ラドン測定器校正―線源と施設―

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作成： 1997/09/15 下　道国データ番号　　　：040097 ラドン測定器校正―線源と施設― 目的　　　　　　：ラドン・ラドン娘核種測定器校正施設と応用放射線の種別　　：エックス線,アルファ線,ガンマ線放射線源　　　　：²²⁶Ra線源線量（率）　　　：0.01 - 300Gy 利用施設名　　　：英国放射線防護庁,米国環境測定研究所,米国鉱山局,オーストラリア放射線研究所,その他照射条件　　　　：大気中(温度・湿度・エアロゾル濃度可変) 応用分野　　　　：較正,エアロゾル学,吸入・沈着実験概要　　　　　　：　ラドンとその娘核種測定器の校正では,ラドンとくにラドン娘核種の簡便な標準線源が作成できないために,機器の校正のたびに標準ラジウムからラドンガスを発生させ,試料ガスとして調合・作成し,濃度レベル等を一定に保持する施設が不可欠である。また,温度,湿度,エアロゾル濃度等の環境条件の制御も必要である。このような複雑で幅広い高度な技術を持った施設は,ラドンの吸入沈着研究でも有用である。詳細説明　　　　：　放射線測定器(系)の校正では,基準機関で制作された基準線源を入手することによって校正が行われるのが普通である。　ラドン測定機器では,ラドン(²²²Rn)の半減期が 3.82 日と短いために、校正のたびに親のラジウムからラドン線源を作らなければならず,また気体であることから線源作成機関,使用機関のいずれにとっても,その取扱いには相当の熟練を必要とする。また,大気中に浮遊するラドン娘核種(²¹⁸Po, ²¹⁴Pb, ²¹⁴Bi)を対象とした測定器に対する校正では,半減期の短さ(数十分)に加えて、大気中での性状とサンプリング方法の両方が密接に絡んでくるために,前もって基準線源を制作し,配付するという方法を取ることはできない。さらに,屋内ラドン濃度調査等で使用されるパッシブ型測定器では,ラドンガスを充填した容器(ラドンチェンバ)の中で、1 日程度以上はラドンガスに曝露させなければならず,多数の測定器を同時に使うには,それなりの大きさのチェンバが必要である。　たとえば,米国エネルギー省環境測定研究所(EML)には 2 機のラドンチェンバがあるが,新しい方は 1993 年に完成したもので,内容積が 30.75 m³ あり,同時に数人が入って作業できる規模である。37 MBq の固体 ²²⁶Ra 線源から発生されるラドンの濃度は 100～5,000 Bqm^-³ で調整され,温度と湿度はそれぞれ 5～40 ℃,15～100 %の範囲であり,またエアロゾル濃度はエアロゾル発生器で 10,000～30,000 個/cm³ の範囲で自由に設定され,いずれの要素も常時監視・制御される。特に,ラドン濃度は通気式のシンチセル法で常時モニタされているほか,さらにパルスチェンバ法によって厳密に校正されている。なお,校正機器はチェンバ内に持込む方法も,また外に置いてポートを経由してサンプリングする方法のいずれも取ることができるようになっている(図1、図2)。図1　Construction finished. （原論文3より引用。　Reproduced from Annual Report 1993, EML-560 (1994), Figure 3.3 (Data source 3, pp.26), with permission from U.S. Department of Energy.）図2　Trends of radon concentration and PAEC with their set up data in the chamber. （原論文4より引用。　日本物理学会のご承認に基づき、保健物理,vol.32(3), 285-294 (1997), Figure 1 (Data source 4, pp.288)から転載したものです。）　このほか,英国放射線防護庁,米国鉱山局,オーストラリア放射線研究所にも同程度のゲレードの設備が設けられているが,いずれも 1983 年にOECD／NEAが国際ラドン共同比較・共同校正プログラムを実行した時の基準機関である。なお,同プログラムでは,それぞれが地域を分担することによって 2 期にわたりラドンおよびラドン娘核種濃度の比較・校正が実施された。前もってこの 4 機関の間の比較・校正も行われており,このプログラムに参加した機関の間でのデータの比較は可能である。なお,ラドンガスで数%,ラドン娘核種で 10 %程度の差異は容認されうる範囲である(図3)。図3　International intercomparison between world standard organizations; ARL (Australian Radiation Laboratory), EML (Environmental Measurements Laboratory, U.S.), NRPB (National Radiological Protection Board) and USBM (U.S. Bureau of Mines) 　世界中には前記 4 機関を含め,欧米諸国を中心に 20 機関以上で、それなりの特色を持ったラドンチェンバが稼働している。それらの容積は,小は 0.2 m³ 程度から大は 78 m³ まで様々である。ラドン線源の²²⁶Ra強度は0.37～74,000kBqであり,使用される²²²Rn濃度も施設の使用目的により供給濃度幅は異なるが,0.03～1,300 kBq/m³ である。気中に浮遊するラドン娘核種も対象として施設も多く,それらの施設ではエアロゾル濃度を 10⁴～10¹² m^-³ の範囲内で発生・調整する設備を備えている。また,ほとんどの施設が一般環境程度の範囲内で温度と湿度も制御可能となっている。　