骨量測定からみた運動の有用性

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作成： 1998/11/11 糸氏　英一郎データ番号　　　：030093 骨量測定からみた運動の有用性目的　　　　　　：骨量測定を通して見た骨の形成期における運動の効果・有益性の紹介放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：X線管応用分野　　　　：医学、診断、スポーツ概要　　　　　　：　骨粗鬆症は、骨の減少する病態であるが、骨量を増加させるような治療法はまだ開発されていないので、先ずその予防を心がける必要がある。末梢骨定量的CT(pQCT-peripheral Quantative Computed Tomography)法による橈骨の骨塩量(g/cm³)や腰椎骨塩量(g/cm²)と運動の種目との関係等を検討した。骨形成期における運動は、骨量を蓄積するために最も有効であり、その後の加齢期での運動は、長く継続することが重要である。詳細説明　　　　：　人口の高齢化に伴い、成人病に対する関心が高まっている。成人病の中で骨粗鬆症は直接死に至らないまでも、日常生活の健全な遂行の妨げになるとともに最近注目されているQOL(Quality of life)に大きな影響を及ぼす。骨粗鬆症は、骨の減少する病態であるが、骨量を増加させるような治療法はまだ開発されていないので、先ずその予防を心がける必要がある。人の生涯の中で骨量が増加するのは、発育期のみであり、このような時期に骨量を増加しておくことは非常に有益である。　骨量測定法には、各種提案されているが、ここでは純粋に骨密度(Bone Mineral Density-BMD)をg/cm³の単位で求めることが出来る末梢骨定量的CT(pQCT-peripheral Quantative Computed Tomography)法で測定した結果を示す。図1に測定装置の概観及び測定結果を示す。図1　pQCT法骨密度測定法　a)装置外観　　b)皮質骨(橈骨近位部)の解析例　c)海綿骨(橈骨遠位4%部位)の解析例　（原論文1より引用）　骨組織は皮質骨とその内部にある海綿骨に大別される。そこで皮質骨と海綿骨の分離解析を行い真の体積密度(mg/cm³)を解析する。CTスキャンは、図1a)に示すように手首部分で行い、通常橈骨遠位端から前腕長(尺骨長)の4%長に相当する近位部すなわち橈骨遠位4%部位、に対して実施する。先ず最初に、測定部位を決定するためにスカウトスキャンを実施する。次に本測定を行うと、図1b、c)に示すように皮質骨および海綿骨の測定部位と測定値が自動的に表示される。このようにして求めたBMDの年齢的変化を図2に示す。図2　橈骨の皮質骨密度および容積の年齢的変化　　a)皮質骨密度　　b)皮質骨容積（原論文2より引用）　図2a)は、皮質骨密度、2b)はその部分の骨全体の容積に対する皮質骨の容積率でそれぞれ年齢との関係を示した結果である。　骨密度は30歳ごろまで増加してピーク値(ピークボーンマス)を示し50歳ごろまでほぼ横ばいになる。その後は加齢骨減少が続く。　骨は硬い組織であるが、常に代謝を行い硬い骨は吸収され、その欠損部分を補填するように骨形成(リモデリング)が行われる。このリモデリング期間は、通常3カ月といわれている。また、骨にはメカニカルストレスを感知して骨量を調節し、骨強度との平衡状態を保つ生理的フィードバック機構がある(メカノスタット理論)。骨にかかるメカニカルストレスの減少で骨量が減少することは明確であるが、逆のストレスの増加で骨量が必ずしも増加しない。　図2a)において、 30歳位まで、言い換えれば小児期から青年期は、骨量形成期である。一生のうちで最も効率よく骨量を増加できる時期であり、この時期の運動は骨量を蓄積出来る最も有効であることがわかる。その例として高校男子スポーツ選手の腰椎骨塩量(g/cm²)と運動の種目との関係を図3に示す。腰椎骨塩量測定には、二重エネルギーX線吸収測定法(Dual Energy X-ray Absorptiometry-DXA)が用いられている。なお、DXAに関しては、別に紹介されている。図3　高校男子スポーツ選手の腰椎骨塩量(L₂_～₄)の関係　　a)スポーツ種目と骨塩量の関係(原論文3より引用)　　b)測定法とラテラル腰椎像(L₂_～₄)(原論文4より引用) 　図3a)は、腰椎骨塩量(g/cm²)であり、その測定に腰椎L₂_～₄を計測していることからその部分の写真も示した。運動種目それぞれについて、その人数の腰椎骨塩量の平均値を示している。重量挙げ、相撲、ハンドボール、ラグビー等瞬間的に強い衝撃負荷と強い筋肉収縮を要求する種目で高い骨塩量を示すことがわかる。　ピークボーンマスの形成期以降の骨塩量は、基本的には増加がなく、この時期に行う運動の効果としては、骨量の維持あるいは減少速度を鈍らせることと考えられる。すなわち、ピークボーンマス形成期の運動の効果は蓄積されるが、それ以降の時期における運動の効果は可逆的で中止するとその効果は消失する。したがって、加齢期では長く継続できる運動を行うことが重要であることがわかる。コメント　　　　：　適当な運動負荷により、筋力の維持増強、神経敏捷性,心肺機能の増強など全身的相乗効果が期待できる。神経敏捷性等は、転倒防止や転倒時の身体防護力を高めて骨折の予防につながり、QOLの向上に大いに貢献する。原論文１ Data source 1： pQCT骨密度測定装置(ノースランド・ストラテック社製) 西本産業㈱販促パンフレット原論文２ Data source 2：骨粗鬆症の検診と予防シンポジウム"第5回日本骨粗鬆症研究会 Osteoporosis Japan, 5(2),pp.157-186,1997. 原論文３ Data source 3：発育期における運動の効果田中　弘之岡山大学医学部小児科 CLINICAL CALCIUM, 6(4),pp.446-449,1996. 原論文４ Data source 4： DXA　X線骨密度測定装置東洋メディック㈱販促パンフレットキーワード：末梢骨定量CT,peripheral quantitative computed tomography,橈骨,radius,骨塩密度,bone mineral density,骨容量,bone mineral mass,画像診断,diagnostic imaging,運動,physicalactivity,骨代謝,rimodeling,骨粗鬆症,osteoporosis,ピークボーンマス,peak bone mass 分類コード：030105,030103,030401,030704
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