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作成: 1996/02/09 小島 拓治

データ番号   :040008
鉄筋コンクリート柱検査用移動式CT装置
目的      :強化コンクリート検査のためのガンマ線CT測定システムの開発
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :Cs-137
線量(率)   :1.11GBq
利用施設名   :Faculty of Engineering, Chulalongkorn University

概要      :
 コンピュータトモグラフィ(CT)技術は、生体内イメージング等医学診断分野では既に用いられているが、核燃料や廃棄物ドラム等の非破壊検査などへの応用の試みも進められつつある。本論文では、CT技術の工業利用への応用拡大を目的として、ガンマ線透過を用いた移動型CT装置の開発を行い、強化コンクリート柱の標準試料及び実際の建物の構造材の非破壊検査への応用を試みた。

詳細説明    :
 CTイメージデータの画像化処理については、IBM-PCを用い、クイックベーシックでプログラムを作成した。計算では、透過ガンマ線の強度と強化コンクリート柱の厚さの関係を減衰係数の関数の積分値、角度関数を考慮した透過ビーム強度をパラメータとして、フーリエ変換とコンボリューション理論を用いて数式化を行った。このなかでは、Shepp and Logan のフィルター関数を用いている。
 ガンマ線走査システムは、図1に示すように、鉛遮蔽体の5mmの窓からCs-137のガンマ線を照射し、試料である柱を隔てて反対側に位置する2"x2"NaI(TI)シンチレーション検出器で透過ガンマ線を測定するもので、ガンマ線源及び検出器の柱を隔てた位置関係をマイコン制御で変えることができる。検出器は、バックグラウンドを切るために、3mm窓をもつ遮蔽体で被っている。これを用いることにより、25cm径の柱まで測定が可能である。信号データはカウンター/タイマーで計測され、マイコンで処理される。


図1 The CT scanning system.(原論文1より引用。 Reproduced from Institute of Engineers Australia, Australian Nuclear Association 9th Pacific Basin Nuclear Conference, Sydney 1-6 May 1994, Figure 3 (Data source 1, pp.407), with permission from National Office, The Institution of Engineers, Australia.)

 このCT装置を用いて、12mmφの強化棒が4本入れられている20x20cmの標準柱試料を測定した結果、投影点数9, 18, 36まで増やすことにより、点数にしたがってより鮮明なイメージが得られた。また、4及び8時間それぞれかかる18及び36点の投影では、4本の棒のイメージがはっきりと得られた。Nuclear Technology ビルで実際使用されている20x20cmの柱の測定では、図2に示すように、径〜12mmの強化棒が柱表面から深さ〜5cmの位置にあることが鮮明に画像として得られた。
 高強度の線源の集束ビームを用いる等の画像の鮮明化、及び計測時間の短縮化が今後の課題である。


図2 CT image of concrete columns.(原論文1より引用。 Reproduced from Institute of Engineers Australia, Australian Nuclear Association 9th Pacific Basin Nuclear Conference, Sydney 1-6 May 1994, Figure 5 (Data source 1, pp.408), with permission from National Office, The Institution of Engineers, Australia.)



原論文1 Data source 1:
A mobile computed tomographic unit for inspecting reinforced concrete columns,
T.Sumitra, S.Srisatit, A.Pattarasumunt, S.Punnachaiya, N.Chankow
and M.Wannaprapa,
Applied Nuclear Technology Research Unit, Department of Nuclear Technology
Faculty of Engineering, Chulalongkorn University, Bangkok 10330, Thailand
Institute of Engineers Australia, Australian Nuclear Association 9th Pacific Basin Nuclear Conference, Sydney 1-6 May 1994, p.405

参考資料1 Reference 1:
Computed tomography of radioactive object and materials,
Sawicka, B.D. et al.,
Nucl.Instrum.Method. A299, 468 (1990).

参考資料2 Reference 2:
Some comments on the development of radiation and radioisotope measurement application in industry,
Clayton, G.,
Appl.Radiat.Isot., 41, 917 (1990).

キーワード:コンピュータトモグラフィー、強化コンクリート柱、Cs-ガンマ線走査システム、NaI(Tl)シンチレーション検出器,
computer tomography, reinforced concrete columns, Cs-γ ray scanning system, NaI(Tl) scintilation detector
分類コード:040304

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