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作成: 2004/03/27 小山佳成

データ番号   :030247
RFによる肝細胞がんの治療
目的      :ラジオ波焼灼術による肝臓がんの治療について紹介
放射線の種別  :エックス線
放射線源    :X線管
応用分野    :医学,診断, 治療

概要      :
 肝細胞がんの治療は手術療法の他に,経カテーテル治療,全身化学療法,放射線療法,経皮的局所療法などがある.腫瘍に電極針を刺し加温することで腫瘍を壊死させる経皮的ラジオ波焼灼療法は今後の経皮的局所療法の中心となる.

詳細説明    :
肝細胞がん患者では85%は肝硬変を合併している点,多発症例の多い点などから肝切除の適応例は20-30%に限られる.さらに,たとえ外科手術に至っても5年以内に80%の症例で残肝再発が見られる.外科切除の対象にならない例や外科切除後の再発に対しては,経カテーテル治療(肝動脈塞栓術,肝動注療法),全身化学療法,放射線療法,経皮的局所療法が選択される.経皮的局所療法としては経皮的エタノール注入療法(PEIT),経皮的酢酸注入療法(PAIT),経皮的熱湯注入療法(PHoT),経皮的加温エタノール注入療法(PHEIT)経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)などが行われいずれも肝切除と比べても長期生存率に差がないと報告されている.これに最近経皮的ラジオ波焼灼術 (RFA)が加わり注目されている.1990年代前半より欧米で始まり1999年頃より我が国でも施行されるようになってきた.
<原理>
電極を病変に挿入し電極周囲を450kHzのラジオ波により誘電加熱しがんを壊死させる.数本の電極が傘状の展開針を使用するRITA社,RTC社と炭化を防ぐために冷水を循環させる単極針のRadionics社,以上3社の機器が使用されている.
 


図1 a.傘状の展開針(RITA社製) b.単極針(Radionics社製)(原論文1より引用)

<適応>
 
一般的適応として以下が挙げられている.
1.肝がんが切除不能であるか患者自身が外科的切除を希望していない
2.門脈腫瘍栓や肝外転移がない
3.血小板50000/mm3以上かつプロトロンビン時間50%以上
4.コントロール不能の腹水がない
病変の大きさと数は他の経皮的局所療法と同様3cm,3個以下とされる.門脈・腸管・胆嚢に接する病変は十分な注意が必要である.
<手技の実際>
1.静脈路確保,前投薬としてペンタゾシン30mg,塩酸ヒドロキシジン25mg,硫酸アトロピン0.5mgを投与.
2.大腿部などに2枚の対極板を付着.
3.超音波あるいはCTで目標病変を捕捉.局所麻酔後に電極針を腫瘍に穿刺.使用機器に応じて,組織内のインピーダンスが上昇するまで数分〜数十分の通電を施行.必要に応じて腫瘍内の穿刺部位を変更して数回の穿刺・焼灼を繰り返す.(超音波はリアルタイム性に優れているものの焼灼に伴うmicrobubbleにより腫瘍内部が高エコー化するためその後の追加穿刺には支障を来す場合がある.一方,CTはリアルタイム性には乏しいものの超音波では取りえない経肺のルートなど穿刺ルートの自由度が増し焼灼に伴うmicrobubbleの影響も受けづらい.症例に応じて使いわけが望まれる.)
 


図2 a.48歳男性.下大静脈に接する3.6cmの腫瘍を指摘された. b.1回目のRFA施行3日後のCTでは十分なsafety marginがないと判断し再治療が決定された. c.2回目のRFA施行後のCTでは十分なsafety marginがあると判断された.(原論文1より引用)

 
<成績と合併症>
椎名らは636例の肝細胞がんに施行し平均観察期間472日間での局所再発は12例(1.7%)としている.合併症は636例中37例(5.8%)で認められ,肝膿瘍8例,腹壁・腹腔内播種6例,門脈血栓5例,腹腔内出血4例,皮膚熱傷3例,一過性黄疸2例,広範肝梗塞による一過性肝不全2例,ドレナージを要する胸水2例,胆汁性腹膜炎,敗血症性ショック,胃潰瘍,肝静脈損傷による一過性肝機能低下,腹壁熱傷に感染合併がそれぞれ1例としている.貝沼は肝細胞がん52例103結節(腫瘍径;1.9±1.0cm,0.4-6.2cm)で4結節を除き完全壊死,7結節で局所再発を認めたのみであったとしている.長期生存率に関してBuscariniらのグループの報告では径3.5cm以下の小肝細胞がん88例の生存率は1年89%,3年62%,5年33%とされている.

コメント    :
 肝臓がんの治療にとってラジオ波焼灼術はなくてはならないものになりつつある.2004年3月の時点では健康保険適用ではないため高度先進医療,自費診療などの形で全国の病院に導入されてきた.しかし,2004年4月よりいよいよ健康保険適用が決定しさらに数多くの施設で施行されることになる.非常に治療効果の高い優れた技術でありその成果が期待されるが合併症の防止に充分な配慮が望まれる.なお,ラジオ波焼灼術は腎腫瘍,骨腫瘍,肺腫瘍,副腎腫瘍などへとその適応を広げつつあり現在もっとも注目すべき技術である.

原論文1 Data source 1:
画像支援穿刺術−直接穿刺によるIVR− 1.肝癌に対する経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)
椎名秀一朗,寺谷卓馬,佐藤新平,建石良介,金原猛,石川隆,菅田美保,山敷宣代,小尾俊太郎,能祖一裕,矢田豊,小俣政男
IVR会誌,2003;18:128-132

原論文2 Data source 2:
肝腫瘍に対する局所療法 ラジオ波熱凝固療法(RFA)
貝沼修
臨床画像,2001;17:914-922

キーワード:ラジオ波焼灼術,肝臓がん,肝細胞がん,超音波断層法,コンピュータ断層法,電極,経皮的エタノール注入療法,経カテーテル的肝動脈塞栓療法,radiofrequency ablation,hepatic cancer,hapatocellular carcinoma,ultrasonic tomography,computerized tomography,electrode,Percutaneous ethanol injection therapy,transcatheter arterial embolization
分類コード:030101,030102,030107

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