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作成: 2006/3/1 鷲野 弘明

データ番号   :030275
PET用心筋血流診断剤:塩化ルビジウム(Rb-82)注射液
目的      :82Sr/82Rb-ジェネレータ及び塩化ルビジウム(82Rb)注射液による心筋血流PETイメージングの紹介
放射線の種別  :陽電子
応用分野    :医学、診断

概要      :
 塩化ルビジウム(82Rb)注射液は、生体内ではKイオンと似た挙動をとるPET用心筋血流イメージング剤であり、82Sr/82Rb-ジェネレータの形で供給され使用される。82Rb-PETの心筋血流イメージは、201TlClや99mTc-MIBIの心筋血流イメージより明瞭で定量性があり、検査自体も短時間で終了する。冠動脈疾患の診断精度は、82Rb-PETの方がSPECTより高い。我国では、82Rb-PET検査は行われていないが、米国では近年盛んに施行されるようになった。

詳細説明    :
1.82Sr/82Rb-ジェネレータとは?
 1970年代にポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)が開発されると、PET用診断剤の本格的探索が始まった。PET用診断剤の標識に用いる放射性同位元素(RI)には、以下に列記するような特性が求められる:
1)β壊変核種であり、望ましくは511keVの消滅γ線以外のγ線を放出しないこと
2)β壊変後に生成する娘核種は安定同位体であること
3)体内動態追跡に適した物理的半減期をもつこと(望ましくは半減期が1〜3時間)
4)原子炉あるいは加速器で生産できること、また商業化する場合、安価に生産できること
5)有機化合物に安定的に結合するか、金属イオンであれば安定的に錯体を形成すること
6)金属元素の場合、臨床投与量において強い毒性を示さないこと
β壊変する核種は多数あるが、上記の条件をすべて満足するものは決して多くない。表1に文献で散見されるPET用放射性同位元素の代表例を示す。

表1  PET用トレーサーの標識に使用される放射性同位元素

核種

物理的半減期
(分)

β+線エネルギー(MeV)
最大値(平均値)

β+線水中飛程(mm)
最大値(平均値)

生成反応

C-11

20.4分

0.959(0.326)

4.1(1.1)

11B(p, n)11C

N-13

9.96分

1.197(0.432)

5.1(1.5)

13C(p, n)13N, 12C(d, n)13N

O-15

2.03分

1.738(0.696)

7.3(2.5)

15N(p, n)15O, 14N(d, n)15O

F-18

109.8分

0.633(0.202)

2.4(0.6)

18O(p, n)18F

Cl-34m

32.0分

1.35

5.7

35Cl(n,2n)34mCl, 32S(3He,p)34mCl

K-38

7.61 分

2.68

12.4

38Ar(p, n)38K, 40Ca(d, α)38K

Mn-51

46.2分

2.19

9.9

50Cr(d, n)51Mn, 52Cr(p, 2n)51Mn

Mn-52m

21.1分

2.63

12.2

52Cr(p, n)52mMn
52Fe → 52mMn → 52Mn

Cu-62

9.74分

2.92

13.6

62Ni(p, n)62Cu
62Zn → 62Cu → 62Ni

Ga-68

68.0 分

1.89

8.4

68Zn(p, n)68Ga

Br-76

16.1時間

3.38

14.0

76Se(p, n)76Br

Rb-81

4.58時間

1.05

4.2

80Kr(d, n)81Rb

Rb-82

1.25分

3.40(1.385)

14.1(5.9)

