転移性脳腫瘍への定位放射線照射

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作成： 2000/10/05 白土博樹データ番号　　　：030199 転移性脳腫瘍への定位放射線照射目的　　　　　　：新しい高精度放射線治療法の開発と臨床応用放射線の種別　　：エックス線,電子放射線源　　　　：電子加速器(4,6,10MeV) 線量（率）　　　：0.5Gy/s 利用施設名　　　：北海道大学医学部附属病院照射条件　　　　：空気中、室温応用分野　　　　：癌治療概要　　　　　　：　小体積であれば人体に大線量を与えることが可能であることを利用した、新たな放射線治療。直線加速器(リニアック)を用い、頭蓋骨の体外からの固定により精度良く、転移性腫瘍の局所治療が可能となった。90%以上の局所制御率、70%の症状改善率を得、障害が少ないため、全脳照射単独治療に変わり、定位放射線照射単独あるいは全脳照射との併用が標準的治療になってきた。詳細説明　　　　：　　最近は、定位放射線照射(Stereotactic irradiation)とは、以下のように定義される。 Narrow beamの電離放射線を患部に集中して照射する治療法のうち、 (1) 患者あるいはそれに連結された座標系において照射中心を固定精度内に納めるシステムであること。 (2) 定位的手術枠を用いた方法、または着脱式固定器具を用いた方法であること。 (3) 照射装置の照射中心精度が1mm以内であること。 (4) 治療中を通じて上記の固定精度を保てること。以上の4つも条件を満たすことのできる放射線治療は、以下のように分類される。 ① 一回照射の場合、定位手術的照射 Stereotactic radiosurgery, SRS ② 分割照射の場合、定位放射線治療 Stereotactic radiotherapy, SRT (注)ガンマナイフの健保採用時点では、まだ上記の名称が定まっておらず、総称として定位放射線治療が定位放射線照射の代わりに使われており、そのまま健保採用上の名称となっている。　　直径3cm以下、4個以下の転移性脳腫瘍は定位放射線照射が良い適応とされる。これは転移性腫瘍が球形で3次元照射の線量分布に近いためであるが、辺縁からの再発を15%程度に起こす。また、非照射部位の脳から40-50%の再発がある。従来から用いられている全脳照射との使い分けが問題となるが、現在の所は4個以下の場合には定位放射線照射単独、それ以上の場合には全脳照射を用い、神経症状を起こす可能性がある部位のみ定位照射を追加するという方針を用いている施設が多い。4個を超える場合には、リニアックを持っている施設では全脳照射が用いられることが多く、最近増えたガンマナイフのみを持つ施設では個々の転移を定位手術的に照射することが増えている。4個を超えた場合も、target volumeの総体積が小さい場合(つまり、個々の転移が5mm程度の場合)であれば、定位手術的照射のみでも全脳照射線量は許容範囲に収まる。　　投与線量としては一回照射で中心線量20‐30Gy、辺縁線量18Gy以上が一般的に用いられている。しかしながら病変が脳幹部に存在する場合は中心線量で15Gy程度を用いる場合が多い。全脳照射後に定位放射線治療を追加する場合は一般的には15Gy程度を用いることが安全性の面から望ましい。1年実測局所制御率(CR, PR, NC)で70-90%程度。従来放射線抵抗性とされているメラノーマ、腎細胞癌等でも高い局所制御率が得られることが特徴的であり、画像診断上は残存腫瘍があったとしても長期間増大を見ない場合が多い。局所制御に関連する因子として最も大切なのは腫瘍のサイズである。大きな腫瘍は安全性の面から十分な放射線を投与することができないことが最大の原因として考えられている。　　実際に患者を経過観察するに当たって、主に3点の問題点がある。一つは放射線脳壊死と腫瘍再増大との鑑別、2点目は再増大時の治療、3点目は照射野外再発時の治療である。脳壊死と再増大の鑑別にはFDG-PET、MR-spectroscopyが有用である。転移性脳腫瘍の平均余命は5-15ヶ月である。非治療部位から新病変が発見された場合には、転移巣が4個以下で、長期生存が望める場合には定位照射をそれぞれ追加することもあるが、その条件を満たさない場合には全脳照射が一般的であろう。図1　3個の転移性腫瘍への定位放射線治療の効果 (a)治療線量分布 (b) 治療前後の腫瘍の変化　定位放射線照射が、従来の放射線抵抗性癌(腎癌、悪性黒色腫、甲状腺癌)にも効果がある。体積減少率でみると、メラノーマ、腎細胞癌ではそれぞれ23%、27%、乳癌、非小細胞性肺癌、扁平上皮癌ではそれぞれ53%、60%、77%であり放射線抵抗性腫瘍では低い。しかしながら局所制御率でみるとメラノーマ、腎細胞癌いずれも90%、と報告され、必ずしも体積減少率と局所制御率は関連しておらず、逆に放射線感受性の高い腫瘍に比べ腫瘍制御率は高い傾向にある。図2　腎癌の転移性腫瘍治療後の腫瘍制御率（原論文2より引用。　Reproduced from Int. J. Clin. Oncol. 1997; 2:73-76, Figure 1(p.74), Kawashima K, Shirato H, Takamura A, Shinohara N, Sawamura Y, and Miyasaka K., Stereotactic irradiation using a linear accelerator for brain metastasis from renal cell carcinoma, Copyright(1997), with permission from Springer-Verlag GmbH & Co.KG. ）コメント　　　　：　全身状態の良くない患者への負担が少なく、外来的に治療できる優れた治療法である。原論文１ Data source 1： Stereotactic irradiation without 　　whole-brain irradiation for single brain metastasis. Shirato, H., Takamura, A., Tomita, M., Suzuki, K., Nishioka, T., Isu, T., Kato, T., Sawamura, Y., Miyamachi, K., Abe, H., Miyasaka, K., Department of Radiology, Hokkaido University School of Medicine, Japan Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys. 37:385-391, 1997 原論文２ Data source 2： Stereotactic irradiation using a linear accelerator for brain metastasis from renal cell carcinoma. Kawashima K, Shirato H, Takamura A, Shinohara N, Sawamura Y, and Miyasaka K. Department of Radiology, Hokkaido University School of Medicine, Japan Int J Clin Oncol 2: 73-76, 1997 参考資料１ Reference 1： Stereotactic radiosurgery for cerebral metastatic melanoma: factors affecting local disease control and survival. Mori Y, Kondziolka D, Flickinger JC, Kirkwood JM, Agarwala S, Lunsford LD. Department of Neurological Surgery, University of Pittsburgh Medical Center, Pennsylvania, USA. Int J Radiat Oncol Biol phys 42: 581-589, 1998. キーワード：放射線治療 radiotherapy, 定位放射線照射 stereotactic irradiation, 定位手術的放射線照射 stereotactic radiosurgery, 定位放射線治療 stereotactic radiotherapy, 直線加速器 linear accelerator, 癌 cancer, 転移 metastasis、全脳照射 whole brain irradiation 分類コード：030201, 030402, 030703,030103
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