骨粗鬆症検診におけるマススクリーニング

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作成： 1998/12/10 糸氏　英一郎データ番号　　　：030092 骨粗鬆症検診におけるマススクリーニング目的　　　　　　：骨粗鬆症や骨塩量の早期スクリーニングとしての骨量測定の意義について紹介放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：X線管応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：　ここ数年骨粗鬆症による大腿骨の骨折例が増加していることから、骨粗鬆症の早期発見、早期予防を目的として、骨粗鬆症検診を実施している市町村が増加し、X線撮影法による骨量測定で骨折のリスクの高い人をスクリーニングしている。この骨量測定には、各種の測定法がありその方法により骨量測定部位も異なってくる。これらについて説明するとともにマイクロデンシトメトリ法による測定例を紹介する。詳細説明　　　　：　人口の高齢化に伴い、高齢者の運動器官の疾患も多く認められるが、これは生命への直接的な影響は少ない。しかし、その内容によっては生活の質(Quality of Life-QOL)を低下させ、自立の妨げになるとともに、介護などの社会的・経済的負担の増加を招く。運動器官の疾患には、骨粗鬆症による骨折と脊椎や関節の変形性機能障害がある。ここ数年骨粗鬆症による大腿骨の骨折例が増加していることから、骨粗鬆症の早期発見、早期予防を目的として、骨粗鬆症検診を実施している市町村が増加している。この検診では、骨密度の測定値から「正常」、「要指導」、「要精検」の3区分に受診者を分類している。すなわち、X線撮影法による骨量測定で骨折のリスクの高い人をスクリーニングする役割を果たしている。　 1.骨量測定法　各種骨量測定法の基本性能を表1に示す。表1　各種骨量測定法の基本性能（原論文1より引用） ------------------------------------------------------------------------------- 実行線定量法測定精度測定部位測定時間量当量（CV(%)）（分）（μSv） ------------------------------------------------------------------------------- マイクロデンシトメトリ 1.1～1.7 第２中手骨 2～4 ～5 (MD) ・コンピュータＸ線デンシトメトリ (CXD) ・デジタルイメージプロセシング (DIP) ------------------------------------------------------------------------------- 単一エネルギーＸ線吸収測定法 1.5 橈骨、踵骨 3～5 ～1 (SXA) ------------------------------------------------------------------------------- 二重エネルギーＸ線吸収測定法 1.2～2.0 腰椎、大腿～15 ～3 (DXA) 骨頸部、橈骨、踵骨、全身骨 ------------------------------------------------------------------------------- 定量的コンピュータ断層法 2～5 第３腰椎海 10～20 ～50 (QCT) 綿骨 ------------------------------------------------------------------------------- 末梢骨定量的コンピュータ断層法 0.5 橈骨、脛骨 10～15 ～1 (pQCT) ------------------------------------------------------------------------------- 定量的超言波法 0.8 踵骨、脛骨～7 0 (QUS) ------------------------------------------------------------------------------- 　測定法では、マイクロデンシトメトリ(MicroDensitometry-MD：Computed X-ray Densitometry-CXD、Digital Imaging Processing-DIP)、単一エネルギーX線吸収測定法(Single Energy X-ray Absorptiometry-SXA)、二重エネルギーX線吸収測定法(Dual Energy X-ray Absorptiometry-DXA)、定量的コンピュータ断層法(Quantitative Computer Tomography)、末梢骨定量的コンピュータ断層法(periferal Computer Tomography)、定量的超音波法(Quantitative UltraSound-QUS)などが代表的である。　