粒子線励起X線分析法(PIXE)の現状と将来(-1992)

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作成： 1996/02/14 川面　澄データ番号　　　：040005 粒子線励起X線分析法(PIXE)の現状と将来(-1992) 目的　　　　　　：放射線の種別　　：陽子,軽イオン,重イオン放射線源　　　　：イオン加速器線量（率）　　　：照射条件　　　　：真空中、大気中応用分野　　　　：医学・生物学試料、環境科学、工業材料、考古学・文化財、鉱物学概要　　　　　　：　粒子線励起X線分析法(PIXE)は、少ない試料で、微量分析ができる。そのうえ、数十以上の元素に対して、ほとんど同じ検出感度をもつ。さらに、装置を工夫すると大気中も分析可能である。また、結晶分光器により化学結合状態分析も可能である。このため、PIXEの応用範囲はきわめて広い。ここでは、測定原理、特徴と医学・生物学試料、環境科学、工業材料、文化財への応用、さらに化学結合効果について説明する。詳細説明　　　　：　粒子線励起X線分析法(PIXE)は、微少量の試料で、微量分析ができる。そのうえ、数十以上の元素に対して、ほとんど同じ検出感度をもつ。さらに、装置を工夫すると大気中も分析可能である。また、結晶分光器により化学結合状態分析も可能である。このため、PIXEの応用範囲はきわめて広く、解説書も多い。例えば"Analytical Chemistry"では、偶数年には基礎の、また奇数年には応用の解説が特集される。PIXEの国際会議も3年ごと開催され、論文がNucl.Instrum. & Methodsに掲載されるので、文献調査に最適である。ここでは最近(1992年現在)のPIXEの現状を紹介する。　IXEの測定原理は、MeV領域のイオンビ-ムを真空槽内、または、大気中の試料に照射する。放出される特性X線をSi(Li)半導体検出器で計測するか(エネルギ-分散型)、あるいは回折結晶で分光した後、比例計数管などで計数し(波長分散型)、その信号をマルチチャネルアナライザ-(MCA)に記憶させる。試料に含まれる元素の絶対濃度値の決定は難しい問題である。正確な照射ビ-ム量の決定、試料体積または質量の決定を行う必要がある。試料体積または質量の決定には後方散乱された入射イオンの量から決める場合と、試料から放出される特性X線と連続(白色)X線の比から決める場合がある。PIXEでは1-2MeV/uのH、Heイオンが用いられる。このとき放出される連続X線は二次電子ブレムス(SEB)と原子ブレムス(AB)に起因するもので、X線スペクトルのバックグラウンドともなる。　IXEの特徴を以下に示す。　①イオン励起は電子・X線励起よりも内殻電離断面積が大きく、バックグラウンドは低い。そのためS/N比が高く、検出感度が高く、測定時間も短い。　②マトリックスが軽元素(C、Oなど)の場合でも不純物元素の検出感度が高い。　③上記検出感度を得るための一切の化学的な前処理が不要である。しかし、前処理によってさらに、検出限界を0.02ppbまで下げることも可能である。　④試料中に存在する全元素を同時に、短時間(1-30min)で計測できる。　⑤微少量の試料(10^-⁹-10^-¹⁶g)で分析可能である。　⑥非破壊分析であり、通常は真空中で測定するが、大気中やガス雰囲気中での測定も可能である。　⑦Si(Li)半導体検出器でX線スペクトルを測定する場合、Naより重い原子が対象であるが、窓なしの検出器を用いればBまで検出でき、エネルギ-分解能は150eVである。一方、結晶分光器を使用すればBe以上の全元素が測定の対象となる。エネルギ-分解能も1eVになり、X線スペクトルの微細構造が観測され、化学結合の情報も得られる。　⑧欠点は加速器が必要であり、市販の装置がないことである。コメント　　　　：　PIXEの測定原理、特徴を簡潔に、そして豊富な応用例が述べられているので、PIXEをこれから始める人には親切な総説であり、しかも読みやすいので一読を進める。1993-1995年のPIXEの応用に関する研究成果は参考文献に示した新しい総説にまとめられている。原論文１ Data source 1：粒子線励起X線分析法(PIXE)の現状と将来, 宇田　応之, 早稲田大学理工学部材料工学科、〒169東京都新宿区大久保3-4-1 応用物理, vol.61, 672-688 (1992). 参考資料１ Reference 1：最近のPIXE法での微量元素分析技術の進歩, 宇田　応之, ぶんせき, 000, 000 (1996) 印刷中参考資料２ Reference 2： PIXE: a Novel Technique for Elemental Analysis, Sven A.E. Johansson and J.L. Campbell, John Wiley & Sons, Chichester (1988). 参考資料３ Reference 3： Sven A.E. Johansson, Int. J. PIXE, vol.2, 33 (1992). 参考資料４ Reference 4： Particle-Induced X-Ray Emission Spectrometry (PIXE), Sven A.E. Johansson, John L. Campbell and Klas G. Malmqist, John Wiley & Sons, New York (1995). キーワード：PIXE、X線スペクトル、微量元素、化学効果、生物・医療、考古学、環境, PIXE, X-ray spectra, trace element, chemical effect, bio-medical, archeology, environment 分類コード：040401
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