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作成: 2001/11/1 玉木長良

データ番号   :030230
CT −PETハイブリッド型装置
目的      :CT画像とPET画像の重ね合わせ装置の紹介と臨床利用
放射線の種別  :エックス線,ガンマ線
放射線源    :サイクロトロン産生短寿命同位元素及びX線
応用分野    :医学

概要      :
 CT−PET装置は一台の装置でX線CTとPETの検査ができるもので、PETで得られる機能情報をCTで得られる形態情報と重ね合わせることを可能とし、両者の情報をより活用することに役立つ。特に悪性腫瘍の局所診断や評価の点でCTで見られる所見の裏付けをすることができ、その臨床的意義は大きい。

詳細説明    :
 
 画像診断の中でも臓器の機能評価や特異的映像法として利用されてきた核医学画像診断法は、新しい時代に向けて技術革新と新しい臨床応用が期待される。ここで紹介するCT−PETはその最先端の装置である。一台の装置でCTとPETが撮像でき両者の融合画像が得られる手法である。
 
 ポジトロン断層撮影法(PET)は生理的活性物質を標識してその挙動を機能画像としてとらえることのできる、機能画像診断法の最も進んだ手法である。特に悪性腫瘍ではブドウ糖の利用が高いため、ブドウ糖の誘導体であるF−18フルオロデオキシグルコ−ス(FDG)が腫瘍に集積する。現在本剤を用いたPET検査が悪性腫瘍の診断、評価に広く利用されるようになっている。他方X線CTは悪性腫瘍などの診断に不可欠な検査法として広く利用されてきた。これまで画像診断法としてこのFDGを用いたPETとX線CT検査が別々に行われているが、この新しい装置を利用すれば、一台の装置で両者の検査を受けることができる。
 CT−PETとは一台のガントリ−内にPET用の検出器とX線CT用の装置の入った装置である。


図1 CT−PETの概略図(原論文1より引用)


現在開発されているものでは、CTとPETの検出器はZ軸上で隣り合わせて配列されており、同時収集は出来ないが、CTとPETの検出をベッドの移動だけで、一連の撮影を行う事が可能である。


図2 A)肺癌のCT、B)FDG−PET像、 C)両者の重ね合わせ像 (原論文1より引用)

 
 この検査法の最大の特徴は前述のとおり、被検者をベットに寝かせた状態で検査を引き続き行い、FDGによる機能画像とCTによる形態画像を簡単に重ね合わすことができる点である。これによって以下に示すような様々な利点が得られる。
 
1) 形態画像と機能画像を重ね合わせることで、活動性病変の位置や広がりを正確に同定できる。
2) CTでみられた形態異常所見に代謝情報を載せることでCT所見の裏付けをすることが出来る。
3) これまでCTで行われていたインタ−ベンション治療や生検などを重ね合わせ画像をみることでより、的確な部位をみることができる。
4) FDGでは、腎臓や膀胱などへの生理的集積を伴うことがあるが、これらと異常集積とを鑑別する事が出来、診断精度が向上する。
5) PET検査には体内のガンマ線吸収を補正するために、外部線源をまわして吸収補正マップを得ている(トランスミッションスキャン)。吸収マップをCTで代用することにより短時間で精度の高い吸収補正を行うことができる。

コメント    :
 このCT−PET装置の登場で形態画像と機能画像が一連に撮影出来るようになってきた。今後両者の特長がさらに生かされることが期待される。本邦でも早期に医療用具の承認を受け、施設上の問題も解決し、一日も早く臨床の場に利用出来るようになることを期待したい。

原論文1 Data source 1:
A combined PET/CT scanner for clinical oncology
Beyer T,Townsend DW,Brun T,et al.
J.Nucl Med 41(8):1369-1379,2000

キーワード:ポジトロン断層撮影法, Positron emission tomography,画像重ね合わせ, fusion image,フルオロデオキシグルコ−ス,fluoro deoxy glucose;FDG,コンピュ−タ断層法,computed tomography;CT,腫瘍診断tumor diagnosis,ペット,PET
分類コード:030301, 030102, 030502

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