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作成: 2001/10/24 成田 雄一郎

データ番号   :030226
医療法施行規則改正 -RI濃度算定式の合理化にむけて-
目的      :医療法施行規則改正にともない空気中、排気中および排水中のRI濃度算定法も改定され医薬発第188号として通知されたので紹介する。
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :放射性医薬品
利用施設名   :核医学検査施設
応用分野    :医学、核医学

概要      :
 医療法施行規則改正に伴い放射性同位元素の空気中、排気中及び排水中放射性同位元素濃度の算定方法を定める健政発第20号が医薬発第188号として改正が加えられた。特に排水中濃度算定には合理化が図られ管理と実態の矛盾がないように訂正が加えられたので紹介するとともに、例をあげてその変更の実際を示す。

詳細説明    :
 
◆管理と規則の整合性を図るために
 
平成13年4月をもって告示されたRI関連の法令改正であるが、改めていうまでもなく1990年にICRP(国際放射線防護委員会)が勧告したICRP Pub.60を国内法令に取り入れたものである。その中で検討された項目は、1)関連法令との一元化、2)基準線量として『実効線量』を採用、3)各基準線量限度の引き下げ、4)RI濃度限度の引き下げと算定式の合理化、5)放射線関係装置の使用実態に対する法整備、等がある。特に今回の法令改正においては管理の実態と法規制に矛盾が生じないように種々検討されたといえる。
RI濃度に対する管理は原則として実測する必要があるが、それが困難な場合には計算により安全性を確保することになる。従来RI濃度算定は健政発第20号(平成元年1月18日)で示されていたが、医療法施行規則で新たに3月間最大使用数量を届出数量として規定したことを受けて健政発第20号は廃止、その代わりに3月間最大使用数量を算定式に組み込んだ医薬発188号(平成13年3月16日)が通知され新たな規定となった。
 
 
◆医薬発188号(平成13年3月16日)
 
 医薬発188号におけるRI濃度の算定では、空気中、排気中および排水中のRI濃度の算定方法が示されている。空気中RI濃度はRIの飛散率を考慮して1日最大使用予定数量から1週間の平均RI濃度を算出する、排気中に関しても各フィルタ効果等を考慮し3月間最大使用予定数量を用いて3月間の平均RI濃度を算出する。管理期間の変更はあったにしろ基本的な評価方法に関しては従来と大きく相違するものではない。考え方の大きな変更があったのが排水中RI濃度の算定に関してである。従来は排水槽が満水になるまでの期間毎日1日最大使用予定数量を流入し続けるとして排水1回毎のRI濃度を評価していた。
 
 しかし、このような状況は実態と大きく懸け離れており、過度な安全側の評価になっているとの指摘もあった。またこの方法では転移性骨腫瘍の疼痛緩和などに用いられる長半減期のβ核種の使用にあたって不本意な制限が加わること等も懸念されていた。医薬発第188号では算定濃度が医療法施行規則で規定する濃度限度と整合性が取れるように、3月間の平均RI濃度になるように計算式の変更がなされた(図1)。


図1 排水1回ごとの排水中RI濃度算定の考え方の比較。従来法(健政発第20号)は排水槽が満タンになるまでの期間毎日1日最大使用予定数量を使用するとし過度な安全側の評価となっていた。改正された医薬発第188号は、3月間の平均RI濃度を算出する目的から、3月間の間に使用できる1日最大使用予定数量を3月間最大使用予定数量との比から求めそれをRI流入期間として従来式を計算するとした。

 つまり排水槽が満水になるまでの期間に1日最大使用予定数量を何回使用することがきるかを、新たに届出項目として追加した3月間最大使用予定数量から算出し従来式の流入期間(t1)として使用するというものである。これにより合理的な評価方法が確立されたとともに、管理と規定の整合性が図られることになる。
 
 
◆排水中RI濃度算定の例
 
 排水中RI濃度の算定について、従来の健政発第20号と医薬発第188号での比較例を示す。対象は4m3の貯留槽で、流入量0.2m3/日、RI混入率0.01、満水になるまでに期間は20日、減衰期間を20日として評価した。図2に対象とする核種とそれぞれの1日最大使用予定数量及び3月間最大使用予定数量、濃度限度を示した。健政発第20号の場合の流入期間は全てで20日であるが、医薬発第188号ではそれぞれで値が異なりそれに応じて算出RI濃度も従来法のそれとは異なる。結果、従来法では10倍希釈を行なっても排水できないものが、医薬発第188号では排水可能になることが示されている。


図2 排水中RI濃度算定方法の従来法と医薬発第188号の比較。 使用核種とそれぞれの1日最大使用予定数量と3月間最大使用予定数量は千葉県がんセンター核医学診療部の実績から仮定した。


◆管理体勢の強化
 
 今回の放射線防護関連法令の改正では多くの基準値が厳しくなったのが事実である。医薬発第188号の排水中RI濃度算定法はその流れとは逆に向かう結果となったが、合理性を追求した結果であることを理解すべきであろう。つまり、基準限度値が厳しくなったことによりこれまで以上の管理体勢の強化を要求されたことを客観的に受け止め実行していくべきであろう。
 

キーワード:国際放射線防護委員会,International Committee of Radiation Protection, ICRP90年勧告, ICRP Pub.60, 医療法施行規則,Enforcement Regulations of the Medical Service Law, 排水中RI濃度限度, Controlled limitation of activity concentration for radioactive drain
分類コード:030301, 030302, 030501, 030604

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