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作成: 2003/03/27 遠藤 啓吾

データ番号   :030235
放射線診療ガイドライン
目的      :放射線診療ガイドライン
放射線の種別  :エックス線,ガンマ線
放射線源    :X線撮影、CT、MRI
利用施設名   :全国の病院、診療所

概要      :
 検査や薬の処方も、ガイドラインに基づいて行われるようになってきている。診療ガイドラインとは「特定の臨床状況のもとで、適切な判断や決断を下せるよう支援する目的で体系的に作成された文書」をいう。「根拠に基づいた医療Evidence-based Medicine」の手順に則して作成されたものである。病気の診断、治療が医師の長年にわたる経験とカンにより行われていた時代もあったが、すでに過去のものとなった。

詳細説明    :
 X線CTの発明により脳の病気の診断は、革命的に進歩した。今まで見えなかった脳の内部まで、病気の有無が分かるようになった。磁気を利用したMRIが開発され、MRIを用いるとCTよりもさらに脳の内部がさも目で見ていると思われるようにはっきり分かるようになった。そのため従来の行われていた脳の単純X線撮影はほとんど行われなくなった。しかし、一人の患者を目の前にしてまず最初にどの検査を行うか、主治医は頭を悩ませることになる。最近の画像診断法の進歩は目覚ましいものがあり、脳血管障害の領域においてもMRI/MRA、MRIの特殊撮影法である拡散強調画像、マルチスライスCTなどが出現したが、一方ではその適応が正しく理解されていないための混乱も頻繁に生じている。不必要な検査の実施、診断方法の不適切な選択は、その結果としてムダな検査、ムダな医療被ばくおよび医療費の増加等に結びつく可能性がある。よって明確な画像診断の指針を示し、それに従って診療を進めていくことが今求められている。実際上はいまだエビデンスのない診療行為も多く、特に画像診断領域においては、ある検査をして患者の状態が良くなったかどうかの有用性の評価が極めて難しい、特異度や感度は検索可能だがどのような検査の組合せが有効かについてエビデンスを探すのが難しい、など多くの困難があるため、エビデンスに基づく包括的な画像診断ガイドラインは存在しないのが実情である。
 1999年以降、厚生労働省の医療技術評価総合研究事業により、12の学会がエビデンスに基づいた診療ガイドラインの作成を行うようになって以来、我が国におけるエビデンス ベイスド メディシン(EBM)への関心は急速に高まった。
 あやふやな経験や直感に頼らず、科学的evidence(証拠)に基づいて最適な治療を選択し、実践するための方法論である。自分の受け持つ患者のケアを行ううえで必要となる診断・予後・治療法などに関するデータを、疫学的・生物統計学的手法で解析し、もっとも適切な臨床判断を下そうとするものである。
 診療の現場で実際に画像診断に携わる放射線科医が、患者の生活レベル(QOL)の改善まで視野に入れて、現時点においてもっとも合理的と思われる画像診断の適応や適応順序をエビデンスに基づき明確にし、臨床医の日常業務の指針とし、日常業務を援助する。これを通して、医療被ばくの低減、医療レベルの地域差の解消と医療の質の確保を目指し、国民の福祉に寄与することである。産業医科大学放射線科興梠征典先生らが中心となって、日本放射線科専門医会・医会では画像診断ガイドラインを作成している。脳神経疾患、胸部疾患、心大血管疾患、肝胆膵臓の病気、泌尿器生殖器疾患、骨の病気、小児の病気、消化管、乳房などほとんどの臓器の画像診断についてのガイドラインが作成されつつある。(http://www.jcr.or.jp/guideline/mokuji.htmlを参照すれば診ることができる)

表1 放射線診療ガイドライン

各グループの代表者と共同執筆者

脳神経と頭頚部 興梠征典(産業医科大)、宇都宮英綱(福岡大)、小玉隆男(宮崎医大)
安陪等思(久留米大)、小島和行(久留米大)三原太(九州大)
胸部 中島康雄(聖マリアンナ医大)、酒井文彦(都立駒込病院)、荒川浩明
(聖マリアンナ医大)、櫛橋民生(昭和大)、佐藤雅史(日本医大)
心大血管 松永尚文(山口大)、吉岡邦浩(岩手医大)、坂本一郎(長崎大学)
肝胆膵 伊藤勝陽(広島大)、河野敦(がん研病院)、住幸治(順天堂浦安)
本多正徳(済生会宇都宮)、内村文昭(山形県立日本海)、小川健二(日本鋼管)
泌尿生殖器 杉村和朗(神戸大)、鳴海善文(大阪大学)、津田恭(市立堺)、
高橋哲(大阪中央)、後閑武彦(昭和大)、楫靖(神戸大)、赤坂好宣(神戸大)
北村ゆり(神戸大)、今岡いずみ(天理よろず相談所)、山岡利成(京都大)
骨軟部 福田国彦(慈恵医大)、青木純(群馬大)、江原茂(岩手医大)、大橋健二郎
(聖マリアンナ医大)、杉本英治(自治医大)、原澤有美 (帝京大)、大和実(聖母)
小児 甲田英一(東邦大)、相田典子(神奈川こども医療センター)
相原敏則(埼玉小児医療センター)、青木克彦(静岡県立こども)
消化管 斎田幸久(筑波大)、川元健二(九州大)、石川勉(栃木がんセンター)
乳房 遠藤登喜子(国立名古屋)、角田博子(聖路加病院)、東野英利子(筑波大)


コメント    :
経験や直感に基づいた医療から科学的な根拠に基づいた医療に変わりつつある。

参考資料1 Reference 1:
1. 放射線科専門医会画像診断ガイドライン
2. ACR Standard
3. ACR Appropriateness Criteria
4. 東邦大学医学メディアセンター(国内ガイドラインの疾患別リスト)
5. MI-NET(医療改善ネットワーク) (国内外ガイドラインのリスト)
6. NGC (National Guidelines Clearinghouse) (海外ガイドラインの検索)
7. 「EBMの普及のためのシラバス作成と教育方法およびEBMの有効性評価に関する研究」研究代表者 福井次矢(京都大学大学院医学研究科臨疫学)

キーワード:ガイドライン guideline, 根拠に基づいた医療 evidence based medicine, 画像診断 diagnostic radiology, 頭頚部疾患 head & neck disease, 肺疾患 lung disease, 心疾患 heart disease, 小児疾患 pediatric disease, 乳腺疾患 breast disease.
分類コード:030102,030103,030106,030107

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