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作成: 2008/03/01 遠山 尚紀

データ番号   :030300
医学物理士の業務と資格
目的      :医学物理士の業務と資格について概説する。
応用分野    :医学、治療

概要      :
 医学物理士の業務と資格について概説する。業務については、AAPM( the American association of physicists in medicine)を参考に説明する。また、資格については、日本医学放射線学会医学物理士認定制度規定集から受験資格、認定資格について示す。

詳細説明    :
医学物理士とは?
 医学物理士会ホームページによると、「医学物理士とは、病院・学校・研究所に所属し、物理工学の面から医学および医療に貢献し、かつ医学物理士の試験を受けて合格した人々を 「医学物理士」 という。」とある。また、米国のAAPM( the American Association of Physicists in Medicine)では、「医学物理士は放射線の安全性の保障と研究開発の手助けをすることにより、放射線画像技術を提供し、画像技術(マンモグラフィ、CT、MRI、超音波)の改良を行なってきた。そして、医学物理士は、治療技術の開発にも貢献し、放射線治療計画を立案するために放射線腫瘍医と協力し、がん患者に対して、正確な位置と線量を照射することを保証するために、装置と操作を監督する。」とある。
 
医学物理士の業務
 日本において、医学物理士の業務の明確な定義はなく、AAPMによると、医学物理士の業務は、@臨床サービスとコンサルタントA研究開発B教育に大きく分けられる。以下にその概略を示す。
@臨床サービスとコンサルタント
 医学物理士は、放射線治療において、重要な業務は、放射線治療計画の立案である。必須業務は、がん治療で使用される放射線機器(放射線治療装置、密封小線源治療装置等)の出力の校正・測定である。核医学においては、放射性同位元素を用いて内部臓器を描出し、重要な生理的情報(代謝率・血流など)を測定するために医師と協力することである。他の重要な業務は、装置・機器の品質管理、画像処理システムの品質管理、放射線施設の設計、放射線障害に関する管理である。医学物理士は、医学領域における多くの身体的問題を解決するために、臨床において科学的な助言と、問題解決能力の提供が求められる。
A研究開発
 医学物理士は、医学研究において不可欠であり、重要な役割を担う。医学物理士の業務は、がん・心臓病・精神病など広い領域を含む。がんにおいては、放射線に関する研究(放射線の生物学的影響・メカニズム、新しい装置の開発・放射線の正確な線量測定技術の開発)に対して取り組む。また、コンピュータを用いた放射線治療の線量計算や、画像表示も含まれる。粒子線治療は、活発な研究領域である。心臓病や精神病においては、生体機能の評価に携わる。そして、診断上の問題に対してデジタルコンピュータを使用した情報理論の応用も含まれる。医学物理士は、放射線診断のために新しい装置の技術開発にも関与する。これらは、X線画像を操るための磁気・電気光学記憶装置の使用、デジタルコンピュータ技術を用いた静的動的画像の定量解析、組織の特性や組成を解析するための放射線技術なども含む。医学物理士は、赤外線・超音波を利用した画像技術の領域でも研究開発に携わる。
B教育
医学物理士は、大学などで教育に携わることがある。医学物理士レジデントや研修医、医学生、診断や治療で使われる多くの装置を操作する放射線技師に対しての教育を行う。
 
医学物理士の資格
 日本における医学物理士の認定は、日本医学放射線学会によって実施される医学物理士認定試験に合格し、認定申請資格に従い認定を申請したものに対して認定される。日本医学放射線学会医学物理士認定制度規定集の概略を以下に示す。
 
日本医学物理学会正会員で、次の各号のうちの1条件を満たす者に受験資格を与える。
(1)理工農薬学修士または博士で、医学における経験年数1年以上の者
(2)理工農薬学士で、医学における経験年数3年以上の者
(3)放射線技術系もしくは放射線医学物理系の修士または博士(取得見込みを含む)
(4)放射線技術系の学士で、医学における経験年数2年以上の者
(5)診療放射線技師で、医学における経験年数5年以上の者
(6)医師・歯科医師で、医学における経験年数1年以上の者
(7)医師・歯科医師以外の医歯学博士で、医学における経験年数1年以上の者
前項の規定に拘らず学会が認めた者に受験資格を与える。
 
また、医学物理士認定申請資格を下記に示す。
 
認定試験に合格した日本医学放射線学会正会員及び日本医学物理学会正会員で過去2年間に日本医学放射線学会医学物理士業績評価実施要綱に従った業績評価の合計が30単位以上であり、次の各号のうちの1条件を満たす者で合格後5年以内の者に認定の申請資格を与える。
(1)理工農薬学修士または博士で、医学における経験年数3年以上の者
(2)理工農薬学士で、医学における経験年数5年以上の者
(3)放射線技術系もしくは放射線医学物理系の修士または博士で、医学における経験年数2年以上の者
(4)放射線技術系の学士で、医学における経験年数4年以上の者
(5)診療放射線技師で、医学における経験年数7年以上の者
(6)医師・歯科医師で、医学における経験年数3年以上の者
(7)医師・歯科医師以外の医歯学博士で、医学における経験年数3年以上の者
 
 認定試験は毎年1回以上実施され、認定試験の内容としては、医学物理士として必要な解剖学、生理学、病理学、放射線診断学、核医学、放射線治療学、放射線生物学、放射線基礎物理学、放射線防護、放射線診断物理学、核医学物理学、放射線治療物理学、放射線測定、情報処理、放射線関連法規及び勧告などであり、試験はマークシートと筆記試験がある。また、医学物理士の資格更新は、学会で規定する単位を2年間で30単位以上取得し、申請しなければならない。

コメント    :
 2008年2月1日現在、医学物理士は382名が認定されている。しかし、日本国内で医学物理士として専任で大学病院・がんセンターなどで業務しているものは少ない。今後、粒子線治療施設や、高精度放射線治療実施施設において、医学物理士の必要性が増すであろう。また、CT、MRI、PETなど医用画像のさらなる発展への寄与のために放射線診断に関する医学物理士の重要性もまた重要である。本邦では、医学物理士の定義・業務などは明確では無いが、今後、臨床現場・研究において、医学物理士が活躍することによって、その定義、業務は明確になるであろう。また、医学物理士の受験資格、認定資格等の正確な情報は日本医学放射線学会医学物理士認定制度規定集などで確認して頂きたい。

参考資料1 Reference 1:
AAPMホームページ:http://www.aapm.org/medical_physicist/types_work.asp

参考資料2 Reference 2:
医学物理士会ホームページ:http://www.geocities.co.jp/Technopolis/5207/

参考資料3 Reference 3:
日本医学放射線学会医学物理士認定制度規定集:http://www.radiology.jp/uploads/photos/318.pdf

キーワード:医学物理士
Medical physicist
分類コード:030201, 030202, 030203

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