82Sr →(EC:T1/2=25day)→ 82Rb

Tc-94

293分

0.811

3.0

94Mo(p, n)94Tc

I-124

4.15日

2.14

9.7

Sb(α, xn)124I,123Sb(α, 3n)124I

 この中で38K、81Rb、82Rbは、Kイオンと似た生体内挙動をとる1価金属イオンとなり、51Mnと52mMnはCa2イオンと似た生体内挙動をとる2価金属イオンとなる。これらはKイオンあるいはCa2イオンの類似体としていずれも心筋内に取り込まれることが知られており、82Rbは1970年代にはすでに注目されていた。
 82Rbは親核種である82Srが壊変して生成するが、親核種82Srの半減期が25日で娘核種82Rbの半減期が75秒であるため、両核種の間には放射平衡が成立する。これを利用して、Budingerらは1975年に82Sr/82Rb-ジェネレータを製作し、イヌでイメージングを行った。82Sr/82Rb-ジェネレータを用いたPETイメージング(以下82Rb-PETと省略)は1980年代には臨床研究段階に入り、Goldsteinらは82Rb-PETが心筋梗塞による心筋血流の低下を精度よく診断できることを示した。
 82Sr/82Rb-ジェネレータを用いた82Rb-PETには二つの利点がある。即ち、安静状態(rest)と負荷状態(stress)の2回検査が201TlClや99mTc-MIBIを用いたSPECTと比較して短時間で終了し(35〜45分程度)、定量的な血流測定が可能であること。さらに、病院で82Rb-PETを行うためにサイクロトロンを設置する必要がない。
 
 82Sr/82Rb-ジェネレータは、米国で1989年12月に心筋虚血や梗塞の診断を適応として承認され市販が開始された。82Rb-PETは同じく米国で1994年より保険適用となり、この2006年2月の改定ではrest/stressの2回検査で$2,484.44の保険償還改定が決定している。現在、82SrはカナダのMDS Nordion社で製造され、82Sr/82Rb-ジェネレータはGE Healthcare社で製造され、Bracco Diagnostics社が米国で販売している。一方、我国では82Sr/82Rb-ジェネレータは承認されておらず、従って82Rb-PETも臨床現場では行われていない。
 
2.82Rbの生産及び82Rbの物理学的特性
 82Rbは半減期が短く親核種82Srと放射平衡にあるため、82Rbの生産とは即ち82Srの生産に他ならない。MDS Nordion社資料によれば82Srは図1のように生産される。


図1  82Sr/82Rb-ジェネレータの製造工程

 
 11C, 13N, 15O, 18Fなど軽い核のβ崩壊では、100%の確率で基底状態に遷移するため、511keVの消滅γ線以外にγ線は発生しないが、82Rbでは励起状態への遷移によって777keVなどのγ線放出が少しある。
 生産される82Srの核的純度は、生産者の資料によれば以下のようである:
化学形: 82SrCl2 (0.1±0.05N HCl溶液中に溶解された形で供給される)
非放射能:≧25mCi/mg (≧50mCi/mL)  (1mCi = 37MBq、1μCi = 0.037MBq)
核的純度:85Sr: ≦5μCi/mCi82Sr、83Rb: ≦0.15μCi/mCi82Sr、84Rb: ≦0.15μCi/mCi82Sr
 
3.82Sr/82Rb-ジェネレータ
 82Sr/82Rb-ジェネレータについては、Bracco Diagnostics社の82Sr/82Rb-ジェネレータ
「CardioGen-82TM」の添付文書等を参考に紹介する。
(1)構造及び溶出方法
 82Sr/82Rb-ジェネレータの概観を図2に示す。


図2 82Sr/82Rb-ジェネレータの外観(原論文1より引用)

 82Srは、ジェネレータ内部の酸化第二スズ水和物が充填されたカラムに、検定時放射能量で90〜150mCi(3.33〜5.55GBq)が吸着保持されている。このカラムに添加物を含まない生理食塩液を通すことで、82Srより生成した82Rbのみが82RbCl溶液の形で溶出される。毎日最初に溶出するときには、初回の50mlは廃棄する。その後は、検査のたびに生理食塩液で溶出する。82Rbの半減期が75秒と短いため、82Rbの放射能は溶出後15分程度でほとんど消滅する。同様に溶出後カラム内での放射平衡回復も速く、10分ほど待てば次の検査に用いる82Rb溶出が可能となる。通常15〜30℃の範囲で使用される。米国の病院では、4週間ごとに82Srが充填されたカラムを交換するようである。
 
