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作成: 1999/03/20 渡辺 祐平

データ番号   :030116
我が国の医療機関における密封RIの利用状況
目的      :我が国における主な密封RI使用事業所、供給量、主な用途の紹介

放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :放射性同位元素
応用分野    :医学、診断、治療、検査

概要      :
 我が国の医療機関で密封アイソトープの使用許可を取っているのは1997年度現在507ヶ所、そのアイソトープ核種は、60Co、137Cs、226Ra、192Ir、198Au、90Sr、125I等であり、60Co、137Cs、192Irの使用が多く、放射線治療装置に用いられている。放射線治療装置以外では、骨塩定量分析装置、ガスクロマトグラフ、血液製剤照射装置に使用されている。放射線治療の対象となる疾患は、大部分が腫瘍である。

詳細説明    :
 我が国の医療機関において、密封アイソトープは密封小線源治療用として利用されている。高線量率の場合には、遠隔操作照射装置が利用される。治療用以外にも血液製剤照射用や骨塩定量分析装置用ガスクロマトグラフ用として利用されている。密封アイソトープ以外に非密封アイソトープが放射線源として使用され、さらに放射線発生装置により人工的・電気的に発生させた電子線、陽子線、その他のイオンビームなどの放射線も利用されている。
 
1.放射線使用事業所数について
 ここでは密封アイソトープ(RI)の使用に限定して、その使用許可・届出をしている事業所数を図1に示す。主として治療用に密封RIのみを使用している場合,密封RIと共に非密封RIまたは放射線発生機の使用している場合、さらに3者を共に使用している場合がありこれらを区別して示した。


図1 密封ラジオアイソトープの使用許可・届出事業所数の経時的変化 a)密封線源単独使用(密のみ)、および非密封線源・放射線発生装置との併用(密・非、密・発、密・非・発) b)密封線源遠隔照射治療装置単独使用(遠のみ)、および非密封線源・放射線発生機との併用(遠・小、遠・非、遠・小・非)(原論文1より作図)

a)は、密封、非密封、発生機を調査対象としたものであり、b)は、密封RIを針状加工または細管封入して使用する場合と遠隔操作で使用する場合とに分けて集計した結果である。a)より密封のみ使用の事業所数が減少しているが、密封と発生機の併用機関が若干ながら年々(1998年度まで)増加していることがわかる。これは密封の代わりに発生機を使用するようになったことが考えられる。b)より遠隔操作で使用する機器(遠のみ)を保有する事業所数が非常に多く、その数も年々増加しているが、小線源と併用するところは減少している。これは照射治療を遠隔操作法に移行したためと考えられる。医療機関において、骨塩定量分析装置やガスクロマトグラフにも密封RIが使用されていることから、図2に、これらの装置の使用許可・届出台数の経時的変化を示す。


図2 密封ラジオアイソトープ使用骨塩定量分析装置及びガスクロマトグラフ台数の経時的変化(原論文1より作図)

 いづれの装置の台数も減少傾向にある。とくに骨塩定量分析装置の減少が大きいのは、密封RIの代わりにX線定量装置の普及によるものと考えられる。
 
2.主な密封RIの使用について
 密封RIの使用は、密封の使用許可・事業所数から見ると、60Coの使用事業所が過半数を占め、次に226Ra、192Ir、137Csの使用事業所がほぼ同数で並び198Au、90Sr、125I の使用事業所が続く。次に、60Co、137Csが用いられている遠隔照射治療本装置の使用許可台数の経時的変化を図3に示す。


図3 60Coおよび137Cs使用装置台数の経時的変化(原論文1より作図)

 60Co使用装置の台数が急激に低下し、137Cs使用装置の台数がやや増加している。最近輸血後に起こる副作用を無くするために、輸血用血液製剤を照射するようになってきた、この照射装置に137Csが使用されている。図3の結果はこれを示すと思われる。
 遠隔照射治療用に装備された60Co,137Csの放射能強度は、74〜185×1012Bqが大部分である。
 
3.密封RIの用途
 密封小線源治療では、高線量率遠隔操作方式で体内の病患部に挿入する、最近では192Irが使用されるようになり、肺癌、肺門部癌、食道癌、子宮頸癌等の治療が行われている。比較的小さな舌癌や中咽頭癌、口腔底癌等の初期例では、低線量率197Auグレインの刺入が行われている。

コメント    :
密封線源による乳癌の温存療法が話題となってるが、放射線療法と他の手段を併用して患者の満足できる治療が試みられている。また、手術が不能な場所に局在する腫瘍の治療には密封小線源は不可欠である。

原論文1 Data source 1:
2.1 医療機関、3.2おもな密封アイソトープの供給量
監修 科学技術庁原子力安全局
放射線利用統計1998, 日本アイソトープ協会発行1998.10.

キーワード:
分類コード:030301,030501,030704

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