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作成: 2003/03/24 遠藤啓吾

データ番号   :030237
胃がんの診断
目的      :日本人に多い胃がんの早期診断
放射線の種別  :エックス線
放射線源    :X線管
利用施設名   :全国の病院、診療所
応用分野    :医学、診断、検診

概要      :
 胃がんによる死亡者は徐々に減少しているとはいえ、我が国では今なお肺がんに次いで第2位のがん死亡の原因となっている。早期発見早期治療が鉄則で検診により、多くの胃がんが発見されている。胃のX線検査は多数の集団を効率よく検査するのに優れており、胃集検により数多くの救命可能な胃がんが発見されている。胃がんの検査には胃カメラによる内視鏡検査も行われているが、胃のX線検査は集団検診に適しており、1年間に500万人以上を対象として数多く行われている。

詳細説明    :
 胃がんの死亡率は減少傾向にあるが、羅患率は変化していない。早期発見が死亡率減少に寄与していると思われる。胃がんの診断にはX線検査と、胃の内視鏡検査(胃カメラ)があり、昔はX線検査が主流であったが、現在では胃内視鏡検査が主流となっている。
 胃内視鏡検査は胃カメラの技術的発展で患者が苦痛なく行えるようになったこと、病変があればすぐ病変部の一部を摘出し病理組織検査を行えること、さらに内視鏡下で早期がんの治療まで行うことができるなどの理由による。しかし多数の集団を効率よく検査するには、今なおX線検査は優れている。X線検査によるスクリーニングは救命可能な早期がんの状態で発見できれば十分である。集団検診(地域・職域):本来は住民検診としてスタートした集団検診であるが、都市部では職域検診が増加しだした。全国の受診者の推移を図1に示す。開始以来漸増傾向であったが、平成6年の690万をピークに漸減している。
 胃の集検には間接X線検査と、直接X線検査があり、間接X線検査は、I.I.面の画像(Image Intensifier:映像倍増管)を100mmフィルムに露光する。車検診(主に地域住民検診)で用いられるもので、平成12年度の全国集計では79.3%を占めている。
 直接X線検査は、X線フィルムに直接曝射するもので、施設検診(主に職域検診)に用いられ、同じく全国集計で20.7%になる。
 胃集検撮影技術は、実際の撮影の93%を施行している診療放射線技師により、熱心に研修され、学会による認定技師制度も導入されている。撮影したフィルムは医師により読影されるが、読影の点でも習熟には前述した研修が不可欠である。集検によるX線検査で必要があれば内視鏡検査を受けることになる。つまり検診としてのスクリーニング検査としてはX線検査を、精密検査として内視鏡検査が一般的である。
 検診としてせっかく胃X線検査を受けても精密検査を受けなければ検診の意味がない。精密検査を受ける割合は、地域住民検診は82%前後を保っているが、職域検診は51%程度が現状である。検診機関にも問題点があるが、精密検査を行う医療機関に不備があることもある。この問題は、集団も個別も同様であり、実施主体者、検診機関および受診者を含めた恒久的な課題であろう。
 医療技術の進歩と検診により、早期胃がんの発見数の増加に伴う治癒率の向上で、たとえ胃がんが発見されても治療により治癒する症例が数多く見られる(図2)。
 胃がんに特有な症状はなく、ことに早期のがんではまったく無症状である。上腹部のもたれ感、食欲減退、体重減少などの症状が出現するのは、かなり進行した胃がんのことが多い(図3)。
 胃がんは無症状期に発見し、内視鏡ないし外科的治療を行うのがよい。早期発見の必要性を再認識せねばならない。


図1 全国胃集検受診者数の推移 原論文1より



図2 検診で発見された早期胃がん a.1年前、異常なし。b.早期胃がん。1年前(a)は胃がんは診断されていなかったが、1年後(b)に胃集検にて早期胃がんが発見された。原論文1より



図3 進行胃がん。スキルス胃がんと呼ばれる予後の悪い胃がんの胃X線写真。



コメント    :
胃がんは早期発見、早期治療により救命できる悪性腫瘍である。

原論文1 Data source 1:

北川晋二1)、古賀 充2)、中村裕一3)
1)福岡大学医学部放射線科、2)福岡地区胃集検読影研究会、3)福岡市医師会消化管検診委員会
臨床画像 19:308-316, 2003.

キーワード:胃がん、gastric cancer, 集団検診mass screening, 内視鏡endoscope,X線検査X-ray examination,X線直接撮影fluoroscopy,X線間接撮影fluororoentgenography,早期がんearly cancer,スキルスがんscirrhous carcinoma
分類コード:030103

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