(2)塩化ルビジウム(82Rb)注射液の組成
 有効成分:塩化ルビジウム(82Rb)
 核的純度:82Sr/82Rb-ジェネレータを50ml/分以下の溶出速度で溶出するとき、溶出液に核的不純物として含まれる82Sr及び85Srの量は、溶出後で82Rbの1mCi(37MBq)当りの放射能量で82Sr:0.02μCi(740Bq)以下、85Sr:0.2μCi(7.4kBq)以下である。
 
(3)塩化ルビジウム(82Rb)注射液の効能又は効果
 米国における効能・効果は、心筋梗塞の疑いがある患者における正常心筋血流領域と低下した心筋血流領域の鑑別診断で、保険適用は、以下の三検査である。
1)心筋梗塞が疑われる患者における心筋血流低下領域(虚血〜梗塞領域)の診断
2)心筋虚血が疑われる患者におけるrest/stress(薬物負荷)の2回検査による冠血流予備能の評価
3)冠動脈疾患が疑われる患者におけるrest/stress(薬物負荷)の2回検査による冠動脈疾患の診断及びその拡がり・重症度の評価
 
(4)用法及び用量
 82Sr/82Rb-ジェネレータより溶出した塩化ルビジウム(82Rb)注射液は、ジェネレータとともに使用する注射用インフュージョンポンプを用いて患者の静脈内に50ml/分の一定速度で投与する。成人における投与放射能量は40mCi(1.48GBq)/70kg体重を標準とし、30〜60mCi(1.11〜2.22GBq)の範囲で適宜増減する。1回当りの投与量は、60mCi(2.22GBq)を超えてはならず、また、rest/stressの2回検査では2回合計の放射能投与量は120mCi(4.44GBq)を超えてはならず、投与液量も1回当り100ml、合計200mlを越えてはならない。なお、負荷は通常ジピリダモールあるいはアデノシンによる薬物負荷が採用される。
 投与終了後より撮像を開始する。推奨される撮像時間は投与2〜7分後である。
 
(5)薬効・薬理
 82Rbイオンは、生体内に投与されるとKイオンと似た挙動をとることが知られている。Kイオンは、正常心筋では心筋細胞膜のNa-KATPase系により心筋細胞内に能動的に取り込まれ、心筋内に集積する。この正常心筋内への取り込みは、主に局所心筋血流に比例しており、Kイオンでは初回冠動脈通過で約70%が取り込まれるとされる。Rbイオンでは約60%が取り込まれる。従って、Kイオンと類似の体内動態を示す塩化ルビジウム(82Rb)注射液を静脈内注射すると、82Rbイオンは全身の筋肉、特に筋収縮活動が活発な心筋には局所血流量を反映して多く集積する。虚血などの血液循環障害のある心筋部位では血流量に応じた集積低下が見られ、血流が停止した梗塞領域には集積しない。また、仮に血流が回復してもすでにATP産生が停止した壊死領域には集積しない。
 
(6)体内動態
 82Rbイオンは、投与後速やかに心筋に集積し、またそれ以外に肺・肝臓・脾臓・腎臓への分布も認める。心筋集積は、投与後1分時点ですでに認められ、初回循環抽出率(first-pass extraction fraction)は、201TlClと同程度の約60%である。腎尿路系より排泄される。
 
(7)安全性
 臨床試験では、82Rbイオンに起因すると考えられる有害事象は報告されなかった。
 
(8)被ばく線量
 塩化ルビジウム(82Rb)注射液を1回(2.22GBq)投与したときの被ばく線量を表2に紹介する。2回投与し検査したときの被ばく線量はこの2倍になる。

表2 塩化ルビジウム(82Rb)注射液を静脈内投与したときの被ばく線量(原論文2より引用)

臓器

成人における
被曝線量
(mGy/2.22GBq)

