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作成: 1999/01/28 西川 慶一

データ番号   :030058
歯科デジタルパノラマX線画像診断システム
目的      :歯科デジタルパノラマX線画像診断システムの紹介
放射線の種別  :エックス線
放射線源    :X線管
応用分野    :医学、歯学、診断

概要      :
 顎骨全体の展開像を得るためのパノラマX線撮影法は、口内法とともに歯科を代表するX線撮影法である。これをデジタル化したデジタルパノラマX線画像診断システムは、口内法用のシステムと同様に、使用するX線センサーによってCCD(Charge-Coupled Device)方式とIP(Imaging Plate)方式に大別される。ここでは、両方式の特徴について紹介する。

詳細説明    :
 歯科を代表するX線撮影法は、歯および歯周組織の鮮鋭な像を得るための口内法と顎骨全体の展開像を得るためのパノラマX線撮影法(パノラマ撮影法)である。パノラマ撮影法にはもともと断層方式(回転方式)と口腔内線源方式の2種類があったが、現在ではパノラマ撮影といえば前者を指す。正式には断層方式のパノラマX線撮影法とか、回転パノラマX線撮影法と呼ばれる。
 パノラマ画像のデジタル化は、医科用の富士CR(Computed Radiography)システムを利用することで、比較的早くから可能であった。しかし、CRシステムは非常に高価なため、実際にデジタル化したのは一部の大学・総合病院だけであった。一般歯科医院でのデジタル化が可能になったのは、パノラマ撮影専用のデジタルシステムが開発されてからである。 このデジタルパノラマX線画像診断システムが開発されたのはごく最近で、国内で販売開始になったのは1998年7月のことである。デジタル口内法X線画像診断システムが1980年代後半に開発されたことを考えると、ずいぶん遅れて登場したことになる。
 デジタルパノラマX線画像診断システムの設計・開発思想は、口内法用のものと全く同じといえる。すなわち、コンピュータとして汎用のDOS/Vパソコンを用い、Microsoft社の基本ソフトWindows95、Windows98、WindowsNT V4.0を利用してGUI(Graphic User Interface)環境下で画像を取り扱うことになる。得られた画像の観察は、パソコン用のCRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイやTFT液晶ディスプレイ上で行う。利点としては、患者の被曝低減が可能、画像処理が可能、画像データ保管のためのスペース削減が可能、画像データの検索が容易、暗室が不要といったことが上げられる。また、使用するX線センサーよって、CCD (Charge-Coupled Device、電荷結合素子)方式とIP (Imaging Plate)方式に大別されるのも口内法用のシステムと同じである。以下この両者について説明する。
 
1.CCD方式のデジタルパノラマX線画像診断システム
 CCD方式では、X線センサーとして蛍光体とCCDセンサーの組合せを用いる。X線情報は蛍光体により可視光の情報となり、それがCCDセンサーへと導かれて電気的信号に変換される。そして、適当に増幅された後、A/D (Analogue-to-Digital)変換器によりデジタル情報に変換されてパソコンに取りこまれる。
 パノラマ撮影では、縦に細長いスリット状X線束で顎顔面部をスキャンすることにより、縦約15cm、横約30cmの画像を得る。X線センサーはこのスリット状X線束に対応する必要があるため、複数のCCDセンサーを縦に連続的に並べた形で構成される。X線センサーを撮影装置に組み入れる方法としては、2種類がある。その1つは、通常のカセットと同じ大きさの容器にまとめてセンサーユニットとする方法である。図1にこの方法を採用したVeraview Epocsのセンサーユニットとそのユニットを装置に設置した状態を示す。


図1 (株)モリタ製作所製のCCD方式のデジタルパノラマX線画像診断システムVeraview Epocs (a) 従来のカセットとX線センサーユニット (b) 従来のカセットをカセットホルダに設置した状態 (b) X線センサーユニットをカセットホルダに設置した状態

 このような方法を用いると、カセットホルダに従来のカセットを設定するかセンサーユニットを設置するかで、アナログ写真を撮影することもデジタル画像を得ることもできる。もう1つは、従来のカセットホルダ部全体をX線センサー部に置き換える方法である。図2にこの方法を採用したDimaxのX線センサー部を示す。


図2 Planmeca製のデジタルパノラマX線画像診断システムDimaxのX線センサー部(原論文1より引用)

 センサー部は従来のカセットホルダに比べて非常にコンパクトになり、センサー部が患者の肩と衝突する危険性が減少するとともに患者に対する撮影時の圧迫感を減らすこともできる。
 デジタル口内法X線画像診断システムの場合、CCD方式では撮影直後に画像が表示されるという大きな利点が得られるものの、センサーが厚くて小さい点、ケーブルが存在する点が問題となる。しかし、パノラマ撮影の場合には、これらの点は何ら問題にはならない。
 
2.IP方式のデジタルパノラマX線画像診断システム
 IP方式では、富士CRシステムと同様に、X線センサーとして輝尽性蛍光体から成るIPを利用する。言い換えれば、歯科用CRシステムである。IPは、暗所では撮影によって得られたX線画像情報を保持する、そして、レーザー光の照射によりその情報を蛍光の形で取り出すことができる。すなわち、撮影済みのIPをレーザー光で2次元的にスキャンし、それぞれの位置で発せられた蛍光を光電子増倍管で電気信号に変え、それをデジタル化すれば画像データが得られる。
 IP方式を採用しているシステムは、世界的にみれば3機種あるが、国内で販売されているのは今のところ1機種のみである。図3にIP方式のディジタルX線画像診断システムDenOptixを示す。


図3 Dentsply International Corp. Gendex事業部製のIP方式のデジタルパノラマX線画像診断システムDenOptix(原論文2より引用)

 DenOptixは、1台のシステムで口内法とパノラマ撮影の両方に対応している。パノラマ撮影の場合、増感紙を貼っていないカセットにIPを入れ、従来と全く同じ撮影を行う。
 IP方式の最大の利点は、いままで利用していた撮影装置がそのまま利用できることにある。欠点はIPに記録された情報を読み出すためにスキャンが必要なことであり、画像表示までに数分を要することである。

コメント    :
 現在のところ国内で入手可能なデジタルパノラマX線画像診断システムはわずかであるが、発売予定になっているシステムは多数あり、間もなくそれらも購入可能になるはずである。

原論文1 Data source 1:
 
Planmeca OY
Planmeca Products(プランメカ社総合カタログ)

原論文2 Data source 2:
デンツプライ・ジャパン(株)
DenOptixカタログ

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分類コード:030103、030401

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