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作成: 1998/03/10 繁田 道男

データ番号   :040091
照射用Co-60大線源の製造と輸送
目的      :放射線プロセス用コバルト-60線源製造
放射線の種別  :ガンマ線,中性子
放射線源    :コバルト-60線源(Multi-Bq)
利用施設名   :サバンナリバー原子力施設、中国原子力研究所、ノーディオン インタナショナル社(現MDSノーディオン社)
照射条件    :金属カプセル中
応用分野    :医療用具の滅菌、包装材料の滅菌、食品照射、改質、癌治療

概要      :
 サバンナリバー原子力施設、中国原子力研究所およびMDSノーディオン社が製造したプロセス用コバルト-60大線源の製造と特性について述べている論文である。
前2つの施設では主としてコバルト-60線源の製造実績について触れ、MDSノーディオン社は使用実績について述べている。

詳細説明    :
 サバンナリバー原子力施設では、コバルト-60線源の製造に当たって、ターゲツトの形状を大別して、ペレット、ウエハー、スラブ、ロッドの4種類について検討している。また、中性子照射時のカプセリング方法、中性子束密度と照射時間による生成放射能について述べている。更に、検討している項目としては、ターゲットの設計、使用する材料、キャニング、ギャップ、密度等についても検討されている。将来のコバルト-60線源の製造に当たっては、使用目的または使用国(特に日本を上げている)別にターゲット形状、比放射能を決めている。日本向けのコバルト-60線源の比放射能は 30Ci/gとしている。
 中国原子力研究所の論文によれば、現在(1993年と予想)コバルト-60の製造能力は1年当たり11.1 PBq である。中国には115の照射施設が稼働しており、92.9 PBqが装備されている。主とした使用目的は放射線架橋、医療用具の滅菌、食品照射である。
 コバルト-60の製造は、High Flux Engineering Reactor(HFETR 125 MW)で行われ、熱中性子密度は 6.2x1014n/cm2・s、速中性子密度は 1.7x1015n/cm2・sで、製造されるコバルト-60の比放射能は、3.7- 5.5 TBq/gである。
 製造されたコバルト-60は、ステンレス(1Cr-18Ni-9Ti)カプセルで二重にシールして使用する。リークテストはISO1677に従って実施する。最終的な放射能の誤差は、不確定要素を含め±5%以下である。ちなみに、癌治療に使用している線源の比放射能は70-120 Ci/g、放射線プロセス用が30-50 Ci/gである。中国のコバルト-60線源の需要は、年間20-25%伸びていくであろう。MDSノーディオン社の論文は、コバルト-60線源の供給実績を基にしたものである。
 述べているコバルト-60線源は、C-188(図1)に関するものである。この線源の未使用時の保管は水プールの中で行なえるのが特長で、1964年に初めてJohnson & Johnson社で411本の使用が開始され、3.5年後にこの内の2本を持ち帰り、テストを実施し、多くのデータを取得し、今日の実績となっており、現在、45か国の130を超える施設で 40,000本以上が使用されている。


図1 C-188 Cobalt-60 Irradiation Source.(原論文4より引用。 Reproduced from Inner Report of Nordion International Inc. Oct. 1989, Figure 1 (Data source 4, Text p.1), with kind permission from MDS Nordion, the owner of the equipment and technology, Kanata, Ontario, Canada. )



図2 Life Cycle of C-188. (原論文3より引用。 Reproduced from Radiat. Phys. Chem., Vol.46, No.4-6, 507-514 (1995), G.M.Defalco, V.Shah: C-188 Cobalt-60 Sealed Source Integrity: Source Monitoring: A Qualitative Study, Figure 2 (Data source 3, pp.512), Copyright (1995), with permission from Elsevier Science.)

 この論文では、図2に示すように4つのサイトに区分して、それぞれの環境における留意点についてあらゆる角度から検討した結果を述べている。特に使用する側については、プール水の管理が重要であることに触れている。
 一方、コバルト線源の輸送は避けて通ることができない重要なものである。前記の4つのサイト間では必ず輸送が伴っている。このため、MDSノーデイオン社では国際原子力機関の定める大容量のコバルト-60については B(U)型の、少量の放射性物質を運搬するものとしては A型としての必要条件を満たす設計、製造、検査を実施している。


図3 F-168型コバルト-60線源輸送容器

 現在使用されて、日本にも搬入されている B(U)型輸送容器の例を図3に示す。この容器の鉛の厚さは 27cm、重量は 5,000 kgで 200,000 Ciまで運搬できる。

コメント    :
 サバンナリバー原子力施設に係る論文に、将来の計画と書かれていることを現状で見ると、必ずしもこの通りになっていない。コバルト-60線源の要求が遥かに進んでしまったのかもしれない。
 中国原子力研究所の論文は、施設数、使用目的については繰り返し述べているが、コバルト-60線源の製造については、使用している原子炉に関してははっきりしているが、製造についての情報が今一つという感じがする。国内の需要だけに止どめているためか、供給の仕方などが明らかでない。一方、MDSノーディオン社の論文は、現実に対応したものであるので、どのような管理の下に供給されているかが明確である。特に、使用する側ですべきことを熟知して使用することが必要である。

原論文1 Data source 1:
Cobalt-60 Production at Savannah River
H.F.Allen
Reactor Technology Section, Savannh Plant, E. I. Du Pont de Nemours and Company, Aiken, South Carolina, USA
For presentation at Process Radiation Meeting sponsored by Washington Section of the American Nuclear Society, Washington, D. C., May 13, 1964. DPSPU 64-30-16 (Conf-640534--1), p.1-14

原論文2 Data source 2:
Recent Status on Cobalt-60 GAamma Ray Radiation Sources, Production and Its Application in China
C.Zhijian, S.Yunjiang, Z.Chunhua, L.Maoling
Nuclear Power Institute of China, Chengdu 610005, China
Radiat. Phys. Cham., Vol.42, Nos.1-3, 469-471 (1993)

原論文3 Data source 3:
C-188 Cobalt-60 Sealed Source Integrity: Source Monitoring
G.M.Defalco and V.Shah
Nordion International Inc., Box 13500, Kanata, Ontario, Canada, K2K 1X8
Radiat. Phys. Chem., Vol.46, No.4-6, 507-514 (1995)

原論文4 Data source 4:
Transport of Cobalt-60 Industrial Radiation Sources
P.Kunstadt
Nordion International Inc., P. O. Box 13500, Kanata, Ontario, Canada, K2K 1X8
Inner Report of Nordion International Inc. Oct. 1989

キーワード:コバルト-60、原子炉、ガンマ線、中性子、照射施設、密封線源、輸送、輸送容器
cobalt-60, atomic reactor, gamma ray, neutron, irradiation facility, sealed source, shipping, shipping container
分類コード:040204, 010401, 010402, 020403

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