マルチディテクターCTによる非侵襲的CT冠動脈造影

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作成： 2004/08/03 小山恵子データ番号　　　：030262 マルチディテクターCTによる非侵襲的CT冠動脈造影目的　　　　　　：マルチディテクターCTを用いた非侵襲的冠動脈評価についての紹介放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：医用エックス線装置応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：マルチディテクターCT (MDCT) では、検出器の多列化とガントリー回転スピードの高速化、画像再構成法の工夫により時間分解能が短縮され、同時に、スライス厚1mmまで空間分解能も向上されている。その結果、従来型CTでは不可能であった分野への応用が進められ、従来の冠動脈造影では評価困難な冠動脈壁石灰化や、CABG(coronary artery bypass graft：冠動脈バイパス移植術)後のグラフト開存も、非侵襲的に評価可能となった。さらに心筋梗塞の原因となる冠動脈内プラークの評価も有望視されている。MDCTにより、非侵襲的な心臓冠動脈評価が、高精度に可能になると期待されている。詳細説明　　　　： ① CTによる冠動脈の画像化には2つの壁があった。1つは時間分解能で、高速に、不定期に拍動する心臓を描出するには、高い時間分解能を必要とした。もう１つは空間分解能で、直径数mmという微細な冠動脈の構造を描出するには、従来CTのスライス厚5～10mmは全く役不足であった。マルチディテクターCT (MDCT) は、患者の体軸方向に検出器を8列あるいは16列と多列化して装備し、ガントリー回転スピードも1回転0.5秒以下に高速化されている。さらに、患者の周囲180°分のデータで１断面像を再構成する方法（ハーフ再構成法）と、180°分のデータを多列化した検出器で分担するセグメント再構成で、1画像の最短実行時間分解能は60～80msecを実現している。またRetrospective心電同期法と呼ばれる心電図同期再構成法で、心時相すべてを収集し、多少時相がずれても、補正することで不整脈に対応できるようになった。空間分解能に関しては、検出器の多列化でスライス厚は1mm前後まで描出可能になった。このようにして心臓冠動脈は非侵襲的に、明瞭に観察されるようになった。心臓MDCT検査の流れは、体表に心電図をつけ、造影剤を注入し、約20-30秒間の息止めで撮像が終了する。このため他の心臓検査と比較して患者の負担が少なく、簡便である。 ② MDCTの冠動脈３次元画像表示方法にはいくつか方法がある。まずvolume rendering法（VR法）である。これを用いると冠動脈の走行と心臓（右室や左室）および大血管（上行大動脈、肺動脈）の位置関係の把握が容易である。他には冠動脈血管造影法のイメージで、一度に左右冠動脈が観察できるtree表示法や、任意の断面で表示が可能な最大値投影(maximum intensity projection : MIP)法などがある。冠動脈の病変部を詳しく観察するには、多断面再構成(multiplanar reconstruction : (MPR)法が有用である。特に冠動脈の走行に併せて同一平面上に一冠動脈を描出できる、Curved MPR (CPR)法は病変の進展度合いを評価するうえで役に立つ。 ③ CT冠動脈造影は侵襲的な冠動脈血管造影検査と比較しても、良好な正診率が報告されている。さらに冠動脈壁石灰化など、冠動脈血管造影では評価できない病変も、CT冠動脈造影では確認可能である。図１に左前下行枝に壁石灰化を認める冠動脈像を提示した。　図1　partial MIP像による前下行枝の評価。動脈壁の石灰化も良好に描出されている。(GE社提供)（原論文1より引用）　 ④ CT冠動脈造影はCABG後のグラフト開存評価でも臨床的有用性を認められている。図２には大伏在静脈グラフトと左内胸動脈グラフト施行症例を提示した。表示方法はVR法である。　図2　73歳、男性、冠動脈バイパス術後。F-H: VR像。グラフトと冠動脈との関係がよく分かる。矢印：左内胸動脈グラフト、矢頭：大伏在静脈グラフト。（原論文2より引用）　 ⑤ CT冠動脈造影による冠動脈内プラークの描出にも、期待できる成果が報告されている。心筋梗塞は冠動脈壁に存在するプラークが破綻し、末梢の血管を閉塞することで発症するといわれている。破綻しやすいプラーク（不安定プラーク）の特徴は、豊富な脂肪塊とこれを覆う薄い繊維性被膜、マクロファージの細胞浸潤である。プラークのCT値からこのような不安定プラークを検出し、心筋梗塞を非侵襲的に予見しようとする試みである。図３に左回旋枝内soft plaqueが瀰漫性に観察される症例を提示した。表示方法はCurved MPR法である。　図3　MDCTで撮像した、左回旋枝に沿ったcurved MPR像。瀰漫性のsoft plaqueを狭窄部位に観察する。（矢印）（原論文3より引用）　コメント　　　　：マルチディテクターCT (MDCT) の時間分解能、空間分解能の改善で、冠動脈の明瞭な描出が可能となった。CT冠動脈造影では、従来の侵襲的な冠動脈造影でも評価困難な冠動脈壁石灰化や、CABG後のグラフト開存も、非侵襲的に評価可能となった。さらに心筋梗塞の原因となる冠動脈内プラークの評価も有望視されている。また、MDCTは冠動脈評価のほかに、同時に収集したデータから心機能評価も可能である。非常に短時間の検査で、非侵襲的に多くの情報を得ることのできる検査ではあるが、造影剤を使用することから、腎機能障害や造影剤アレルギーの人には施行できないこと、一般的な胸部CT検査と比較すると放射線被ばくが多いことなどに留意が必要である。MDCTにより、非侵襲的な心臓冠動脈評価が、高精度に可能になると期待されている。原論文１ Data source 1：心臓、大血管領域のマルチスライスCT 宇都宮大輔, 白石慎哉,　冨口静二, 山下康行熊本大学医学部放射線医学教室 INNERVISION, 2002; 17(12): 18-21 原論文２ Data source 2：心臓CTの読影の基礎宇都宮大輔熊本大学大学院医学薬学研究部　放射線診断学 Rad Fan, 2004;2(1): 98-103 原論文３ Data source 3：心臓のイメージング－核医学からMRI, MDCTまで－多田村栄二、久保滋人、山室正樹、小西淳二京都大学放射線医学講座　核医学画像診断学 Nippon ACTA Radiologica,2003; 63: 378-384 キーワード：マルチディテクターCT, コンピューター断層法, 心臓, 診断, 冠動脈, 冠動脈疾患, CT冠動脈造影, 冠動脈bypass graft, 不安定プラーク, 急性冠動脈症候群, Multi Detector Row CT, Computed tomography, Heart, diagnosis, coronary artery, coronary artery disease, CT coronary angiography, coronary artery bypass graft, vulnerable plaque, acute coronary syndrome 分類コード：030102, 030401, 0300704
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