超音波画像三次元表示の有用性

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作成： 1998/12/24 山本　和高データ番号　　　：030100 超音波画像三次元表示の有用性目的　　　　　　：超音波画像を三次元表示する有用性の紹介放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：Ｘ線管応用分野　　　　：医学、診断、非破壊検査概要　　　　　　：　コンピュータ断層撮影法(CT)や磁気共鳴画像診断法(MRI)と同様に超音波検査においても三次元表示が利用されるようになり、より視覚的に理解しやすくなった。超音波検査では、他の検査法では困難な心臓の動きや血流情報なども三次元表示することができる。また、直接構築法(Vol-mode法)では、ほとんどリアルタイムに超音波画像を三次元表示することができ、胎児の形態の観察などに利用されるほど三次元表示可能な超音波検査装置が普及してきた。詳細説明　　　　：　超音波検査では様々な角度から断層像を観察することができるが、病変部位の解剖や位置関係を立体的なイメージとして頭の中で構築することは必ずしも容易ではない。そこで、コンピュータ断層撮影法(CT)や磁気共鳴画像診断法(MRI)と同様に超音波検査においても三次元表示が利用され始めた。超音波検査では、三次元画像を構築するのに必要な連続的な多数の2次元画像の収集法として 1) 探触子を平行に移動させるparallel scanning 2) 探触子の位置は固定したままで、ビーム方向をふっていくfan-like scanning 3) 探触子の位置は固定したままで、探触子を回転させるrotational scanning 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　などの方法が考えられる。　多断面の描出を、連続的に、かつ各断面間での位置がずれないように収集することは、良好な3次元画像を描出するために最も重要な過程である。超音波検査では、CTやMRIよりも各断面を安定して描出することは容易ではない。　最近、開発された空間における探触子の位置と方向(角度)を検出できる磁気センサを探触子に取り付けることにより、断層面の位置と方向のデータを記録することもできるようになった。収集した複数の断層像データをコンピュータに転送して三次元化処理を行い、表示する割面や視点、光源の位置などを任意に設定し、各面の明るさを決定し、陰影をつける(shading)ことにより三次元的表示が行われる。　心エコーでは、各時相毎に三次元画像を作成しシネループ表示することにより、動画として表示することも可能である。図1に、心房中隔欠損症患者の単純Ｘ線写真および経食道心エコー探触子を用いて得られた心房中隔欠損症例の三次元画像を示す。また、よりわかりやすくするために心房中隔部の模式図を示す。図1　心房中隔欠損症の診断図　　a)単純Ｘ線写真(原論文１より引用)　b)右房側より心房中隔を観察した超音波三次元画像　c)その模式図(以上２点原論文２より引用)　ASD：心房中隔欠損部、SVC：上大静脈、RA：右房、TVO：三尖弁口、IVC：下大静脈　a)の単純Ｘ線写真では、左第２弓の突出(①→)、肺門陰影の増強(②→)が見られ、主肺動脈、右下肺動脈の拡張がうかがわれる。肺野の陰影は増強し肺血流の増大が示唆される。b)は食道内に超音波探触子を挿入してrotational scanning法により連続的に得たマルチプレーン経食道心エコー像を収集し、心エコー装置に接続した三次元画像構築用コンピュータを用いて作成した、右房側より心房中隔を観察した三次元画像で、c)はその模式図である。心房中隔の欠損部(ASD→)の形状、大きさ、位置などが容易に理解できる。　このように表示すると、患者やその家族に対する超音波検査の結果の説明が容易になるとともに理解を得やすい。さらに医学教育にも十分利用できると考えられる。一旦、三次元画像を再構成すれば、全く自由に任意の方向からの画像を表示することができるので、病変部をいろいろな方向、例えば外科医が手術中に観察するのと同じ位置から観察することもでき、術前のシュミレーションとしても利用できる。　また、左室容積など臓器体積の計測も簡単に、正確に行うことができる。さらに、動画を観察することにより、局所壁運動や弁運動の異常なども明確に診断できる。超音波カラードップラー法を用いてデータ収集を行えば、血流の情報も三次元表示することができ、例えば、僧帽弁逆流血流シグナルの大きさ、広がり、範囲などを容易に把握することも可能であり、IVR治療における脈管の解剖、血流の有無や程度の評価にも有用である。　従来の超音波検査では描出された断層像が以前の検査と必ずしも同じ断層像が得られているとは限らなかったが、三次元超音波検査では、病変全体の情報を表示できるので、この欠点を補うことができ、病変部の経時的な変化を正確に比較検討できる。　次に、産科での利用例を図２に示す。図2　Vol-mode法で構築した胎児の顔と手の三次元画像　a)22週胎児　b)30週胎児（原論文3より引用）　図2は、直接構築法(Vol-mode法)と呼ばれる方法で表示した胎児の表面画像である。コンベックス型探触子を用いて、機械的にfan-like scanningを行い、三次元画像表示における視点を超音波ビームの曲率中心と一致させることにより、エコーが受信されると同時に三次元処理が行える。従って、超音波検査装置内でほとんどリアルタイムで三次元表示を行うことができる。異なる方向からの三次元表示はできないが、手間と時間をかけずに簡単に三次元画像構築が行え、超音波検査の特徴を生かすことができる。このように簡単に三次元表示が可能な超音波診断装置は、今後、大幅に普及することが期待される。コメント　　　　：　超音波検査では、CTやMRIよりも手軽で高速に三次元画像を得ることができ、特に、胎児の観察や血流情報など、他の画像検査法では得ることができない情報も三次元表示することができる。ただし、良好な三次元画像を再構築するための多数の断層像を安定して記録することは容易ではないことも少なくなく、また、三次元画像として表示するために、超音波検査の特徴である組織の質的情報などが低下するといった問題点も無視できない。　超音波画像の三次元表示技術は、まだ応用が開始されたばかりであるが、コンピュータグラフィックの進歩により、急速に発展しており、さらに立体感のある画像表示システムが普及していくものと思われる。原論文１ Data source 1： 3．循環器疾患安田　寿一北海道大学名誉教授「必修」内科学アトラス　改訂第４版　p.73-175,1995 南江堂原論文２ Data source 2： 3次元心エコー図法の臨床応用神崎　裕美子、穂積　健之、吉田　清神戸中央市民病院循環器センター内科映像情報MEDICAL 1998;30:1237-1240 原論文３ Data source 3： VOLUSON 530D 映像例メディソン・ジャパン販促パンフレット(インターネット画像) 参考資料１ Reference 1：超音波診断update　三次元表示の原理望月　剛アロカ株式会社研究所臨床放射線　43(11): 1281-1288, 1998 参考資料２ Reference 2：超音波診断update　三次元表示の臨床応用中田　典生、宮本　幸夫、山下　三代子、最上　拓児、他東京慈恵医科大学放射線医学教室臨床放射線　43(11): 1289-1293, 1998 キーワード：超音波検査、ultrasography、三次元表示、three dimensional display、経食道心エコー探触子、echocardiography probe、コンベックス型探触子、convex type probe、直接構築法、Vol-mode method、心房中隔欠損症、atrial septal defect、胎児、fetus、分類コード：030107,030401,030103
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