十分注意する必要がある。またオ-トラジオグラフィ用の標準平面線源としての使用も考えられる。
原論文１ Data source 1：
The Preparation of Tritium, Nickel-63 and Carbon-14 Large-Area Sources for Document Imaging
J.L.Gallant and P.Dmytrenko
Atomic Energy of Canada Limited, Chalk River Nuclear Laboratories, Chalk River, Ontario, Canada KOJ 1J0
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, A257 (1987) 29-31
原論文２ Data source 2：
Using Low Energy β-Sources For Radiography
F.M.KERR
Royal Canadian Mounted Police, Ottawa, Canada
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, A257 (1987) 26-28
参考資料１ Reference 1：
The State of The Art of Target Preparation at the Chalk River Nuclear Laboratory
J.L.Gallant, P.Dmytrenko and R.H.Martin
Atomic Energy of Canada Limited, Chalk River Nuclear Laboratories, Chalk River, Ontario, Canada KOJ 1J0
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, A236 (1985) 456-462
参考資料２ Reference 2：
Large Area Tritum Sources for Forensic Document Radiography
F.M.Kerr and J.L.Gallant
Central Forensic Laboratory, Royal Canadian Mounted Police, Ottawa, Ontario, KIG 3MS, Canada and AECL, Chalk River Nuclear Laboratory
Forensic Science International, 28, p.221 (1985)
参考資料３ Reference 3：
Modified Method for Beta-ray Radiography Using 14C Methacrylate Sheet
N.N.Sehgl and H.R.Aggarwal
Int. Criminal Police Review, 325, p.54 (1979)
キーワード：低エネルギ-ベ-タ線源、ラジオグラフィ、旅行小切手、透かし模様、3H、63Ni、14C
low enegy beta-source, radiograhy, traveler's check, watermark, 3H, 63Ni, 14C
分類コード：040202,040303
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