デジタルラジオグラフィーの現状と今後

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作成： 1998/04/08 糸氏　英一郎データ番号　　　：030090 デジタルラジオグラフィーの現状と今後目的　　　　　　：デジタルラジオグラフィーの医学物理工学の側面からの紹介放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：X線管、応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：　最近、医療診断で進展してきたデジタルラジオグラフィーについて、その物理工学的側面から紹介する。放射線源としてX線ビームの形状による分類では、点状、扇状および錐状ビームに分けることができる。これらの代表的な応用システムの例は、扇状ビームを用いたX線CTスキャノグラフィーや量子計数型X線撮影装置であり、錐状ビームを用いたデジタル透視撮影装置やコンピューテッドラジオグラフィーなどがある。詳細説明　　　　：　放射線医学は、1895年のX線の発見から始まったといっても過言ではない。放射線は治療利用から始まり、最近の医療診断では、放射線は不可欠の観がある。ここで、放射線の利用分野は当然治療利用と、診断利用に分けるのが一般的である、次に利用する放射線は、X線を始めとして放射性同位元素(アイソトープ)からのγ線、荷電粒子(陽子を始めとしたイオンなど)、また、中性子などの中性粒子がある。診断利用技術の発展から、従来、放射線診断の名称が最近では画像診断に変更されている場合が多い。また、血管造影技術を基に開発されたIVR(InterVentional Radiology)や磁気共鳴診断、超音波診断などの高度診断技術も画像診断に含まれている。ここで使用される診断装置は、コンピュータ支援技術など電子工学、情報工学からの技術までも含むようになり、医学物理工学と言う名称も使用されるようになってきた。　ここでは、診断の分野で主流となっているデジタルラジオグラフィー(Digital Radiography-DR)について、医学物理工学の側面から紹介する。　DRは、X線画像の記録・表示等その信号をデジタル化して、その後種々の画像処理により診断をし易い像を再構成することを特徴とする。　 1.DRシステムの分類　DRシステムをX線ビームの形状で分類すると表1に示すようになる。表1　X線ビームの形状によるデジタルラジオグラフィの分類　（原論文1より引用） ----------------------------------------------------------------------------------- Ｘ線ビーム形状　　Ｘ線検出器　　　　　　　　代表的方式：応用システム ----------------------------------------------------------------------------------- 点状ビーム　　　　　NaIシンチレータ　　　　　　　　　　Medical Micro Dose System (pencil beam) 　＋光電子増倍管　　　　　　　　　　　　(AS&E) ----------------------------------------------------------------------------------- 扇状ビーム　　　　・蛍光体＋光ダイオード　　　　　　　　Digital Chest System(Picker) (fan beam)　　　　・セラミックシンチレータ　　　　　　　　　　　＋光電子増倍管　　　　　　　　　　Ｘ線CTスキャノグラム SPR　　　　　　　・半導体(CdTe)　　　　　　　　　　　　QR(島津) ----------------------------------------------------------------------------------- 錐状ビーム　　　　・Ｘ線蛍光増倍管＋TV走査　　　　　　　DF：DSAシステム (cone beaｍ)　　　・輝尽性蛍光体＋レーザ走査　　　　　　　　　　　＋光電子増倍管　　　　　　　　　　CR：FCR(富士メディカル) 　　　　　　　　　・Se光導電体　　　　　　　　　　　＋マイクロエレクトロメータ走査　　Thoravision(Philips) ----------------------------------------------------------------------------------- SPR:Scanned Projection Radiography CT:Computed Tomography QR :Quantum Radiography DF:Digital Fluorography DSA:Digital Subtraction Angiography CR:Computed Radiography FCR:Fuji Computed Radiography 　 2.X線ビームの形状と画像形成方式　X線ビームの形状は、X線撮影でいかに診断のし易い画像が得るかに基づいて決定されている。図1に、表1の分類で使用したX線ビームの形状と画像の形成方式とＸ線撮影装置に係わるX線の呼び名を示す。