これらの多くの施設は,比較・校正だけではなく,ラドンの人体への影響を評価するための呼吸器官への吸入・沈着実験が行える要件を備えており,その方面の研究への利用が可能である。　現在、わが国には公的な校正施設がないが,EML程度以上の規模で吸入沈着実験も視野に入れた施設の早期設立が期待されている。コメント　　　　：　標準のラジウムから発生したラドンの内,校正容器に導入される量を定量すること,個々の測定器で使用された量を正確に知ることは難しい。また,ラドン娘核種では,試料を作成・調合し,その濃度や性状を一定期間保持することは極めて困難である。したがって,世界の基準とされる機関の間ですら校正が一致するのは難しく,ラドンガスで数%,ラドン娘核種で 10 %程度の差異が出るのは止むを得ない。　日本には公的な校正施設がなく,各機関・研究者が任意に海外の校正施設で校正することを余儀なくされており,基準となる公的な校正施設の設置が待望されている。原論文１ Data source 1： A comparison of different radon chamber D.Azimi-Garakani Radiation Hygiene Division, Paul Scherrer Institute, CH-5232, Villigen PSI,Switzerland Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, Vol.B71, p.99 (1992) 原論文２ Data source 2： Fabrication of practical radon generators Y.Hino and Y.Kawada Radiation Metrology Section, Electrotechnical Laboratory, 1-1-4, Umezono, Tsukuba, Ibaraki 305, Japan, Faculty of Engineering, Seikei University, 3-3-1,Kichijyoji-kitamachi, Musashino, Tokyo 180, Japan Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, Vol.A312, p.223 (1992) 原論文３ Data source 3： Environmental Radon, Thoron, and Related Aerosols Phillip W.Krey, Harold L.Beck, and Staff of the Laboratory U.S.Department of Energy, 376 Hadson Street, New York, NY 10014-3621, USA Annual Report, 1993, EML-560 (1994) 原論文４ Data source 4：米国EMLにおけるラドン共同比較実験下　道国,他放射線医学総合研究所内部被爆・防護研究部,千葉市稲毛区穴川 4-9-1, 263 保健物理, vol.32(3), 285-294 (1997) 原論文５ Data source 5： International Intercalibration and Intercomparison of radon, thoron and daughters measuring equipment, Part 1 Radon Measurement E.O.Knutson Aerosol Studies Division, Environmental Measurements Laboratory, U.S. Department of Energy, 376 Hadson Street, New York, NY 10014-3621, USA IIIP PART Ⅰ REPORT, OECD/NEA (1986) 参考資料１ Reference 1：米国EMLにおけるラドン共同比較校正実験床次眞司放射線医学総合研究所人間・環境研究部,千葉市稲毛区穴川 4-9-1, 263 保健物理, Vol.31, p.227 (1996) 参考資料２ Reference 2： A reference aerosol for a radon reference chamber A.Paul, U.Keyser Physikalisch-Technische Bundesanstalt (PTB), Bundesallee 100, 38116 Braunschweig, Germany Nuclear Instruments and Methods in Physics Research, Vol.A338, p.819 (1996) 参考資料３ Reference 3： The ENEA Facilities for Assessing the Quality of Indoor Radon Mesurements G.Sciocchetti, G.Cotellessa, P.De Feloce, P.G.Baldassini, M.Bovi, S.Tosti and E.Soldano ENEA, C.R.E.Casaccia, C.P.2400 00100 Roma, Italy Radiation Protection Dosimetry, Vol.56, p.303 (1994) キーワード：ラドン,ラドン娘核種,測定器,校正,ラジウム-226線源,ラドンチェンバ, radon, radon progeny, measuring device, calibration, Ra-226 source, radon chamber 分類コード：040201,040206,040301
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