さらにそれぞれの測定法に対して測定精度(変動係数:Coefficient of Variation-CV)、測定部位、測定時間(分)および測定時における放射線量を実効線量当量(μSv)で示してある。　 2.測定部位　厚生省では、平成7年度から老人保健法による市区町村総合健康診査事業の一項目として骨粗鬆症検診に対して補助を行っている。その対象市区町村は、78ヶ所でありその検診で実施されている測定部位を図1に示す。図1　検診における骨塩測定法と測定部位　a)骨塩測定法と測定部位の利用頻度(原論文2より引用)　b)中手骨・橈骨を示すX線写真　c)踵骨を示すX線写真 d)腰椎を示すX線写真(以上3点　原論文3より引用) 　もっとも多いのがDXA法橈骨の51.5%、DXA法腰椎22.9%、MD法中手骨21.4%、QUS法踵骨20%の順になっている。ここで利用されている中手骨・橈骨、踵骨を図1b、c)に示すが、指および手首・足首のところであることから比較的簡単に測定が出来る部位といえる。また腰椎は、図1d)に示すように第1～5腰椎があるが、測定には第1～4が多く利用されている。　 3.測定例　ここで、最近多く利用されるようになってきた手部X線画像CXD法(右手)による骨密度測定例を紹介する。なお、DIP法(左手)においても原理は全く同一である。この方法は軟部組織の影響を受けにくく、高い再現性と簡便性を備えていることから、骨減少疾患のスクリーニングおよび治療効果判定に利用されている。図2　手部X線画像CXD法(右手)による骨密度測定例　a)手部X線写真　b)第2中手骨の測定部位置決め　c)第2中手骨X線写真上の黒化度自動測定結果（原論文4より引用）　先ず手のX線写真を楔状のアルミ板とともに撮影(図2a)し、その骨の濃度に等しいアルミ板の厚さを求め、骨塩量をアルミ板の厚さ当量(mmAl)で表す。測定部位は、第2中手骨の1/2位を横断する部分(図2b A-A')であり、この部分のフィルム黒化度を自動計算し(図2c)、骨塩量(m-BMD)および皮質骨指数(MCL)を算出する。　一般的には、これらの測定値と基準値を比較して、スクリーニング等を行う。基準値に関しては、日本骨代謝学会の「原発性骨粗鬆症の診断基準」(1996年改訂版)に、男女とも20歳以上5歳刻みで表示されている。コメント　　　　：　骨量の少ない人に対して、骨折のリスクを減少させるような治療を行う必要がある。骨量測定により骨量を視覚的に明瞭に捕らえることが可能となり、臨床診断や治療効果判定における骨量測定の有効性が期待できる。第2中手骨の測定では、骨幹部が測定されているため、海綿骨に比べ代謝回転がより遅い皮質骨を測定していることになる。腰椎椎体の海綿骨と皮質骨の割合と近いのは、手の骨のうちでは中節骨であることを考えると、スクリーニングのための検診においては中節骨を測定するのがより適していると思われる。原論文１ Data source 1：特集'骨粗鬆症検診と診断の課題'　検診と診断の最先端課題福永　仁夫、曽根　照喜、大塚　信昭、永井　清久川崎医科大学放射線科新医療、25(11),　pp.41-44,1998 原論文２ Data source 2： {1}骨粗鬆症検診全国調査報告書研究班(班長　橋本　勉) (財)骨粗鬆症財団骨検診を実施した結果の評価と今後の保健活動の望ましい手法の研究　報告書pp.1-21,1998 原論文３ Data source 3：第1章放射線画像技術学　2　X線撮影の各論　2.1　一般撮影法中西　左登志鈴鹿医療科学技術大学保健衛生学部医用放射線科学講座8　放射線画像技術学　編集/稲本　一夫、別府　慎太郎、pp.37-111、医歯薬出版、1997 原論文４ Data source 4：骨塩測定装置　ボナライザー帝人㈱販促パンフレット　1994.5. 参考資料１ Reference 1：各種骨量測定法の実際①改良型MD法(CXD法) 松本　千鶴夫、串田　一博、井上　哲郎、妹尾　和男、吉田　誠浜松医科大学整形外科、帝人 THE BONE 5(3),53-58,1991 参考資料２ Reference 2：原発性骨粗鬆症の診断基準」(1996年改訂版) 骨粗鬆症診断基準検討委員会日本骨代謝学会 Osteoporosis Japan, 4(4),pp.65-75,1996 参考資料３ Reference 3：特集'骨粗鬆症検診と診断の課題'　骨粗鬆症における手中節骨測定高田　政彦滋賀医科大学放射線科新医療、25(11),　pp.62-65,1998 キーワード：骨密度測定,bone mineral density measurement, 写真解析法,densitometry,X線吸収測定法,X-ray absorptiometry,コンピュータ断層法,computer tomography,超音波法,ultrasound,中手骨,metacarpals,橈骨,radius,踵骨,calcaneus,腰椎,lumber spine,スクリーニング,screening 分類コード：030105,030103,030401,030704
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