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作成: 1999/04/04 松平 正道

データ番号   :030123
ディジタルガンマカメラおよびSPECT装置の定期点検の必要性
目的      :ディジタルガンマカメラおよびSPECT装置の性能の定期点検
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :放射性同位元素Tc-99m
応用分野    :核医学技術

概要      :
 ディジタル型ガンマカメラおよびSPECT装置(以下、装置)は検出部作動および画像信号ディジタル化という性能変化の大きな処理過程を含むことから性能試験や日常の定期点検が必要不可欠である。装置の使用者は性能試験の必要性と試験方法を理解しておくべきである。性能評価法には装置メーカを主な対象とした測定規格および使用者用の測定指針に大別できる。日本アイソトープ協会による「ディジタルガンマカメラおよびSPECT装置の定期点検指針」は、装置使用者にとって定期点検を容易に実施できる有用な指針を与える。

詳細説明    :
 
 信頼性の高い核医学画像を得るためにはガンマカメラやSPECT装置の性能が常に良好な状態に保たれていることがが重要である。このためには検出器や装置の性能を定期的に点検調整することが必要である。装置使用者側からの性能試験および評価法に対する基本的な考え方として(a)性能試験を使用者が容易に行えること(b)性能試験に装置付属のデータ処理装置を利用できること(c)装置性能の定量評価とともに視覚的評価が可能であることが望ましい。「ディジタルガンマカメラおよびSPECT装置の定期点検指針」は以上のような要件に対応している。
 
 
(1) 定期点検の方法および期間
 
 装置の性能評価や試験方法には (a)前記の「ディジタルガンマカメラおよびSPECT装置の定期点検指針」(以下、アイソトープ協会法〔新〕)、(b)アンガー型シンチレーションカメラの性能試験条件:アイソトープ協会法、(c)IEC法、(d)NEMA法、(f)JESRA法などがある。しかしこれらの方法には現在のディジタル型ガンマカメラには適合困難な試験法が含まれているもの(b)もあり、また多くはメーカの装置性能基準を目的とした試験および評価方法(d)、(f)である。試験等には何れの方法を用いても良いが、定期点検は「同じ方法により同じ条件で行うこと」が肝要である。
 アイソトープ協会法〔新〕によれば、定期点検の期間は次のように定めてある。(a) 設置時およびオーバーホール時、(b) 毎日、(c) 1週間ごと、(d) 3か月ごと、(e) 6か月ごと、(f) 必要時
 
 
(2) 設置時の性能試験
 
 全ての性能項目について試験することが理想的である。試験すべき性能項目は次のようなものである。オーバーホール時の試験もこれに準じて行う。 固有空間分解能、総合(システム)空間分解能、全身ガンマカメラの総合分解能、SPECT空間分解能、固有視野均一性、総合視野均一性、SPECT画像均一性、画像直線性、総合感度、SPECT感度、検出器の方向に伴う均一性および感度の変動、計数率特性、エネルギー分解能、γ線エネルギーによる画像のずれ、画像データのgainおよびoffset、SPECT回転中心、全身ガンマカメラのスキャン速度。
 
 
(3) 毎日の点検調整
 
 (a) 始業点検、(b) エネルギーウインドウの調整、(c) バックグラウンドカウント、(d) 固有視野均一性ま たは総合視野均一性。
 
 
(4) 1週間ごとの点検調整
 
 (a) 画像データのgainおよびoffset、(b) SPECT回転中心、(c) SPECT画像均一性。
 
 
(5) 3か月ごとの点検調整
 
 (a) 固有画像直線性、(b) γ線エネルギーによる画像のずれ、(c) SPECT空間分解能。
 
 
(6) 6か月ごとの点検調整
 
 (a) 固有空間分解能、(b) 計数率特性、(c) エネルギー分解能、(d) 全身ガンマカメラの総合空間分解能、(e) 全身ガンマカメラのスキャン速度。
 
 
(7) 必要時の性能試験
 
 画像の異常や性能劣化が発生したとき、これに対応した試験を行い原因を究明する必要がある。
 
 
(8) 定期点検および性能試験結果は記録し装置の性能変化の把握および調整、修理のための資料とする。



図1 アンガー型シンチレーションカメラの構成概略



コメント    :
 ディジタルガンマカメラ(図1)の性能に大きく係わる構成因子の1つに検出部がある。検出器はγ線を検知するシンチレータ、シンチレータからの発光を受光する数十個の光電子増倍管、これらの光電子増倍管からの電気的出力信号の形成、出力信号によりγ線入射位置を計算する電子回路から構成されている。これらの中でシンチレータ着色等による経年変化や光電子増倍管出力の変動はガンマカメラの空間分解能、画像直線性、エネルギー分解能等に影響を与える。特に光電子増倍管出力の変動は日毎の性能変動に大きく係わってくる。
 
 位置信号に係わる光電子増倍管出力は本来アナログ信号であるが、現在のガンマカメラは光電子増倍管出力信号または位置信号計算回路の段階でAnalogue-Degital変換されディジタル信号として出力される。ガンマカメラの位置信号がディジタル化された背景には、画像データ処理やSPECTの必要性からコンピュータへの信号入力が不可欠な要素となったためである。ディジタル化された位置信号が画像を構成しSPECT等に利用されるとき、基となる光電子増倍管からの信号やディジタル画像のマトリクス上での位置的なoffsetとgainの安定性が重要な要素となる。
 画像データに係わるこれらの変動因子に対してはいくつかの自動補正システムが組み込まれているが自動補正の限界を超える変動が存在する。このほか機械的な精度に係わる性能劣化的な因子も加わり、医用画像装置のうちガンマカメラやこれを利用したSPECT装置は性能変化の最も大きな機器の一つである。したがって定期点検は是非とも必要である。 アイソトープ協会法〔新〕はユーザーの立場から性能試験をできるだけ容易に実施できるよう配慮されている。本指針に従って試験を行うことにより、ガンマカメラやSPECT装置の日常の性能検査および定期点検が十分達成できるものと考えられる。

原論文1 Data source 1:
ディジタルガンマカメラおよびSPECT装置の定期点検指針
日本アイソトープ協会医学・薬学部会核医学イメージング・検査技術専門委員会
RADIOISOTOPES 47,pp424-434,1998

キーワード:ディジタル型ガンマカメラ、シンチレーションカメラ、SPECT装置、性能試験法、定量評価、視覚評価、定期点検、性能評価記録、digital gamma camera、scintillation camera、single photon emission computed tomography、performance measurements、quantitative assesment、visual assessment 、routine inspection、reporting assessments
分類コード:030403

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