放射線利用技術データベースのメインページへ

作成: 1999/03/20 渡辺 祐平

データ番号   :030113
我が国の医療機関における非密封RIの利用状況
目的      :我が国における主な非密封RI使用事業所、供給量、主な用途の紹介

放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :放射性同位元素
応用分野    :医学、診断、治療、検査

概要      :
 我が国の医療機関で密封アイソトープの使用許可を取っているのは1997年度現在87ヶ所、そのアイソトープ核種は、99mTc,99Mo-99mTc(generator),201Tl,123I,67Ga,133Xe,131I,81Rb-81mKr(generator),111Inであり、使用量は99mTcが最も多い。99mTcの使用量を放射能単位で示すとgenerator分を合わせて、約400×1012Bqで、これらの医薬品は、診断・検査に使用され治療用はこの集計では非常に少ない。

詳細説明    :
 我が国の医療機関において、非密封アイソトープは核医学診断(in vivo)、RI治療、体外核医学検査(in vitro)で有効に利用されている。放射線源の医療機関での使用は、非密封アイソトープ以外に密封系の線源があり、さらに放射線発生装置により人工的・電気的に発生させた電子線、陽子線、その他イオンビームなどがある。
 
1.放射線使用事業所数について
 ここでは非密封アイソトープ(RI)の使用に限定して、その使用許可・届出をしている事業所数を図1に示す。診断・治療用に非密封RI(US)のみを使用している場合、USと共に密封RIまたは放射線発生機を使用している場合、さらに3者を共に使用している場合があり、これらを区別して示した。


図1 非密封ラジオアイソトープの使用許可・届出事業所数の経時的変化 a)非密封線源単独使用(非のみ)、および密封線源・放射線発生装置との併用(非・密、非・発、非・密・発) b)非密封線源単独使用(非のみ)、および密封小線源単独・遠隔照射治療装置使用との併用(非・小、非・遠、非・小・遠)(原論文1より作図)

a)は、非密封、密封、発生装置を調査対象としたものであり、b)は、密封RIを針状加工または細管封入して使用する場合と遠隔操作で使用する場合とに分けて集計した結果である。両者の集計において、3者併用の事業所数が圧倒的に多く、かつ若干ながら年々(1998年3月まで)増加している。これは放射線源の使い分けが順調に進んでいることを示している。なお、医療機関は、病院と診療所に分類できるが、放射線使用診療所数は非常に少なく大部分が国公立の病院で上記放射線源が使用されている。
 
2.主な非密封RIの使用量について
 RIの使用量については、具体的に調査・計量することが困難であることから、供給量の面から検討する。なお、この供給量は放射能強度単位(Bq)でされている。治療・診断用に用いられているRIは主として体内用(in vivo)であり、供給量の多いものから列挙すると、99mTc,99Mo-99mTc(generator),201Tl,123I,67Ga,133Xe,131I,81Rb-81mKr(generator),111Inとなる。ここで上位6種の供給量の経時的変化を図2に示す。


図2 非密封ラジオアイソトープの供給量の経時的変化 a)99mTc(S)および99Mo-99mTc(G) b)201Tl、123I、67Ga、133Xe(原論文1より作図)

 a)は、他のRIより供給量が1桁高い99mTcの単体およびgenerator系の経時的変化であり、b)は、上述のRI4種の経時的変化である。99mTc(S)の供給量は、ここ数年急激な増加を示していることが目立つ。一方、99Mo-99mTc(G)は、毎年、ほぼ一定量が供給されている。
 b)で示す各種RIの供給量については、201Tl,123Iが年々増加しているが、1997年はその増加が止まっている。67Gaの供給量はほぼ一定で推移しているが、133Xeの供給量はここ数年大きく低下していることが目立つ。これは133Xeの代わりに病院内で製造された18Oおよびその合成医薬品が利用されていることによる。これら院内合成医薬品の供給量については、現在のところ把握できるシステムにはなっていない。
 
3.非密封RIの用途
 非密封RIの大部分は、体内に投与あるいは静脈注射されて各種疾患の診断に用いられている。
 99mTc:脳腫瘍等の疾患の診断、腎・骨・心筋・血流等のシンチグラフィによる診断
 201Tl :心筋・腫瘍・副甲状腺等のシンチグラフィによる診断
 123I :脳血流・腎・脂肪酸代謝等のシンチグラフィによる診断
 67Ga :悪性腫瘍・炎症性病変等の診断
 133Xe:肺局所機能・脳局所血流検査
 131I :腎・尿路疾患の診断、副腎疾患部位の局在診断、甲状腺癌・機能亢進症治療
 81Rb-81mKr(generator):局所肺換気・血流・脳血流等の検査
 111In :造血骨髄・脳脊髄液腔病変等の診断
 
4.体外核医学検査(in vitro)
 患者の血清などを用い、試験管内で放射性医薬品と反応させて、各種ホルモン、活性物質量の測定を行う。これはin vitro radioassayと呼ばれている。非密封RIとして、主に125I,131Iが用いられているが、その使用量(供給量)は、ここ数年約0.2×1012Bqであり、上述のin vivo 使用に比べて非常に少ない。

コメント    :
非密封RIは、患者に投与されるとそれぞれ集まる臓器や組織が異なるので、検査目的に応じて異なる種類の薬剤を使用する。ここで使用するほとんどのRIは、短時間で放射能を減衰するものであり、1回の検査で受ける放射線被ばく線量は自然放射線で被ばくする線量より少ない。患者に投与する非密封RIは、極微量で人体への作用も無く、副作用の心配はない。その品質管理も十分でありこの面からの副作用も認められない。

原論文1 Data source 1:
2.1 医療機関、3.1 おもな非密封アイソトープの供給量
監修 科学技術庁原子力安全局
放射線利用統計1998, 日本アイソトープ協会発行1998.10.

キーワード:
分類コード:030301,030501,030704

放射線利用技術データベースのメインページへ