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作成: 2000/10/14 田中雅人

データ番号   :030213
WEBをベースとした医用画像管理システム
目的      :医用画像管理システムの実質的な臨床応用を可能にする
放射線の種別  :エックス線
応用分野    :医学、診断支援、研究支援

概要      :
 福井医科大学放射線部では医用画像管理システムへの様々なアプローチを数年前より行なっていた。その中で本学の目指すコンセプトは、“如何に蓄積するか"ではなく“如何に利用するか"を主眼とすることとした。WEB技術を積極的に利用し画像を8bit-Jpeg圧縮化することで、現在システムは極めて順調に動作しており、約3年2ヶ月稼動し検査件数約25000件、蓄積画像は320万枚を越えている。

詳細説明    :
1.はじめに
 本学放射線部では医用画像管理システムに対して、“如何に蓄積するか"ではなく“如何に利用するか"を主眼に置いた開発を目指した。それを実現する要素技術として、1)8Bit-Jpeg圧縮した医用画像を参照目的として容認する、2)オートアーカイビング機能の実現、3)積極的なWEB技術の導入、4)分散環境の採用、などとした。また、この分散環境においては、自律的に協調運転しエンドユーザにシステムの持つ複雑さを隠蔽する仕組みを実現した。この自律分散協調システムで、放射線部門内だけでなく病院内、病院間でも同じ仕組みで動作するスケーラブルなシステムが実現できた。
2.システムの基礎を成す要素技術の説明
1)8bit-Jpeg圧縮した画像
 本システムが扱う画像は次の項2)で述べる方法で取得するが、8bitで取り込んだ画像をモダリティーによって適正化した圧縮率によってJpeg圧縮する。それらの画像は参照目的であれば十分の画質を保っていると判断した。
2)オートアーカイビング機能
 オートアーカイビング機能はArray社製DICOM-Pro CaptureとPrintで構成され、Captureが診断情報化された画像をLaser Imager撮影時に自動的に取り込み、患者ID番号や氏名などを自動認識しDICOM Headerを作成後、DICOM Storage Service Classで画像サーバへ送信する。オペレータはルーチン業務を行うことでデータベースへの登録も同時に行うことになる。その概要を図1に示す。


図1 オートアーカイビング機構のブロックダイアグラム オペレータがLaser Imagerへ撮影するタイミングで診断情報化された画像をキャプチャし文字認識した後DICOM Storage Service ClassとPrint Management Service ClassでDICOMサーバーとLaser Printerに画像データを送出する。

3)積極的なWEB技術の導入(Java言語の利用)
 システムを有効利用するためには、エンドユーザがシステムへ容易に参加できることが望ましい。そこで我々はWeb Browserだけで利用できる仕組みを実現するためJavaを用いJava Appletとして供給する形を採用した。
4)分散環境の採用
 本システムは画像リソースを管理するため複数台のサーバーに分散して蓄積管理する構造を採用した。それにより負荷分散、危険分散、機能分散、投資分散が実現できた。
3.システム構成
 システム構成図を図2に示す。CT2台、MR2台、超音波2台、SPECT3台、PET1台、血管造影装置3台の計13台が接続されている。それを3台の画像サーバで受信管理している。また、過去1年4ヶ月の全モダリティーの画像は4代目のサーバにて管理している。


図2  CT2台、MR2台、超音波2台、SPECT3台、PET1台、血管造影装置3台の計13台が接続さし、3台の画像サーバで受信管理している。

4.自律分散協調システム
 自律分散協調をJava Applicationで実現した。クライアントからの検索要求があるサーバに発行されるとまずローカルData Baseを検索した後、協調サーバマップに記述してあるサーバに問い合わせる。問い合わされたサーバは同様にローカルのData Baseを検索し結果を問い合わせ先のサーバへ戻す。クライアントから直接要求を受けたサーバがすべての結果を統合化しクライアントへ戻すことで、複数のサーバが1台のサーバのように振る舞う。概念図を図3に示す。


図3 クライアントから発行された検索要求を複数のサーバが協調して処理し応答する。また、サーバ連携は自律的に管理される。(原論文2より引用)

5.結果とまとめ
 運用期間1998年5月より2000年10月までで検査件数28000件、蓄積画像320万枚、蓄積容量60GBであり、システムレスポンスは、検索が約1.5秒、サムネイル画像12枚を表示するのに要する時間が2秒、詳細観察画像を表示するのに1秒である。ネットワーク負荷はDICOM画像受信時に最大で252Kbyt/sec、クライアントへの画像送出時に最大で17Kbyt/secであった。このシステムを導入後臨床現場での評価は極めて高く、そのレスポンスと画質ならびにシステムへの参加のし易さがその主な理由と思われる。実際には日々の検査実施時、所見作成時、カンファレンスなど大変活発に利用されている。今後はCR画像の取り扱いも含めたシステムの構築を目指す。

コメント    :
 現場で大変よく活用され、また、大きなインパクトのあったシステムです。

原論文1 Data source 1:
分散環境下における放射線画像管理システムの試み
田中雅人、上坂秀樹、河村泰孝、小室裕再、伊藤春海、石井靖、米倉義晴、定藤規弘、小倉久和
福井医科大学医学部附属病院放射線部
Medical Imaging Technology, Vol.18, No.2 March 2000 149-157

原論文2 Data source 2:
マルチエージェントサーバによる医用画像管理システム(動画像への対応)
田中雅人、上坂秀樹、小室裕再、伊藤春海、米倉義晴、定藤規弘、小倉久和
福井医科大学医学部附属病院放射線部
Medical Imaging Technology, Vol.18, No.4 July 2000 521-522

原論文3 Data source 3:
Masato Tanaka
Department of Radiology, Fukui Medical University
Medical Informatics (1998), Vol. 23, No. 1, 85-88


キーワード:WEB技術 web technology, 自律分散協調制御 autonomous distributed collaborate control, アップレット applet, JAVA言語 JAVA language, 医用画像 medical image, 蓄積 archive, Jpeg圧縮 Jpeg compression, DICOM DICOM
分類コード:030104

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