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作成: 1998/04/08 中瀬 泰然

データ番号   :030091
立体DSAの臨床活用方法
目的      :立体DSA(ディジタル・サブトラクション・アンギオグラフィー)の臨床応用方法についての医学物理工学的側面からの紹介
放射線の種別  :エックス線
放射線源    :X線管、
応用分野    :医学、診断

概要      :
 最近、医療診断で進展してきたデジタルラジオグラフィーについて紹介する。放射線源としてのX線ビームの形状による分類では、点状、扇状および錐状ビームに分けることができる。これらの代表的な応用システムの例は、扇状ビームを用いたX線CTスキャノグラフィーや量子計数型X線撮影装置があり、錐状ビームを用いたデジタル透視撮影装置やコンピューテッドラジオグラフィーなどがあり、これらを簡単に説明する。

詳細説明    :
 インターベンショナルラジオロジ(Interventional Radiology-IVR)の目ざましい発展は、多様な機能をさらに要求するようになってきた。とくに血管と病変との位置関係を立体的に把握することは、IVR治療には必要かつ不可欠である。このためにディジタルサブストラクションアンギオグラフィ(Digital Substraction Angiography-DSA)では、一方向からの撮影のみではなく、ステレオX線管を用いたステレオ撮影、多方向からの撮影や回転DSA撮影などの三次元的な撮影方法が採用されてきた。
 
1.RSM-DSA
 従来のDSAでは、造影剤注入前後のX線画像の差を見る時間差分法が採用されている。この時間差分では、時間のずれに伴う位置ずれによるアーチファクト(偽画像)が発生していた。この不具合を除くために時間差のない画像での差し引きが必要である。そこで画像を構成している周波数成分に着目し、周波数成分の異なる画像群を収集してこれらの間で差分を取る方式を開発した。
 一回の撮影の間にピントのぼけた像と通常の造影像を交互に撮影し、その引き算でDSA像を得る。これをRealtime Smoothed Mask-DSA(RSM-DSA)法と呼び、その原理を図1の3種の画像で示す。


図1 RSM-DSAプロセス中の画像 a)ピントのぼけたマスク像 b)通常の造影像 c)RSM-DSA像(原論文1より引用)

 図1cのDSA像では、高周波領域が強調され、微細な血管像とともに骨の辺縁などが強調して描出されている。 本法の特徴は、マスク像がぼけていることでありそのために細かい位置情報を含んでいないことである。
 この利点を活かして、図2に示すようなX線管球保持装置の歳差・振り子・単純回転動作を付加し、血管の立体的位置関係が視覚的に直接認識可能とし,さらに血液のフロー情報をともなった画像が得られる。


図2 歳差動作モードによる撮影 a)歳差運動の概略 b)血流のフロー情報をともなった画像(原論文2より引用)

 
2.回転DSA
 造影剤を注入開始した後、Cアームを静止した状態で、通常のDSA像をCRT上でリアルタイムに観察し、目的部位に造影剤が流入していることを確認してから回転を開始した。この機構により従来のDSAと同様の1024マトリックス、30フレーム/秒の撮影が可能であり通常のDSA画像と比較して遜色のない立体DSA画像が得られた。図3に、回転DSA法による固有肝動脈撮影像を示す。


図3 肝S7の肝細胞癌 a)通常のDSA像 b)回転DSA像(原論文1より引用)

 肝S7位置に肝細胞癌があることが判っているが、正面の撮影(図3a)では、いくつかの動脈が腫瘍に流入しているように見え、栄養血管の判断が困難である。回転DSA像(図3b)では、S7の動脈枝が明瞭に分離され、腫瘍の栄養血管が認識できる。この結果、抗ガン剤を腫瘍に集中的に投与し、動脈を選択的に塞栓し(transluminal arterial embolization-TAE)、かつ、正常肝への傷害を最小限に抑えることができる。

コメント    :
 1回のDSAで必要な画像が得られるために、撮影時間の短縮化、X線被曝線量の低減化、が可能となった技術である。

原論文1 Data source 1:
腹部IVRにおける立体DSAの臨床応用
高橋 健、坂本 一郎、吉澤 健介、中村 敏行、前田 知穂、河合 益実、澤田 弘、田中 修二
京都府立医大放射線科、島津製作所医用機器事業部
映像情報MEDICAL, 29(4),PP.173-178,1997

原論文2 Data source 2:
3D-DSAアプリケーション「NaviDSA」について
澤田 弘、小林 整
島津製作所医用機器事業部
MEDICAL NOW, No.33,pp.16-17,1997

参考資料1 Reference 1:
新方式によるリアルタイム立体DSA法の開発
前田 知穂、中村 敏行
京都府立医大
Isotope News,1997年6月号,p.2-3,,1997

キーワード:ディジタルX線撮影、digital radiography,ディジタル・サブトラクション血管造影,digital subtraction angiography-DSA, IVR,Interventional Radiology, リアルタイム差分法,realtime smoothed mask digital substraction angiography,回転DSA,rotation DSA,歳差動作、precession mode
分類コード:030704,030401

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