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作成: 1999/01/19 西川 慶一

データ番号   :030098
歯科デジタル口内法X線画像診断システム
目的      :歯科デジタル口内法X線画像診断システムの紹介
放射線の種別  :エックス線
放射線源    :X線管
応用分野    :医学、歯学、診断

概要      :
 歯科において最も活用頻度の高いX線撮影法は口内法である。これをデジタル化したデジタル口内法X線画像診断システムは、使用するX線センサーによってCCD(Charge-Coupled Device)方式とIP(Imaging Plate)方式に大別される。両者には、それぞれ一長一短がみられる。CCD方式では撮影と同時に画像を見ることが出来るが、センサーが厚い、ケーブルが附属するという欠点があり、IP方式では撮影後スキャンが必要となる。

詳細説明    :
 歯科において最も活用頻度の高いX線撮影法は、X線フィルムを口腔内に設定して撮影を行う口内法である。口内法では、歯根膜空隙、骨梁といった微細な構造物の変化や隣接面齲蝕などの小さな病変が診断対象となり、鮮鋭度の高い画像が要求される。このため、増感紙を使用せず、X線自体に対して高感度なノンスクリーンタイプのフィルムを用いる。このことから、口内法をデジタル化するにあたっては、口腔内に挿入できる小さなX線センサーが必要であるとともに、微細構造を描出できるだけの分解能が要求されることになる。
 デジタル口内法X線画像診断システムでは、コンピュータとして汎用のDOS/Vパソコンが用いられる。このため、比較的安価にシステムが構築されている。また、画像を取り扱うソフトウェアはMicrosoft社の基本ソフトWindows95、Windows98、WindowsNT V4.0の上で動作し、GUI(Graphic User Interface)環境下で操作することになる。得られた画像の観察は、パソコン用のCRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイやTFT液晶ディスプレイ上で行う。パソコン用の各種グラフィックプリンタで画像出力することも可能であるが,それは診断目的ではなく、記録のためである。画像データの保管には、ハードディスクだけでなく、MOやDVD-RAMなどパソコン用の外部記憶装置であればなんでも利用できる。
 口内法ディジタルX線画像診断システムは、その口腔内X線センサーによってCCD (Charge-Coupled Device、電荷結合素子)方式とIP (Imaging Plate)方式に大別される。表1に現在国内で市販されているシステムの一覧を示す。

表1 ディジタル口内法X線画像診断システムにおけるセンサーの種類と発売元
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センサー  システム名                                  販売会社
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CCD   RVG(RadioVisioGraphy)-4/RVG-X/CompuRay  トロフィージャパン/サイブロンデンタル/ヨシダ
CCD   Sens-A-Ray                              タカラベルモント
CCD   CDR(Computed Radiography)               デンタル オーソペディック インスティチュート
CCD   Dixel                                   モリタ
CCD   Pana Digital                            パナヘラウス デンタル
IP    Digora                                  モリタ
IP    DenOptix                                デンツプライ ジャパン
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 CCD方式は5機種、IP方式は2機種が購入可能である。どのシステムを使用しても、患者の被曝低減が可能、画像処理が可能、画像データ保管のためのスペース削減が可能、画像データの検索が容易、暗室が不要といった利点が得られる。これらはいずれもデジタルシステムであることに起因するものである。
 
1.CCD方式のデジタル口内法X線画像診断システム
 CCD方式では、X線センサーとしてCCDセンサーが利用される。CCDセンサーは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、イメージスキャナ、コピー機などの身近な光学機器の光センサーとして活用されているものである。ただ、CCDセンサー自体はX線に対して感度が低いので、X線情報は蛍光体により一旦可視光の情報に変換され、それがCCDセンサーへと導かれる。そして、CCDセンサーによって光信号が電気信号に変換され、適当に増幅された後、A/D(Analogue-to-Digital)変換器によりデジタル情報へと変換されてパソコンに取りこまれる。図1(a)、(b)、(c)にCCD方式のデジタル口内法X線画像診断システムDixelの全景、その口腔内X線センサー、センサーの内部構造を示す。


図1 CCD方式のデジタル口内法X線画像診断システムDixel (a)全景、ただし、X線センサー部を除く(原論文1より引用) (b)口腔内X線センサーとインターフェースボード (c)センサーの内部構造(原論文2より引用)

口腔内X線センサーは、ケーブルを介して専用のインターフェースボードにつながっている。このボードをパソコンの拡張スロットに挿入し、専用のソフトウェアをインストールすればセットアップは完了である。
 CCD方式の最大の利点は、X線センサーとパソコンがケーブルで直結しているため、撮影終了後すぐさま画像がディスプレイに表示されることである。逆に、このケーブルの存在により、そしてセンサーが厚いことから、従来のフィルムに比べて口腔内での取り扱いが困難になる点が欠点となる。また、センサーが小さく、一回の撮影で得られる画像情報が少ないのも欠点である。
 
2.IP方式のデジタル口内法X線画像診断システム
 IP方式は、医科用の富士CR(Computed Radiography)システムと同様に、X線センサーとしてIPを利用する。IPは、ポリエステルの支持板に輝尽性蛍光体という物質を塗布したもので、暗所では吸収したX線のエネルギーを保持することができる。そして、撮影済のIPにレーザー光を照射すると、吸収したX線エネルギーに比例した量の蛍光を発する。すなわち、X線撮影によりX線画像情報が記憶されたIPをレーザー光で2次元的にスキャンし、それぞれの位置で発せられた蛍光を光電子増倍管で電気信号に変え、それをデジタル化することで画像データが得られる。図2(a)、(b)、(c)にIP方式のデジタル口内法X線画像診断システムDigoraの全景、Digora用のIP、IPより画像情報を得るための原理図を示す。


図2 IP方式のデジタル口内法X線画像診断システムDigora (a)全景、ただし、イメージングプレート部を除く(原論文1より引用) (b)各種IP (c)IPより画像情報を得るための原理図(以上2点原論文3より引用)

 IPのスキャンにより画像情報を読みとることは、専用のIPスキャナで行われる。このスキャナがパソコンの拡張スロットに挿入するインターフェースボードにつながっている。
 IP方式の利点は、IPの厚さ、大きさが従来のフィルムとほぼ同じであるため、口腔内での操作性が良いことである。欠点は、IPのスキャンが必要であることから、撮影後画像を得るまでに時間がかかることである。Digoraの場合、30秒近く要する。
 デジタル口内法X線画像診断システムで得られる画像のピクセルの大きさは、CCD方式で40×40μm前後、IP方式で70×70μm程度である。これはCRシステムの最小100×100μmより小さく、その分高い分解能が得られることになる。

コメント    :
 CCD方式では撮影直後に画像が表示され、IP方式ではフィルムと同等の操作性が得られる。現状では、診断目的によって両者を使い分けるのが最良となるが、一般歯科医院で2つのシステムを購入するのは現実的でない。日常の診療行為をもとに、どちらの利点に比重を置くべきかを考え、機種を選択する必要がある。

原論文1 Data source 1:
(株)モリタ
'98モリタ機器総合カタログ

原論文2 Data source 2:
(株)モリタ
歯科用デジタルX線イメージングシステムDixelカタログ

原論文3 Data source 3:
(株)モリタ
歯科用デジタルX線イメージングシステムDigoraカタログ

キーワード:口内法,intra-oral radiography,デジタル口内法X線画像診断システム,digital intra-oral x-ray imaging system,CCD,電荷結合素子,charge-coupled device,IP,imaging plate,輝尽性蛍光体,photostimulable phosphor,storage phosphor,パーソナルコンピュータ,personal computer
分類コード:030103、030401

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