転移性脳腫瘍に対する放射線治療

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作成： 1998/02/08 幡野　和男データ番号　　　：030064 転移性脳腫瘍に対する放射線治療目的　　　　　　：転移性脳腫瘍における治療の現況および放射線治療の役割について放射線の種別　　：エックス線,ガンマ線放射線源　　　　：X線管、⁶⁰Co、応用分野　　　　：医学、治療概要　　　　　　：　転移性脳腫瘍は全癌患者の10-15%にみられる。中でも肺癌、乳癌に多くみられ、胃癌や腎臓癌では頻度は低い。転移部位により様々な症状が出現するため、一定の症状というものはない。定期的検査においてX線CTやMRで発見される。治療法は原疾患の種類、全身状態、治療状況及び脳転移部位、数により異なり、外科的切除、化学療法、放射線療法が選択される。詳細説明　　　　：　癌患者の増加とともに脳転移の頻度も高まっている。X線CT、MRIの出現により、比較的早期に発見されることも多くなった。脳転移の頻度が高い肺癌においては、施設によっては初診時の検査で転移の有無が確認されるようになってきた。しかし、一般的には何らかの神経症状が出現してから検査が行われ脳転移が発見されることがほとんどである。症状は転移部位により、手や足の麻痺、意識障害、その他諸々の症状が出現し、一定のものはなく無症状であることも希ではない。治療法としては、原発巣(最初にできた癌)が制御できていて脳外科的に切除可能な部位であれば手術を行うこともある。脳転移は通常多発性であることが多く、切除可能な部位のみを切除し、その後で放射線治療を行う場合もあるが脳外科医の積極性に左右される。悪性リンパ腫や白血病では放射線感受性が高く切除は行わずに放射線治療が行われることが多い。　転移性脳腫瘍に対する放射線治療は脳全体に照射する全脳照射と腫瘍部のみを照射する部分照射に分けられる。前者は通常左右2方向から脳全体をカバーするように照射される。一方、後者ではできる限り腫瘍に線量を集中させようとする目的で前後、左右最適な方向からの組み合わせで照射する。通常は多発転移が多いため全脳照射をまず行い、その後、腫瘍部に縮小して部分照射を行うことが多い。実際には、頭頚部腫瘍に対する放射線治療と同様に、まず、シェルというお面を個々に作成し、この表面に照射野を描くことになる。毎回これを装着して治療を受けるのである。以前は照射野を描くために、頭髪を切る必要があったが最近ではシェルを使用するようになったために必要がなくなった。照射線量は1回2-3Gyで週5回、計30-50Gyを2-5週間で全脳照射する。その後に腫瘍に絞って10-20Gyを追加する。多発転移のために照射野縮小が難しい場合には全脳照射のみとなることがある。　小さな転移であれば、全脳照射せずにあるいは全脳照射と併用で60Co線源によるガンマナイフや医療用ライナックを用いたラディオサージェリーにより治療されることもある。これらの治療機器は最近開発されたもので実施可能な施設は限られるが、有効性が報告されてきている。小さな腫瘍に多方向から細く絞った放射線を照射し、腫瘍周囲の正常組織にはより少ない線量しか照射されずに腫瘍に高線量を集中して照射できるものである。今後、適応が増加していくものと思われる。　図1にガンマナイフの全景を示す。図1　放射線治療装置－ガンマナイフ－による治療風景（原論文1より引用）　頭部にコリメータヘルメットを被せて、⁶⁰Coからのガンマ線を病患部に集中させる。照射による副作用は、部分照射においてはほとんど問題にはならない。全脳照射においては、照射により脳浮腫が起こるため、照射時にはあらかじめ副腎皮質ホルモン等の投与が必要になる。これらの前処置を行っても、食欲不振、吐き気、嘔吐などの症状は出現する可能性が高い。副作用出現時は対症的に制吐剤の投与を行うことにより治療は続行される。局所的な問題として、脱毛がある。全脳照射を行った場合には、頭髪全体が抜けるが、照射線量が多くなければ3～6ヶ月で再び生えてくる。図2に、脳腫瘍のガンマナイフによる放射線治療前後のMRI画像を示す。図2　ガンマナイフによる治療前後の頭部MRI画像　　a)治療前　　b)治療６カ月後（原論文2より引用）　矢印で示した部位(図2a)にあった腫瘍は、乳癌からの転移性脳腫瘍であり、治療６カ月後(図2b)にはほとんど認められなくなっている。　一般的に体のどの部位でも放射線照射されると頭髪が抜けると勘違いをされている方が多いが、放射線による脱毛は照射局所に起こるものであり、照射野以外の部位に起こることはない。脱毛とともに、照射線量が多い場合には、照射野内の皮膚に色素沈着などの日焼けと同様な皮膚炎がおこり、かゆみを伴うこともあるがこれは通常1ヶ月前後で軽快する。　治療効果については、治療により症状の改善が見られることが多く、患者のQOL(Qualoty of Life)を向上させる。しかし、転移性腫瘍においては、根治的治療の意味合いは低く、なかなか長期予後に結びつかないのが現状である。　コメント　　　　：　転移巣が小さな時期に発見されるようになると、ラディオサージェリーなどによる治療により長期予後に結びつく可能性が期待される。原論文１ Data source 1： Leksell Gamma Knife 　Treatment Planning 治療計画エレクタ㈱技術資料　1997/08 原論文２ Data source 2： Leksell Gamma Knife 　A Clinical Perspective 臨床的展望エレクタマンソン㈱技術資料　1996/11 キーワード：転移性脳腫瘍,metastatic brain tumor, 放射線治療,radiotherapy, ガンマナイフ,γ-knife,　ラディオサージェリー,radiosurgery, 脱毛,alopechia，コバルト-60,Co-60 分類コード：030201,030402,
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