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作成: 1999/03/29 遠藤 啓吾

データ番号   :030121
インターベンショナルMRI
目的      :オープン型MRIによるIVR、インターベンショナルラジオロジーの紹介
放射線の種別  :エックス線
放射線源    :X線管
応用分野    :医学、診断、非破壊検査

概要      :
 MRIは放射線による被ばくがないため、患者にも術者にも安全に用いることができる。オープン型MRIを用いると、MR画像をリアルタイムで見ながら患者の治療を行える。オープン型MRIの臨床応用として脳外科の手術、腫瘍の経皮的生検やドレナージなど様々な応用がひろがりつつある。X線CTでも同じ研究が行われている。

詳細説明    :
 オープン型MRIはマグネットを上下に分離配置することで側面を解放した形状を特徴としている(図1)。小児、閉所恐怖症を持つ患者には検査が困難だったが、オープン型MRIは解放された形状であるためMRI検査を容易に行うことができるようになった。さらに、X線による被ばくが少ないため、MR透視下での治療に応用されるようになり、注目をあつめている。技術の発達でオープン型MRI本体の形状、MRI対応穿刺針、周辺機器、そしてMR画像をリアルタイムで描出することが可能になった。スキャン時間と画像再構成、画像表示を連続的に行うことで、リアルタイムに近い画像を描出する撮影法を採用している。脳腫瘍、腹部領域の腫瘍等の生検には有用性が高い。さらに運動野、言語中枢あるいは脳幹に近い、通常容易に近づけない場所の腫瘍に対する生検に役立つ。MRI画像は脳の構造を正確に描出でき、腫瘍と実質の境が明瞭で、脳腫瘍の生検が可能な腫瘍のサイズは、数mm程度と、病変を捉える正確性は非常に高い(図2)。
 椎間板ヘルニアは、保存的治療、外科的治療いずれも入院期間が長く、患者の社会的活動を中断せざるを得ず、1〜2週間の入院が必要である。MRIは腰椎椎間板実質の変性、ヘルニア脱出の状態、蒸散範囲等病態の把握が正確に行える。そこでMRIガイド下での経皮的椎間板ヘルニア蒸散法が開発された(図3)。これはヘルニアを減圧し、縮小させ治癒させる低浸襲治療法で、保存的治療の期間が長く、この間の患者の苦痛を解除する。1、2日で退院可能で、約90%の確立で下肢疼痛、腰痛、下肢運動麻痺が改善し、早期の社会復帰をはかることができた。安全で合併症が少ない治療法は患者のQOLだけでなく、社会の経済効果から言ってもメリットは大きい。


図1 オープン型MRI装置。日立メディコ社製。0.3Tの永久磁石を採用しており装置の維持費は安価。IVRのみならず画像診断にも使える。(原論文1より引用)



図2 脳腫瘍野MRIガイド下での生検(バイオプシー)。MRIで脳腫瘍を見ながら生検針(矢印)を進めてゆくので、確実かつ安全に行うことができる。(原論文1より引用)



図3 椎間板ヘルニアのインターベンショナルMR。MRIガイド下でレーザーを使ってヘルニアを蒸散させる。MRIで病変部位を見ながら針(矢印)を進めてゆくので、安全かつ効果よく治療される。(原論文1より引用)



コメント    :
 X線CTを使っても同じように腫瘍の生検などが行われている。ただCTでは術者、患者への放射線被ばくは避けられない。MRIを使うと放射線被ばくはない利点はあるが、金属でできた用具の使用が制限されるため、チタンでできた器具など特殊は手術用品も必要となり高価になる。今後、X線CTを使うか、あるいはオープン型MRIを利用するか、なお議論のあるところである。

原論文1 Data source 1:
オープンMRIの有用性 
先端医療 5(1):1-4, 1998.

キーワード:MRI、IVR、インターベンショナルラジオロジー、脳腫瘍、生検、X線CT、椎間板ヘルニア、手術
分類コード:030106, 030101

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