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作成: 1998/12/03 西川 慶一

データ番号   :030082
歯科におけるX線撮影法と歯科用デジタルX線画像診断システム
目的      :歯科におけるX線撮影法と歯科用デジタルX線画像診断システムの紹介
放射線の種別  :エックス線
放射線源    :X線管
応用分野    :医学、歯学、画像診断

概要      :
 歯科を代表するX線撮影法は、口内法とパントモ撮影である。したがって、歯科用デジタルX線画像診断システムといえば、この両者のどちらかに対応したシステムといえる。このシステムでは、X線センサーとしてCCDセンサーあるいはイメージングプレートが用いられ、得られたX線情報をコンピュータ処理をして画像化する。

詳細説明    :
 
 近年、コンピュータ技術の進歩に伴って、画像診断の分野にもデジタル化の波が押し寄せている。X線CT(X-ray Computed Tomography)、MRI(Magnetic Rresonance Imaging)、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)、PET(Positron Emission Tomography)、DSA(Digital Subtraction Angiography)などは、初めからコンピュータを利用する画像診断法として開発されたものである。超音波診断装置についても、最初はアナログ方式であったが、最近ではデジタル方式に移行している。また、最も利用頻度の高い増感紙とX線フィルムの組合せを用いる一般的なX線撮影法も、CR(Computed Radiography)システムやDR(Digital Radiography)システムの登場によってデジタル化が可能になっている。ここでは、歯科におけるX線撮影法と歯科用のデジタルX線画像診断システムについて紹介する。
 
 
1.歯科におけるX線撮影法
 
 歯科における一般的なX線撮影法は、X線フィルムあるいは増感紙とX線フィルムの組合せを口腔内に設定するか、口腔外に設定するかによって口内法と口外法に大別される。
 口内法は、歯および歯周組織の鮮明なX線画像を得るための方法で、最も活用されるのはデンタル撮影と称される撮影法である。他に、咬翼法、咬合法などが口内法に含まれる。デンタル撮影では、41×31mmの小さなX線フィルムを用い、歯が実際の長さとほぼ同じになるように、しかも隣接する歯が重ならないように撮影が行われる。図1にデンタル撮影法とデンタルX線写真を示す。


図1 デンタル撮影法 a)照準 b)デンタルX線写真の一例。

a)は患者の口腔内にX線フィルムを設定し、X線の入射方向と位置の照準合わせを行っている様子で、b)はそのようにして得られた下顎左側臼歯部の写真である。
 
 口外法は、撮影部位が頭頚部中心となるだけで医科の撮影と同じである。ただ、歯および歯周組織を総覧的に観察するためのパノラマX線撮影法や顎骨の成長・発育を定量的に分析するための頭部X線規格撮影法など、歯科特有の撮影法もある。パノラマX線撮影法には断層方式(回転方式)と口腔内線源方式があるが、最近では後者を利用することはほとんどなく、装置も製造されていない。今日、パノラマX線撮影法といえば前者の断層方式(Panoramic Tomography、略してPantomography、パントモ撮影法)を示す。
図2にパントモ撮影法とパントモX線写真を指す。


図2 パントモ撮影法 a)頭部の位置付け b)パントモX線写真の一例。

a)は患者の歯列と装置の断層域を一致させるために頭部の位置付けを行っている様子で、b)は得られたパントモX線写真の一例である。
 
 
2.歯科におけるデジタルX線画像診断システム
 
 歯科を代表するX線撮影法は口内法とパントモ撮影である。したがって、歯科用デジタルX線画像診断システムといえば、この両者のどちらかに対応したシステムといえる。それぞれデジタル口内法X線画像診断システム、デジタルパノラマX線画像診断システムと呼称される。パントモ撮影に関しては,これまでも医科用のCRシステムを利用してデジタル化することが可能であった。しかし、デジタルパノラマX線画像診断システムと称した場合には、純粋にパントモ撮影用として開発されたシステムを指す。
 
 デジタル口内法X線画像診断システム、デジタルパノラマX線画像診断システムともに、利用するX線センサーによってCCD(Charge-Coupled Device)方式とIP(Imaging Plate)方式に分類される。CCD方式では、デジタルカメラなどの身近な光学機器の光センサーとして利用されているCCDセンサーを用いる。ただ、CCDセンサー自体はX線に対する感度が低いので、一般に蛍光体と組合せて使用する。IP方式では、CRシステムのX線センサーとして実績のあるIP(輝尽性蛍光体)を利用する。図3に歯科用デジタルX線画像診断システムの一例を示す。


図3 歯科用デジタルX線画像診断システム a)IP方式のデジタル口内法X線画像診断システムDigora(Soredex/Orion社製)の全景 b)CCD方式のデジタルパノラマX線画像診断システムDimax(Planmeca社製)のX線センサー部

 a)はIP方式のデジタル口内法X線画像診断システムDigora(Soredex/Orion社製)の全景である。比較のためにデンタルフィルム(X線フィルム)の代わりにIPを口腔内に設定してX線撮影を行う。IPの大きさはデンタルフィルムとほぼ同じである。撮影終了後、IPに記憶された画像情報を専用のレーザースキャナで読み取り、パーソナルコンピュータで画像化する。b)はCCD方式のデジタルパノラマX線画像診断システムDimax(Planmeca社製)のX線センサー部である。従来の装置では、このCCDセンサーが固定されている位置に、撮影用カセットを取り付けるためのカセットホルダが存在する。CCDセンサーで得られた画像情報はケーブルを介して逐次パーソナルコンピュータに転送され、画像化される。
 
 デジタル口内法X線画像診断システムが世界で初めて市場に登場したのは1987年のことである。その後、欧米のメーカーを中心に同様のシステムが多数開発された。現在では国産のシステムも販売されており、国内においても多くのシステムを入手できる。一方、デジタルパノラマX線画像診断システムが市場に登場したのはごく最近のことで、国内で販売開始になったのは1998年7月のことである。このように、歯科用デジタルX線画像診断システムが利用され始めてからまだ日が浅いが、欧州での普及には目を見張るものがある。我が国においても、今後急速に普及していくものと予想される。

コメント    :
 歯科X線撮影を代表するデンタル撮影とパントモ撮影は、活用頻度は高いものの、デジタル化されたのはごく最近である。これは、口腔内にフィルムを設置したり、フィルムが患者の周囲を回転したり、と言った撮影方法の特殊性に起因すると思われる。

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分類コード:030103、030401,030704

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