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作成: 1998/02/10 中瀬 泰然

データ番号   :030089
定位的放射線治療(ラジオサージャリ)装置
目的      :病巣部のみに高線量放射線を照射して治療する方法の紹介
放射線の種別  :エックス線,ガンマ線,中性子
放射線源    :Co-60、リニアック、サイクロトロン
応用分野    :医学、治療

概要      :
 γ線やX線等の放射線を病巣部に集中させて、がん等の細胞を死滅させる方法は、定位的放射線治療法と言われ、定位的ラジオサージャリ装置を使用して行う。このラジオサージャリの中に、γ線を使用するガンマナイフがあり、X線を使用するリニアックサージャリや陽子線も利用されている。定位的放射線治療法では治療計画装置は不可欠である。
 

詳細説明    :
 γ線やX線等の放射線を病患部に集中させて、がん等の病巣部の細胞を死滅させる方法は、定位的放射線治療法と言われ、定位的ラジオサージャリ装置を使用する。この定位的ラジオサージャリ装置(stereotactic radiosurgery)の放射線は、60Coからのγ線やリニアックで発生させたX線であり、さらに最近、サイクロトロンで加速した陽子等の粒子イオンも用いられるようになった。これらの放射線は、図1に示すようにそれぞれ病患部に照射されたとき、その吸収線量分布に特徴がある。


図1 ガンマ線、X線、電子線および陽子線の水中の深部線量分布(原論文1の図を一部改修)

 ガンマ線の場合、相対線量は表面近くで最も高く内部に入っていくに従って徐々に低下するが、リニアックからのX線はビルドアップ効果である深さのところで相対線量は最大になり、その後はガンマ線と同様に低下する。電子線はある深さのところで相対線量が最大になり、その後急激に低下する。一方、陽子線の場合には、ある深さで急激に相対線量が増大する。これらの深さはそれぞれの放射線のエネルギーに比例している。この特徴をうまく活用して治療を行っている。
 定位的放射線治療法では、これらの放射線をナロービームにして病患部の一点に集中し高線量を与えて治療する。脳動静脈奇形(Arterio-Venous-Malformation)、聴神経鞘腫瘍(acoustic tumor)等の治療が主で開頭手術を行うことなく病巣を破壊することを特徴としている。これらの病巣は外科的に処置が不可能な部位に限定された小病変であり、その大きさは3cm以下ものに限定されている。また病変の部位や広がりがを画像診断法により精度よく把握することが必要であり、治療計画及び計画装置は不可欠である。

1. ガンマユニット(ガンマナイフ)
 ガンマユニットの特徴は、定位放射線照射のために頭部固定用を装着した状態で、コリメ-タヘルメットをかぶることである。このヘルメット内には、201個の細い60Co線源が設置されγ線は一点にコリメートされるようになっている。図2aに装置の外観を、2bに201個の線源挿入用コリメータがあるヘルメットを示す。


図2 ガンマユニット(ガンマナイフ) a)ガンマナイフの外観、b)コリメータヘルメット(原論文2より引用)

 コリメータヘルメットのプラグは、4,8,14,18mmの4種のコリメータ径が用意されており、病巣の大きさに応じて使い分けている。 病患部の放射線治療を開始するに当たって、病巣以外の場所に出来るだけ放射線が当たらないように、治療計画が立てられる。このため病巣位置の情報を得るのに、アンギオグラフィ、造影CT,MRIなどが用いられ、ガンマユニット専用の治療計画用コンピュータが用意されている。ガンマユニットによる治療の対象となる疾患は、1.脳動静脈奇形,2.良性腫瘍類(聴神経鞘、髄膜、下垂体線、松果体、頭蓋咽頭、その他)、3.悪性腫瘍類(転移性-肺癌等、神経膠、その他)、4.機能的疾患(三叉神経痛、てんかん、パーキンソン)であり、我が国における治療症例数は約14,500件(1997.12.31.現在)になっている。

2.リニアック(またはライナック)サージェリ
 リニアック(LINAC)は、電子の直線加速器(LINear ACcelerator)を意味し、電子を高周波により加速して高エネルギービームとして金、白金、銅、タングステンなどのターゲット金属に衝突させて発生するX線を利用する。上述のγナイフに対してXナイフと呼ばれることもある。我が国ではリニアックサージェリ用等の放射線治療用直線加速器は、6社から発売され714台(1997.11.現在)が納入されている。医療用リニアックのX線エネルギーは一般的に4〜20MVで、それぞれ単一エネルギーやデュアルあるいはトリプルエネルギーのX線を発生する装置が使用されている。最近ではデュアル/トリプルエネルギー装置の利用が多くなった。図3に、我が国で数多く使用されている2社の医療用リニアックの外観を示す。


図3 医療用リニアックの外観 a)デュアル/トリプルエネルギーX線発生装置(原論文3より引用)、b)デュアルエネルギーX線発生装置(原論文4より引用)

