ガンマ線・中性子線による散乱型密度・水分計

放射線利用技術データベースのメインページへ
作成： 1996/08/30 鈴木　隆司データ番号　　　：040040 ガンマ線・中性子線による散乱型密度・水分計目的　　　　　　：ラジオアイソト-プを利用する土の密度や水分量の計測放射線の種別　　：ガンマ線,中性子放射線源　　　　：Co-60, Cf-252: 3.7MBq以下応用分野　　　　：土質工学、土木工学、水文学概要　　　　　　：　転圧コンクリート舗装の密度管理を現場で行うため、表面散乱型RI計を用いた密度測定を行った。また、締め固め程度をリアルタイムに測定できる表面散乱型のRIを利用した測定装置を開発した。さらに、圃場の水収支を考慮するため、RIプローブ型による土壌水分量と湿潤密度を連続的に自動計測するシステムを開発した。土質の違いにより校正曲線が異なること、降雨量と土壌水分量増加の関係が分かった。詳細説明　　　　： 1.道路の施工管理への応用　わが国での転圧コンクリート舗装(RCCP)は、1987年から本格的に始まり、幅広く適用されている。RCCPの現場での締め固め密度については、RI密度計で測定し、評価するよう転圧コンクリート舗装技術指針(案)で示されているが、現場での応用はなかなかできなかった。散乱型密度計は、通常使われる透過型とは違い非破壊で定量でき、多点での品質管理が可能である。試験に使用したRI密度計は、透過型2機種と散乱型1機種で、線源にはCo-60、2.5MBqが用いられている。3工事におけるRI計測密度とコア密度の比較では、散乱型では相関が見られたが透過型では見られなかった。散乱型RI試験機による密度比(仕上げ転圧後／フィニッシャー直後)は大型のフィニッシャーの方が小さく、ローラによる転圧効果が少なかった。また、フィニッシャー直後の締め固め程度は、横断方向に密度差が生じた。散乱型RI試験機の縦断方向における品質特性では、統計解析から信頼度95%で測定器の精度以下求めようとすると、延長30mで3点の計測でRCCPの全体を代表する評価値が得られる。　土の締め固めをリアルタイムに把握して施工にフィードバックするには、遠隔操作で行われるとともに、連続測定が可能なこと、非破壊であること、定量測定が可能であることが必要である。しかし、透過型密度・水分計では、連続測定が行えず、破壊試験になってしまうため、表面散乱型密度・水分計の線源、検出器、遮蔽板の配置と自動測定について検討した。表面散乱型密度計の構成を図1に示す。図1　散乱型密度計の構成（原論文3より引用）線源はコバルト-60、3.7MBqを使用した。深部を通過したγ線ほどエネルギーが小さくなる。そこで、高エネルギー部分をカットすることにより浅い部分の散乱線の比率を相対的に低くし、図1のL、D、Gを種々変えて測定深度との関係を求めた。従来法に比べ、測定深度は20～30%拡大した。計器の構成条件を固定して計器底面と地盤の間の空隙の影響について調べた結果、従来法に比べ空隙の変化によるカウント数増加の割合は少なかった。また、フィールド実験の結果、実用化が示唆された。表面散乱型水分計では、線源にカリホルニウム-252、3.7MBqを使用した。密度計と同様にL、D、Gを種々変えて最適の測定領域を求めた。検出器と測定器間の距離をより小さくすることによりさらに測定領域を拡大されるものと考えられた。フィールド実験では、水分量の差が明確に計数率に反映された。 2.圃場の水収支への応用　連続的に自動計測する挿入型RI水分・密度計を用いて、現場での操作を試みた。RI装置は次の3つの部分から構成されている。1)γ線源(Co-60、2.59MBq)とシンチレーション検出器、中性子線源(Cf-252、1.11MBq)とヘリウム管検知器、2)スケーラー、3)アクセスパイプの中を自動的にプローブを上下させる昇降機。あらかじめ砂質土と火山灰土について室内での校正試験を行った。　図2と図3に中性子計測の結果を示す。図2　帯広砂質土の含水比と中性子計数率比（原論文2より引用）図3　畜大火山灰土の含水比と中性子計数率比（原論文2より引用）土質により校正曲線が大きく異なる(γ線の場合も同様)ことから、測定するそれぞれの土壌に対して校正をしなくてはいけない。このシステムを用いた2ヶ月間の現場測定から、降雨量と土壌中水分増加量の関係が明らかになった。また、中性子計数率比が増加するとγ線計数率比が増加した。これは土壌の含水比が増加すると増えた水分量だけ湿潤密度が大きくなるためである。また、土壌凍結による下部水分の低下していく様子も分かった。ばらつきの原因も考慮すると、地下含水量を非破壊で迅速にそして正確に把握できた。コメント　　　　：　RIを用いた水分・密度計には大きく分けて透過型、散乱型があるが、散乱型は地表面の凹凸の影響を受け精度に問題があるため、透過型の方が普及している。しかし、走行連続測定でリアルタイムに結果を見たい場合等、目的によっては散乱型を使わざるを得ない場合がある。そのためには散乱型水分・密度計の適用限界を押さえるとともに、限界をのばす努力が必要であろう。また、挿入・散乱型水分・密度計により水収支の可能性を示唆された。さらなる応用分野の開拓が望まれる。原論文１ Data source 1： RCCP施工管理手法に関する研究その(1)-散乱型RI計による密度管理- 内田　勝、手島　茂富、田中　慶裕、高田　智典＾*＾）、中川　良文＾*＾）建設省関東地方建設局　関東技術事務所、*）三井建設株式会社　技術研究所第46回セメント技術大会講演集 1992 原論文２ Data source 2： RI水分・密度計による自動計測システムと現地圃場の水分変動の測定土谷　冨士夫、辻　修、松田　豊帯広畜産大学畜産環境科学科土地資源利用学講座帯大研報　Ⅰ、17(1991), p.243～253 原論文３ Data source 3：土の締固め程度の非破壊試験法(その6)-散乱型RI法による密度・水分の測定- 梅園　輝彦、中川　良文、武山　峰典、高田　智典、嶋津　晃臣^*⁾、見波　潔^*⁾ 三井建設(株)、*)建設省土木研究所第22回土質工学研究発表会(新潟)昭和62年6月キーワード：土の締固め、転圧コンクリート舗装、圃場、散乱型RI計、密度、水分 soil compaction control, roller compaction concrete pavement, field, scattering-type RI gauge, density, moisture 分類コード：040305, 020304
放射線利用技術データベースのメインページへ