副腎

          2.15

          1.91

小腸

          3.11

上部大腸

          1.91

下部大腸

          1.91

心臓

          4.22

腎臓

          19.1

肝臓

          1.91

          3.77

卵巣

          0.84

膵臓

          1.38

骨梁

          0.0055

皮質骨

          0.0091

赤色骨髄

          0.84

精巣

          0.67

全身

          0.95

実効線量*)

0.0048mSv/MBq

*)参考資料8より引用

4.塩化ルビジウム(82Rb)注射液による心筋血流イメージングの利点
 心筋血流の評価を目的とした核医学検査には、201TlClや99mTc-MIBIなどによる心筋血流SPECTと13N-NH315O-H2Oや82Rbによる心筋血流PETがあり、心筋血流SPECTの方が日常検査として普及している。これは、世界的に見てもSPECT装置の台数がPET装置に比べて圧倒的に多く、SPECT検査の方が安価、といった理由による(加えて、我国では82Rb-PET検査自体が法的に認められていない)。しかし、82Rb-PETには以下のような201TlCl/99mTc-MIBI-SPECTにはない利点がある:
●心筋血流SPECTにおけるrest/stress 2回検査は3時間かかるが、82Rb-PETでは35〜45分で終了する。
82Rbの方がγ線エネルギーが高いため、患者の体格等に起因する不均一な放射線の散乱・吸収が少なく、アーティファクトが出にくい。従って、82Rb-PETの診断精度は201TlCl/99mTc-MIBI-SPECTより高い。
82Rb-PETによるrest/stress 2回検査(60mCi(2.22GBq)×2)の患者被ばく線量は、同様のSPECT検査の約1/4程度と少ない
 
 第一の利点について、図3に米国における検査プロトコルの一例を示す。ここでは、rest/stressの2回検査が35分〜45分で終了する。どのプロトコルを採用するかは、使うPET装置の仕様(特にγ線検出器の仕様)や性能及び患者の状態等によって決まる。


図3 82Rb-PET検査プロトコルの例。なお、40−60mCIは1.48−2.22GBq。(原論文3より引用)

 図4に82Rb-PETの健常人におけるイメージを示す。右側の82Rb-PETの心断層像の位置は、左側に模式図で示した。82Rbから放出されるβ線エネルギーは、表1に示したように18Fなど他のPET核種のβ線エネルギーより高い。よって、82Rbのβ線の生体内における飛程は他のPET核種の飛程より長く、511keVγ線が放出される位置はその分だけ82Rbの存在位置から拡がる。これは、SPECTに比べて空間分解能が高いというPETの利点を損なう特性といえる。しかし、図4の例をみると、82Rb-PETは健常人のほぼ均一な心筋血流を明瞭に描出し、収縮期と拡張期の差も読影できることから、それほど大きな問題とはならない。心筋血流の定量評価は、82Rb-PETでは専用ソフトウェアを使用すれば可能となるが、201TlCl/99mTc-MIBI-SPECTでは難しい。82Rb投与量は、一般的に2D収集の場合50〜60mCi(1.85〜2.22GBq)、3D収集の場合20mCi(740MBq)程度投与するようであるが、PET装置のγ線検出器の仕様(GSO crystal scannerかLSO crystal scanner)によっても異なる。


図4 健常人における82Rb-PETのrest/stress心筋血流イメージ
左側白黒画像(原論文4より引用):心筋イメージの見方を示す。上段の心臓模式図で短軸・長軸垂直・長軸水平の3平面で見た断層像が、中断のイメージである。各イメージで3本の主冠動脈の支配領域を下段に示す。どの冠動脈が狭窄〜梗塞を起こしたか、あるいは、どの領域が生存能(viability)を失ったかは、中段イメージにおける集積欠損から判断できる。
右側カラー画像(原論文5より引用):82Rb-PETによるrest/stress心筋血流イメージ

