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作成: 2000/03/27 遠藤 啓吾

データ番号   :030124
放射線診断
目的      :放射線を利用した病気の診断について紹介する
放射線の種別  :エックス線
放射線源    :医用エックス線装置
利用施設名   :群馬大学医学部
応用分野    :医学、考古学、動物診断

概要      :
 電離放射線を利用した病気の診断で、X線診断装置、X線CT装置、病気の画像診断装置を使用した診断が主体である。電離放射線を使用しない超音波診断装置、MRI装置を用いた診断学を含めていうこともある。さらに放射線診断装置を利用した病気の治療IVRやコンピュータを用いたデジタル画像の保管、転送PACSについても概説する。

詳細説明    :
 レントゲンの発見したX線は医学では病気の診断から治療まで巾広く利用されている。「放射線なくして医学なし」と言われる程になった。X線を中心とした画像診断に対して、特に画期的で、近年進歩の目覚ましいのは、X線CTで、身体の横断断層を撮影する特殊なX線装置である。X線管を身体の注意を移動させて撮影し、検出器の透過X線量をデジタル化して、画像を再構成して断層像として見ることができる。X線CTによりこれまでの画像診断法が革命的に変わり、核医学、MRI、超音波装置検査などの様々な技術が開発されるもととなった。


図1 医用X線装置用途別分類




図2 X線CT装置(原論文2より引用)


 PACS(picture archiving and communication system, 医用画像保管通信システム)という、各種の画像診断機器によって得られる画像をデジタルで保管・通信・表示・読影できるシステムが普及しつつある。さらに画用画像データのデータ量が極めて多いため、大容量保管媒体、高速通信網、薄型多画面ディスプレイ、アプリケーションソフトなど今後さらに開発・技術革新を必要とするが、画質が劣化しない。過去画像との比較診断が容易、使用した画像をしまわなくてよいなど多くの利点がある。
 放射線診断装置を用いて治療を行うインターベンショナルラジオロジー(IVR)が発達してきた。主にX線透視下において、カテーテル操作による血管形成、抗癌剤注入、腫瘍組織の栄養血管塞栓を行う手技。一般のX線診断と異なり、手術室と同等の設備を備えた血管撮影室にて専用X線診断装置を用いて行われる。経カテーテル血管拡張術(PTA)、経皮経管冠動脈形成術(PTCA)、血管形成術、塞栓術など、患者にやさしい治療となっている。
 MRIは磁気共鳴現象を利用し強力な静磁場と傾斜磁場、高周波磁場により、画像を作成する装置である。RFコイルで受信し得られた水素の原子核(プロトン)の信号をコンピュータで2次元、または3次元フーリエ変換し画像を作成する。強力な磁場を得るために、超電導磁石が使用されるのが一般的である。最近は開放感のあるオープンタイプのMRIも登場している。
 MRIはX線CTと異なり、放射線を使用しないので被曝がなく、任意断面を撮影できる。また優れた様々なコントラスト(T1強調画像、T2強調画像、水素密度強調画像など)を撮影可能である。さらに、造影剤を使用せずに血流を画像化することもできる特徴を有する。
 MRIは強力な磁石なので、金属などの磁性体を撮影室に持ち込むことはできない。
高エネルギーのX線や電子線などの電離放射線を利用した悪性腫瘍の治療に関する分野を放射線治療と言い、別に述べる。

コメント    :
 コンピュータの技術進歩に伴って画像診断機器の発達は目覚ましい。今後ますます放射線診断装置とIVRの進歩により患者に優しい放射線診断、放射線治療の時代を迎えることだろう。

原論文1 Data source 1:
医用画像辞典.東芝メディカル株式会社


原論文2 Data source 2:
東芝X線CTパンフレット


キーワード:X線診断 X-ray diagnosis、X線CT X-ray CT、デジタル画像 digital imaging 、医用画像保管通信システム PACS(picture archiving and communication system)、インターベンショナルラジオロジー IVR(interventional radiology)、塞栓術 embolization、核磁気共鳴画像 MRI(magnetic resonance imaging)、放射線治療 radiotherapy
分類コード:030101, 030102, 030104, 030106

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