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作成: 1996/09/05 白川 芳幸

データ番号   :040039
ガンマ線レベル計
目的      :工業利用のためのガンマ線レベル計の特徴と構成
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :セシウム137(662keV) ,コバルト60 (1.173MeV, 1.333MeV)
線量(率)   :漏洩線量は線源容器表面より1m で 6μSv/h以下
利用施設名   :種々の産業分野における粉体,液体の反応タンク,および貯蔵タンク
照射条件    :空気中,室温,外気温度,特殊仕様においては高温も可能
応用分野    :鉄鋼業,紙パルプ業,化学工業,繊維工業,石油業などにおけるレベル計測

概要      :
 レベル計測は工業計測量の中でも温度,流量,圧力と共にニーズが高い.電子技術の発展,たとえばASICの進歩によって小型で高性能,高信頼性の様々なレベル計が使用できるようになった.この中で液面や粉体のレベルを外部から非接触で測定可能なガンマ線レベル計は,他の方式の適用が難しい高温,高圧の環境下で高腐食性,高粘性の物質のレベル計測に活躍している.技術的には最近,低線量化,自己診断化の傾向が現れている.

詳細説明    :
1・レベル計測概要
 プロセス産業における計測諸量の中で温度,流量,圧力が特に重要でレベルも極めてニーズが高い.種々の計測環境の下で種々の目的のレベル計測において,単一の絶対優位の技術はなく様々な技術が特徴を生かしながら利用されている.レベル計の選定において考慮すべき因子を列挙すると,要求精度,容器内の温度・圧力,被測定物の特性(腐食性,粘性,ダスト,比重,比誘電率,付着性など),容器の状態(振動,蒸気,泡,据え付けの角度など),出力内容(指示,アナログ・ディジタル信号,警報,制御など),そして装備コストが考えられる.これらの条件を加味して,レベル計の方式が選択される.その方式として,圧力・差圧式,気泡式,静電容量式,超音波式,サウンジング式,フロート式,重量式(ロードセル式),ディスプレースメント式,導電式,光学式(光散乱式),マイクロ波式,そして放射線式がある.それぞれの方式とも電子技術の発展によってコンパクトで高性能,高信頼性を確保している.

2.ガンマ線レベル計の特徴と構成
 種々の方式の中からガンマ線レベル計が採用される場合の最大の利点は,容器(タンクなど)の完全に外部から計測できることである.容器の中が高温,高圧の場合でも,比測定物が高腐食性,高粘性でもレベル計の設置および計測は影響を受けないことである.他の方式と比べて一般的には高価であり,法規制(管理区域の設定,取扱者の被爆管理・健康管理)を受けるにもかかわらず採用される理由がここにある.
 ガンマ線レベル計は容器(タンクなど)の外側にガンマ線源と検出器が相対する位置に取り付けられる.被測定物が上昇してきてガンマ線の通過パスを横切るにつれてガンマ線は減衰および吸収を受けて計数が減少してくる.そして完全に通過パスが遮られるとほとんど検出されなくなる.この特性を利用してレベルが計測できる.2種類のタイプを図1に示す.


図1 ガンマ線レベル計の構成(原論文1より引用)

新形では1個のガンマ線源から扇形のガンマ線ビームを照射し,広い測定範囲をカバーするプラスチックシンチレータを持つ検出器で計数される.その信号は変換器に伝送されて内蔵のマイクロプロセッサで処理され目的に応じたレベル出力が取り出される.従来型は複数の線源(5-12個)と1台の検出器で構成されている.新型と従来型の精度はそれぞれ再現性±1%,±2%,直線性±1%,±5%,統計ノイズ±1%,±2%である.測定範囲は容器の形状に依存するが,小レンジでは0-300mm,大レンジでは0-2600mmである.

3.新しい展開
 1線源方式の採用,あるいは検出器の種類(NaI検出器)の検討や複数化によって従来より1/2-1/3の線源の採用が可能になり低線量化が図れた.さらに整備性の向上の観点から自己診断機能が装備されてきた.プロセッサの演算能力の向上で直線性を高めるリニアライズ機能の充実,線源の減衰補正機能の充実(セシウム137は7日毎,コバルト60は5日ごとに減衰補正)によって精度も向上している.
 ガンマ線ではなく中性子を利用したレベル計も開発されている.これは漏洩線量の影響範囲の縮小と一層厚い容器(たとえば化学プラントの反応炉)への適用の可能性を開くものである.鋼鉄の厚さが25cmの容器へのレベル計の適用も珍しくない.

コメント    :
 プロセス産業においてレベル計測は重要な項目であり,その計測方法は10種類以上もある.計測原理は過去にほぼ確立されたものであり新しい原理は報告されていない.しかしながらエレクトロニクスの進歩はレベル計の設計にインパクトを与え,ガンマ線レベル計では単一線源化,検出器の高感度化による低線量化,精度向上のための演算機能充実,自己診断機能の装備などの特長を示してきた.数多くの計測方法の中で完全外部測定のニーズに対してはガンマ線レベル計の優位な立場は変わらないだろう.

原論文1 Data source 1:
低線量化を図った新形レベル計
矢島 正明、大内 幸男、佐瀬 昭
(株)日立製作所,計測器事業部,〒312 茨城県勝田市市毛882
計測技術, Vol.22, No.10, 54-58 (1994).

原論文2 Data source 2:
Level devices become more flexible, easier to use
C.Mclntyre
Endress + Hauser, Greenwood,IN 46143
I&CS, vol.66, No.1, 23-27 (1993).

原論文3 Data source 3:
Survey of Level Instruments
H.F.Entwistle
Delta Controls Corporation, Shreveport, LA 71107
Adv. Instrum. Control, Vol.46, No.Pt 2, 1319-1354 (1991).

キーワード:ガンマ線,ガンマ線源,セシウム137,コバルト60,検出器,減衰,吸収,
gamma ray, gamma ray source, Cs-137, Co-60, detector, attenuation, absorption
分類コード:040305

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