 図3aは、低エネルギー(4 or 6MV)、中エネルギー(10MV)および高エネルギー(15 or 18MV)のデュアル・トリプルエネルギーX線を発生できる装置であり、図3bは、低エネルギー(4 or 6MV)から高エネルギー(10MV)のデュアルエネルギーX線を発生できる装置である。これらの装置の照射ヘッドは、ベッド上の患者の周りを回転しX線ビームが病巣の一点に当たるようにしている。
 1台の装置で複数のエネルギーのX線が発生できることは、病巣の位置や大きさに対して適切な照射が出来ることを意味する。従来ガンマ線で治療していた浅在性の病巣や頭頸部のような比較的浅い部位の治療が4MV X線で治療されるようになってきた。
照射方法としては、患者の病巣を中心に照射ヘッドを回転する方法(運動照射:moving field irradiation)が採られている。
1)回転照射(rotation irradiation):病巣を中心に照射ヘッドを360°回転するものであり、小照射野の下垂体腺腫や大照射野の子宮癌、食道癌などが対象となっている。
2)振子照射(pendulum irradiation):振子角度を決めて照射ヘッドを移動する方法であり、子宮頸癌の例では膀胱や直腸への照射を避けるように実施されている。
3)原体照射(conformation irradiation):病巣体積の形(原体)に合わせて照射野を照射ヘッドの回転中に原体の体積に近い形の線量分布を作成する。
4)打ち抜き照射(rotatory hollow out irradiation):照射したくない臓器を保護するために、円柱形の鉛ブロック等でその臓器を遮蔽する方法で、脳下垂体部の治療例では2cm径の鉛ブロックを使用し水晶体への照射が10%以下にしている。

3.陽子線治療
 陽子は水素のイオン化したものであり、荷電粒子としてもっとも軽く照射されたときの深部線量分布はガンマ線、X線に比べて急峻になる。生物学的効果は前二者とほとんど同等である。陽子線治療装置は、サイクロトロンやシンクロトロンを利用して陽子を加速し所定のエネルギーの陽子線を取り出す。わが国では筑波大学陽子線医学利用研究センターと放射線医学総合研究所さらに1997年2月に国立がんセンターに設置された。がんセンターの施設はわが国における初めての治療専門施設であり、回転照射装置を設置して照射台上の患者の病巣への照射は、誤差1mm以内になるように設計されている。

4.治療計画用システム
 上述の放射線治療を精度良く、病巣以外の組織に障害を与えないようにするためには、正確な治療計画の立案が必要である。そのために必要とされる装置を次に示す。
1)X線位置決め装置(X-ray simulator)
X線TVを主体として、リニアックの動きと同じようにX線発生部を回転させて、透視下で治療範囲を模擬的に設定する。診断用CTに近い画像を得ることも可能である。
2)治療計画用CT
治療計画用CTは診断用とほぼ同様であるが、ベッドが平板でありレーザポインタなどの照準器が備わっている点が異なっている。X線CTにシミュレータ機能を持たせた装置もある。
3)線量分布計画システム
 放射線治療計画(radiation therapy planning)の仕上げとして、病巣に与えるべき線量分布計算結果を2次元、3次元で表示し治療の指針とする。

コメント    :
 病患部以外の組織に放射線が当たるのを避ける傾向から、陽子線治療や重イオンによる治療が注目され、今後発展するものと思われる。

原論文1 Data source 1:
陽子線がん治療システム
住友重機械��
学術資料(パンフレット)

原論文2 Data source 2:
ガンマナイフ
エレクタ��
パンフレット1997.5

原論文3 Data source 3:
三菱(医療用)ライナック EXL series
三菱電機��
販促パンフレット 1997年12月作成

原論文4 Data source 4:
医用ライナック MEVATRON デジタルシステム
�蠹貅如�東芝メディカル��
販促パンフレット 

参考資料1 Reference 1:
診療放射線技術(上、下)
立入 弘、稲邑 清也(監修)、山下 一也、速水 昭宗(編集)
南江堂、 改訂9版発行、1996.10.

参考資料2 Reference 2:
リニアック・サイクロトロン等の医療分野での利用
阿部 雅光
佐賀医科大学医学部脳神経外科
第5回放射線利用技術セミナー 講演テキスト(平成9年10月7,8,9日),放射線利用振興協会

参考資料3 Reference 3:
リニアック・マイクロトロン設置医療機関名簿


新医療 1997年 12月号(pp.111-115)

キーワード:放射線外部照射、external irradiation, 定位放射線手術、stereotactic surgery, ガンマナイフ、gamma knife, ガンマユニット、Leksell gamma unit, リニアックサージェリ、linac surgery, Xナイフ、X-knife, サイクロトロン、sychrotoron,
分類コード:030402,030201

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