 第二の利点について簡単に説明する。エミッショントモグラフィーでは、99mTcの141keVγ線、201Tlの71〜167keVγ線、β線による511keVγ線を問わず、体内から放出されるγ線は体内で散乱・吸収され不均一に減衰する。このため、体内深部から発するγ線は体表部から発するγ線より減衰している確率が高く、これが画像上で集積低下(=アーティファクト)となって現れる。心筋イメージングの場合、減衰による集積低下には男女差(乳房の有無、心臓の大きさ)や体格差(やせ型、肥満型)が認められ、診断剤の診断性能そのものに悪影響を与える。SPECT核種のγ線エネルギーは、PET核種のそれより低いため、減衰による集積低下が強く現れる。PETの方が有利と言われる所以である。
 
 図5に2人の患者について、99mTc-MIBI-SPECTと82Rb-PETとのイメージの違いを示す。
 A,Bの慢性高血圧症患者は、手術前のリスク評価を目的として心機能検査を受けた。Aは99mTc-MIBIによる心電図同期SPECT像であり、高血圧に起因すると思われる軽い心機能低下のほかに、下壁から心尖部にかけて集積低下が認められた(AのSA-2,3とVLA)。この所見は、アーティファクトを疑わせるものの、心下壁内壁の瘢痕化あるいは虚血を除外することはできない。Bはこの患者の82Rb-PET像である。SPECT像で集積低下のように見えた部分は、82Rb-PETでは均一な分布を示し、アーティファクトであったことが分かる。
 C,Dは体重131kgの51歳男性の例である。太っているため吸収補正を行ったのがCのSPECT像であるが、下壁から心尖部にかけて虚血を除外することはできない(CのSA-2,3とVLA)。しかし、この例もDの82Rb-PET像よりアーティファクトであったことが分かる。


図5 2人の患者における99mTc-MIBI-SPECTと82Rb-PETによるrest/stress心筋血流イメージの比較:アーティファクトの例(原論文5より引用)

 以上のように、82Rb-PETには従来の心筋血流SPECTにはない利点がある。米国では、2006年より保険償還額が増額されたこともあって、今後82Rb-PET検査の普及に拍車がかかると予想される。
 
5.塩化ルビジウム(82Rb)注射液による心筋梗塞の診断
 表2に82Rb-PETによる冠動脈疾患の診断成績を示す。一部の研究は心筋血流SPECTとの比較を行っているので、82Rb-PETの実力を知る上で参考になる。

表3 82Rb-PETによる冠動脈疾患患者における心筋血流の評価(原論文5の抜粋)

報告者 診断剤 対象患者数 試験成績
感度(%) 特異度(%) 正診率(%)
82Rb-PETによる冠動脈疾患の診断精度に関する研究
Gould et al. 82Rb/13NH3-PET 50 95 100 -
Demer et al. 82Rb-PET 193 94 95 -
Go et al. 82Rb-PET 202 93 78 -
Williams et al. 82Rb-PET 146 98 93 -
Stewart et al. 82Rb-PET 81 84 88 -
PETとSPECTの冠動脈疾患診断精度の比較に関する研究
Go et al. 82Rb-PET 132 95 82 92
201TlCl-SPECT 79 76 78
Stewart et al. 82Rb-PET 81 87 82 85
201TlCl-SPECT 87 52 78
(参考) 13NH3-PETによる冠動脈疾患の診断精度に関する研究
Schelbert et al. 13NH3-PET 45 97 100 -
Yonekura et al. 13NH3-PET 49 93 100 -
Tamaki et al. 13NH3-PET 25 95 95 -
Tamaki et al. 13NH3-PET 51 98 100 98
201TlCl-SPECT 96 100 98
 82Rb-PETによる冠動脈疾患の診断精度は、現在のPET装置では感度・特異度ともに90%を超えると考えられ、201TlCl/99mTc-MIBI-SPECTより高い診断精度を有すると考えられる(参考資料7引用論文)。図6に心筋梗塞患者におけるrest/stress 82Rb-PETイメージを示す。