図1　X線ビームの形状と画像の形成方式およびX線の呼び名　a)点状ビーム走査方式　b)扇状ビーム走査方式　c)錐状ビーム映像方式およびX線の呼び名（原論文1より引用）　X線管でX線を発生させるには、高速電子を金属板に衝突させる、普通連続X線と特性X線が発生するが、診断用には発生量の多い連続X線が利用するのが得策である。この時Ｘ線管からＸ線が漏れる場合がある(漏れ放射線)。電子の加速電圧が70-80kVの時、連続X線の発生割合は全X線発生量の約90%程度であることから、50-150kVの加速電圧が利用されている。　医療用X線管での金属ターゲットとして、タングステン(W、原子番号74,融点3,370℃)が多く利用されている。なお、高速電子の衝突によって発生するX線は、低エネルギーから高エネルギーの幅広いスペクトルとなる。例えば、タングステン陽極のX線管に100kVの電圧を与えると、2mm厚Al相当のフィルターの通過後であっても光子エネルギーとして20-100keVの幅広いスペクトルのX線が発生する。また、この中にK_α,K_βの特性X線が含まれている。　Ｘ線管から出てくる利用ビームは、線錐となりＸ線絞りを通して必要なサイズ・形状に調整この線錐から漏れ出るＸ線を迷放射線という、また被検体に当たった場合散乱されるＸ線(散乱線)もある。被検体を透過しても検出器に入射しないＸ線や検出器を通過したＸ線は、余剰放射線である。漏れ放射線、迷放射線、余剰放射線等はすくない方がよい。　 3.Ｘ線検出器の構造と原理　X線検出部の構造について代表的な2例を図2に示す。図2　X線検出器の構成および原理図　a)(X線蛍光増倍管+テレビ走査)系(原論文2より引用)　b)(輝尽性蛍光体+レーザ走査+光電子増倍管)系(原論文3より引用) 　図2a) は、(X線蛍光増倍管+テレビ走査)の例であり、DRとして最も多く利用されている。X線蛍光増倍管は、イメージインテンシフィアー(Image Intensifier-I.I.)と呼ばれており、入力蛍光面では入射してきたX線パターンのコントラストを強め数千倍に増強して、出力蛍光面を介してTVカメラへ送る。次に、この信号をA/D変換器にかけてデジタル化して画像処理に送信する。入力・出力蛍光面には、CsI,ZnCdSなどの微結晶が塗布されている。　図2b) は、(輝尽性蛍光体+レーザ走査+光電子増倍管)の原理図であり、コンピューテッドラジオグラフィー(Computed Radiography-CR)として利用されている。撮影前のIPには、バリウムハライド化合物(BaFX:X=Cl,Br,I)の微結晶が塗布しあり、X線照射により励起されて準安定状態になり、画像情報がこれらの粒子に蓄積される。次にこの情報を読みとるためにレーザを照射すると、励起されていた準安定状態の粒子がエネルギーを放出して安定状態に戻る。このときに余剰のエネルギーを蛍光として発光するのでこれを光電子増倍管で検出し、画像処理部へ送信する。画像処理部では、各種のデジタル処理で補正を行うとともに断層像を作成したり、サブトラクション処理により望む部位の画像を描出して診断に必要とする画像を得る。　 4.DRの今後　DR検出器に関する研究の進展があり、近い将来製品化される可能性の高い検出器として、"フラットパネル　ダイレクト　デジタルデテクタ"　がある。ここではアモルファスセレン(a-Se)による平面検出器によりX線に信号を直接電気信号に変換するもので、CRにおけるイメージングプレート(IP)のような媒体が介在しないことから、高品位の画像を低線量のX線照射で得ることが出来る。　一方、DR検出器としてCdTe結晶膜を用いた量子計数型装置が製造されているが、この装置では扇状ビームを用いている点が本装置と異なる。コメント　　　　：　デジタルイメージングシステムは、蛍光体の開発やX線検出器の感度向上等により画像診断能の向上や被曝線量低減が図られている。また、一般DR装置では、画像情報の保存、通信が可能であり画像情報の再現性が高いことも特徴の一つである。原論文１ Data source 1： Ⅲ．デジタルラジオグラフィー digital radiography (DR) 祐延　良治、笹垣　三千宏大阪大学医学部診療放射線技術　上巻(改訂第9版)、監修:立入　弘、稲邑　清也、編集:山下　一也、速水　昭宗、, pp.95-108, 1996，南江堂原論文２ Data source 2： FLUOREX TM ㈱東芝販促パンフレット原論文３ Data source 3：コンピューテッド・ラジオグラフィー大林　尚人東京医科歯科大歯学部歯界展望別冊「歯科画像診断の最前線」　pp.7-20,医歯薬出版(1997) キーワード：デジタルラジオグラフィ、degital radiography,イメージインテンシファイアー、image intensifier,コンピューテッドラジオグラフィ、computed radiography,イメージングプレート、imaging plate,画像診断、diagnostic imaging,ビーム形状、beam shape,画像転送、image transfer 分類コード：030704,030401
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