三次元定位照射による早期肺癌の根治療法

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作成： 1999/11/01 植松　稔データ番号　　　：030142 三次元定位照射による早期肺癌の根治療法目的　　　　　　：早期肺癌の治療へのライナックを用いた3次元定位照射法を紹介する。放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：ライナック線量（率）　　　：50～60Gy/5～10分割/1～2週間利用施設名　　　：防衛医科大学校 FOCAL unit 照射条件　　　　：ＣＴスキャンで位置を確認した状態での照射応用分野　　　　：医学、治療概要　　　　　　：　ライナックを用いた3次元定位照射法が比較的小さな脳転移などに対する第一選択の治療法として世界中で行われるようになっているが、早期肺癌に対するCTガイド下の定位置的放射線治療について概説する。詳細説明　　　　：　ガンマナイフの登場によって3次元定位照射の有効性が広く認識され、現在ではライナックを用いた3次元定位照射が比較的小さな脳転移などに対する第一選択の治療法として世界中で行われるようになってきた。従来の放射線治療では２次元平面で位置合わせをして放射線を照射していたために、癌の部分とその周囲の正常組織とに照射される放射線の量が全く同じであった。そのため、治療で用いる放射線の量は癌を制御するために必要かつ十分な量ではなく、周囲の正常組織が耐えられる範囲内の少ない量に押さえ込まねばならなかった。これでは放射線治療を行っても治らない癌が多くて当然である。従来の放射線治療で良く治るとされてきた癌の代表的なものに舌癌と子宮頚癌がある。どちらも小線源治療という放射線を局所にだけ大量に照射できる方法を用いて治療されてきた癌である。つまり、正常組織に障害を与えずに癌の部分にだけ大量の放射線を照射できるのならば、癌は放射線治療で良く治るわけである。３次元照射の基本は癌の位置を驚くほど正確に把握して立体的多方向から癌を狙い撃ちすることである。結果として、癌には大量の照射を行いつつ周囲の正常組織の放射線量は安全な範囲内に抑えることが可能になる。図1　代表的な定位的照射方法 a：ガンマナイフ(201 cobalt beams) b：ライナック(multi non-coplanar arcs 法) c：ライナック(dynamic rotation法) d：陽子線など(ブラックピーク法) （原論文6より引用。　Reproduced from Int J Radiat Oncol Biol Phys 16:857-865,1989, Figure 1 (p.859), Ervin　B.　Podgorsak, G.Bruce　Pike, Andre Oliver, Marina Pla and Luis Souhami, Radiosurgery with high energy photon beam: a comparison among techniques; Copyright(1989), with permission from Elsevier Science.）　実際、脳転移を例にとると、従来の放射線治療ではその局所制御率は2-4割ほどとされていたが、３次元照射が可能になって8-9割と劇的に治療成績が改善された（４）。肺癌は脳転移の原疾患として最も頻度の高いものであるから、転移病巣が制御されるのと同様な照射が可能であれば、肺の原発巣の局所制御も同様に期待できるはずである。　肺癌に対する3次元定位照射の方法は大きく分けて二つある。ひとつは患者の体をフレ-ムで固定して位置を合わせる方法で、スウェ-デンの医師らによって開始された(1)。もうひとつは、放射線治療室内でライナックとCTスキャンをドッキングさせて、正確に位置合わせをした状態のまま放射線照射をする方法で、日本で開始された(2、3)。肺癌を治療する場合は、病巣の動きのために位置精度を定量的に評価することは困難であるが、多くの場合に誤差は5mm未満とされている。肺癌の3次元定位照射は手術不能例に行われることが多いが、手術を拒否した場合にも行われている。　従来の肺癌の放射線治療は一日2Gyで6週間で60Gyまでといったものが多かったが、3次元定位照射では一日に10Gy前後の大線量が安全に照射可能であり、1-2週で50-60Gyを照射してしまうことが可能とされている。これは従来の照射法ならば100Gy以上に相当する程の超大線量であり、人体から発生する悪性腫瘍であれば組織型にかかわらずほとんどが死滅してしまうと予想されるほどのものである。実際の局所制御率も90-95%以上と報告されており、これまでの放射線治療の常識をくつがえした治療法となることが期待される。　図2　3次元定位照射による肺癌治療の実例。上段が治療前、中段が治療後1年、下段が治療後2年3ヶ月。従来の放射線治療では考えられなかった程治療効果が高く、副作用が少ない。コメント　　　　：　歴史の浅い治療なので、まだ5年生存率がどのくらいになるのかは不明であるが、学会報告によると3年生存率は85%程で、従来の外科手術による成績と比べてなんら遜色はない。治療による副作用もきわめて軽度であり、将来の肺癌治療の中心的役割を担う方法になると期待されている。原論文１ Data source 1： Radiosurgery for tumors in the body: Clinical experience using a new method. Blomgren H, Lax I, Goeransson H, et al Dept. of Oncology, Radiumhemmet,Karolinskaya Hospital J Radiosurg 1998; 1: 63-74. 原論文２ Data source 2： Focal, high dose, and fractionated modified stereotactic radiation therapy for lung carcinoma patients: A preliminary experience. Uematsu M, Shioda A, Tahara K, et al Division of Radiation Oncology, National Defense Medical College Cancer 1998; 82:1062-1070. 原論文３ Data source 3：肺癌に対するCTガイド下の定位的放射線治療植松　稔防衛医科大学校放射線科癌の臨床 1999; 45:1134-1137. 原論文４ Data source 4： Stereotactic radiosurgery for the definitive, non-invasive treatment of brain metastases. Alexander E Ⅲ, Moriarty T M, Davis R B, etal J. Natl. Cancer nst., 87:34-40,1995 原論文５ Data source 5：定位的３次元集光照射(1) 植松稔防衛医科大学校臨床放射線 Vol.40 No.12 1995(金原出版) 原論文６ Data source 6： Radiosurgery with high energy photon beam: a comparison among techniques. Ervin　B.　Podgorsak, G.Bruce　Pike, Andre Oliver, Marina Pla and Luis Souhami Int J Radiat Oncol Biol Phys 16:857-865,1989 キーワード：肺癌 lung cancer、早期 early stage、放射線治療 radiotherapy、根治療法radical treatment、定位照射 stereotactic irradiation、三次元照射 3D irradiation、CTガイド下照射 CT-guided irradiation 、大量照射 high-dose irradiation 分類コード：030201、030402、030102
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