図6 心筋梗塞患者における82Rb-PETのrest/stress心筋血流イメージ
A:Restとstressのイメージでは、心尖部・心室中隔及び内壁に重度かつ広範な瘢痕形成 を認め、心室中隔の虚血はわずかに認める。
B:瘢痕化した領域の心筋収縮はほとんど見られず、左心室の機能はかなり失われている。
(原論文5より引用)

6.82Rb注射液の副作用
 特に重篤な副作用は報告されていない。

コメント    :
 82Sr/82Rb-ジェネレータはかなり高額である。そのため、1日当りの検査数がある程度確保されないと、病院の採算が取れないと言われている。日本に導入する場合の課題であろう。

原論文1 Data source 1:
CardioGen-82TM Rubidium Rb 82 Generator カタログ
Bracco Diagnostics Inc.


原論文2 Data source 2:
CardioGen-82TM Rubidium Rb 82 Generator
Bracco Diagnostics Inc.
http://www.cardiogen.com/pages/PI.htm

原論文3 Data source 3:
Major achievements in nuclear cardiology: XI. Advances in positron emission tomography
Di Cardi MF
J. Nucl Cardiol 2004; 11:719-732

原論文4 Data source 4:
SPECT正常像と読影の要点
最新臨床核医学(改訂第3版),久田 欣一 監修, 利波 紀久・久保 敦司 編著、金原出版、pp.176-183, 2002

原論文5 Data source 5:
Cardiac positron emission tomography imaging
Machac J
Dept of Radiology, Mount Sinai School of Medicine, Mount Sinai Medical Center, NY, USA
Semin Nucl Med 2005; 35:17-36

参考資料1 Reference 1:
Development of myocardial perfusion tracers for positron emission tomography
Daube ME & Nickles
Dept. of Medical Physics, Univ. Wisconsin
Int J Nucl Med Biol 1985; 12:303-314

参考資料2 Reference 2:
放射線データブック
村上 悠紀雄 他 編
地人書館, 昭和57年

参考資料3 Reference 3:
Positron emission tomography - Basic science and clinical practice
Valk PE, Bailey DL, Townsend DW & Maisey MN
Springer, 2003

参考資料4 Reference 4:
A comparison of 82Rb+ and 13NH3 for myocardial positron scintigraphy.
Budinger TF, Yano Y & Hoop B.
J Nucl Med 1975; 16:429-431

参考資料5 Reference 5:
Positron imaging of myocardial infarction with rubidium-82.
Goldstein RA, Mullani NA, Wong WH et al.
J Nucl Med 1986; 27:1824-1829

参考資料6 Reference 6:
SR-82 FACT SHEET: Strontium-82 radiochemical strontium chloride solution
MDS Nordion Website: www.mds.nordion.com

参考資料7 Reference 7:
Cardiogen-82 PET
Website: http://www.cardiogen.com/

参考資料8 Reference 8:
Prescription drug information for consumers & professionals: Rubidium Rb 82 (Systemic)
Drugs.com website: http://www.drugs.com/MMX/Rubidium_Chloride_Rb_82.html

参考資料9 Reference 9:
Myocardial perfusion with rubidium-82. I- Measurement of extraction fraction and flow with external detectors.
Mullani NA, Goldstein RA & Gould KL
J Nucl Med 1983; 24:898-906

キーワード:画像診断, ポジトロンエミッショントモグラフィー, シングルフォトンエミッショントモグラフィー, 放射性医薬品, ストロンチウム-82, ルビジウム-82, 82Sr/82Rb-ジェネレータ, Na/K-ATPase, 心筋血流, 潅流, 冠動脈疾患, 心筋梗塞, 心筋虚血, 狭心症, 塩化タリウム,
diagnostic imaging, positron emission tomography, PET, single photon emission tomography, SPECT, radiopharmaceutical, strontium-82, 82Sr, rubidium-82, 82Rb, 82Sr/82Rb-generator, CardioGen-82, myocardial blood flow, perfusion, coronary artery disease, myocardial infarction, myocardial ischemia, angina pectoris, thallium chloride, 201TlCl, 99mTc-MIBI
分類コード:030502, 030301, 030403

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