心筋症に対するI-123-MIBGの臨床応用

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作成： 1999/03/05 八幡　得久データ番号　　　：030099 心筋症に対するI-123-MIBGの臨床応用目的　　　　　　：MIBG検査の心筋症βブロッカー療法への応用の紹介放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：¹²³I 応用分野　　　　：医学、診断、非破壊検査概要　　　　　　：　心筋症におけるβブロッカー療法の治療効果判定に対するMIBGの定量指標は左室拍率LVEFと関連し、より早期に治療効果を捉えることができ、さらにβブロッカー療法の適応においても、事前の¹²³I-MIBG検査によって効果予測が判定できる。洗い出し率(WR)による評価法および左室取込み(H/M比)による評価法が有効である。詳細説明　　　　：　メタヨードベンジルグアニジン(MIBG)は、交感神経終末にノルエピネフリン(NE)と質的に同等の取込み、貯蔵、放出を示し、¹²³I-MIBG心筋イメージングにより、心臓交感神経の分布および機能の評価が可能になっている。心筋イメージングには、通常単光子放出型断層撮影装置(SPECT)が用いられる。拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy-DCM)においては、¹²³I-MIBGの心筋集積の不均一性、集積低下、洗い出し(washout rate-WR)の亢進、また左室駆出率(left ventricular ejection fraction-LVEF)と心筋取込み指標(heart-mediastinum activity ratio-H/M比)との正の相関、WRとの負の相関などが報告されている。臨床的には、DCMの重症度評価や予後予測に有用であるとの報告もある。心筋症治療との関連として、βブロッカー療法とMIBGについて検討が進んでいる。　　 1.洗い出し率(WR)による評価　　対象を心不全の悪化によりβブロッカー療法が継続できなかった症例と継続できた症例とで比較した。継続困難な症例では治療開始前のH/M比の低下とWRの亢進が認められた。これは、本療法適応の決定においてMIBG像に重要な情報が含まれる可能性を示唆している。また継続可能例のうち、治療後3ヶ月の経過で心機能が改善(LVEF≧5%)した症例(groupⅠ)および改善しなかった(LVEF＜5%)症例(group II)について、治療経過による局所WRの変化を図１に示す。図1　Regional washout rate in four segment in patients of groupⅠ(改善群) and groupⅡ(非改善群).ANT:anterior segment;LAT:lateral segment;SEP:septal segment;INF:inferior segment. （原論文1より引用。　Reproduced from Eur J Nucl Med 1997;24:523-529, Figure 2 (p.525), Shuji Fukuoka, Kohei Hayashida, Yoshiaki Hirose, Yoriko Shimotsu, Yoshio Ishida, Hiroyuki Kakuchi, Tanenao Eto, Use of iodine-123 metaiodobenzylguanidine myocardial imaging to predict the effectiveness of β-blocker therapy in patients with dilated cardiomyopathy; Copyright(1997), with permission from Springer-Verlag and authors.）　Group Iでは、局所WRが下壁(INF)以外では1ヶ月後に改善、3ヶ月後に正常化し、下壁WRは3ヶ月後に改善した。治療1ヶ月後の局所WRが、LVEFの機能的改善の予測に使える可能性がある。　SPECTを用いた¹²³I-MIBG心筋イメージングの評価結果について次に示す。治療経過とLVEF、WRとの関係を図２に示す。図2　心機能改善群におけるLVEFならびにwashout rateの経時的変化（原論文2より引用）　DCM17例をβブロッカー(メトプロロール)療法6ヶ月後までにLVEF≧10%改善した群について示したものであり、時間経過とともにMIBG-WR(SPECT極座標表示より算出したWR)が低下し、心機能が有意に改善したことがわかる。なお、非改善群ではLVEF、WRともに不変であった。結語として、初期像で取込みの良好なDCMではβブロッカー薬による治療効果が期待され、WRは治療効果を評価する上で有用である。　　 2.左室取込み(H/M比)による評価　　特発性DCMの45例にビソプロロールを投与し、8ヶ月後の判定で有効(NYHAの1以上改善かつ左室内径の20%以上短縮)と認められたのは30例あり、投与中止または死亡など無効は15例であった。両群のLVEDD(cm)、LVFS(%)、Tl uptake scoreに有意差を認めなかった。ビソプロロール投与前の¹²³I-MIBG心筋イメージングから、H/M比の評価を図３に示す。図3　H/M activity ratios on initial and delayed images of I-123 MIBG myocardial scintigraphy before β-blocker therapy in patients with dilated cardiomyopathy.INITIAL:30min after injection of iodine-123-MIBG;DELAYED:4hr after injection. （原論文3より引用）　後期像H/M≧1.7を基準として、治療効果の予測に対する診断能を求めたところ、sensitivity 91%、specificity 92%、accuracy 91%、positive predictive value 97%、negative predictive value 80%となった。すなわち、MIBG後期像のH/M比を用いてβブロッカー療法が有効となるDCMを事前に予知することが可能である。　　以上のように、βブロッカー療法の治療効果判定に対するMIBG心筋イメージングの意義、さらには治療法の適応に際したMIBG指標の有用性について示した。コメント　　　　：　MIBGは、交感神経終末プレシナプス側の機能を画像化するものであるが、βブロッカー療法の治療適応・効果をMIBGの定量指標を用いて、より早期に判定できるならば、その意味は大きいと考えられる。本邦の成績は海外に先駆けたものであり、今後も継続的な検討が期待される。原論文１ Data source 1： Use of iodine-123 metaiodobenzylguanidine myocardial imaging to predict the effectiveness of β-blocker therapy in patients with dilated cardiomyopathy. Shuji Fukuoka, Kohei Hayashida, Yoshiaki Hirose, Yoriko Shimotsu, Yoshio Ishida, Hiroyuki Kakuchi, Tanenao Eto National Cardiovascular Center (国立循環器病センター) Eur J Nucl Med 1997;24:523-529 原論文２ Data source 2：拡張型心筋症におけるβブロッカー療法の治療効果 ¹²³I metaiodobenzylguanidine(MIBG)心筋SPECTの臨床的意義. 山崎　純一、藤本　進一郎、戸金　裕子、菅波　千絵、宗像　健彦、岡野　善史、高田　美貴、細井　宏益、森下健東邦大学医学部第一内科呼吸と循環 ;45(10):1015-1021,1997 原論文３ Data source 3： Iodine-123 metaiodobenzylguanidine myocardial scintigraphy for prediction of response to β-blocker therapy in patients with dilated cardiomyopathy. Michihiro Suwa, Yoshiaki Otake, Ayaka Moriguchi, Takahide Ito, Yuzo Hirota, Keishiro Kawamura, Itaru Adachi, Isamu Narabayashi Osaka Medical College (大阪医科大学) Am Heart J 1997;133(3):353-358 参考資料１ Reference 1： Prognostic implications of I-123 metaiodobenzylguanidine(MIBG) in patients with idiopathic dilated cardiomyopathy(DCM) and receiving β-blockade treatment. Kakuchi H, Sasaki T, Ishida Y, Shuuji Fukuoka, Kunio Miyatake National Cardiovascular Center (国立循環器病センター放射線診療部) JACC 1996;27 suppl A:27A キーワード：I-123メタヨードベンジルグアニジン,I-123-MIBG,単光子放出型断層撮影装置,single photon emission computed tomography-SPECT,心筋症,cardiomyopathy,βブロッカー,βblocker,左室駆出率,left ventricular ejection fraction,洗い出し率,washout rate-WR,心筋取込み,heart-mediastinum activity ratio-H/M,H/M比,H/M ratio 分類コード：030301,030502,
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