用手的治療用密封小線源の特性

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作成： 1998/03/20 佐方　周防データ番号　　　：030057 用手的治療用密封小線源の特性目的　　　　　　：用手的密封小線源治療に用いる線源の特性と形状を説明放射線の種別　　：エックス線,ベータ線,ガンマ線,中性子放射線源　　　　：各種放射性核種線量（率）　　　：0.2Gy/hr～2Gy/hr 利用施設名　　　：病院等の放射線治療部門照射条件　　　　：人体組織内、人体腔内、人体皮膚表面応用分野　　　　：医学、放射線治療概要　　　　　　：　用手的密封小線源治療に用いられる線源は、Raの重量に換算して20mg以下程度の低線量率線源である。いくつかの治療技術に対応するため、種々の形状(針、管、ワイヤ、ピンおよびシードなど)や半減期の線源が製作されている。過去においては、Raおよびその娘核種 ²²²Rnが唯一の密封小線源用核種であったが、今ではほとんど使用されていない。現在の線源としては、全て原子炉技術の発展により開発・製造された人工放射性核種が用いられている。詳細説明　　　　：　密封小線源 (以下、小線源とする)治療を、線源操作の面より分類すると用手的治療とRALS治療の2種類となる。用手的治療では線源操作の大部分を手作業で行うので、放射線防護上の理由により高放射能の線源を用いることはできない。ほとんどのものはRa の重量に換算して20mg以下の低線量率線源である。これらの線源は、更に一時装着用および永久刺入用の2種類に分けられる。Ra(一時装着用)およびその娘核種である ²²²Rn (永久刺入用) は過去における唯一の小線源用核種であったが、今ではほとんど使用されていない。現在用いられる核種は、全て原子炉技術の発展により開発・製造された人工放射性同位元素である。代表的な用手的治療用線源の形状を図1～3に示す。図1　用手的密封小線源治療に用いられる代表的な線源の形状1. ¹³⁷Cs線源。　a)Cs針、 TL(全長):24.5-55mm、 AL(有効長):15-45mm、 D(直径):1.65mm、放射能:55.5-333MBq. 　b)Cs管、 TL:20-21mm、 AL:13.5-15mm、 D:2.3-2.65mm、放射能:555-2780MBq. （原論文1より引用）　γ線を利用する一時装着用線源の核種は、⁶⁰Co、 ¹³⁷Cs および¹⁹²Ir などである。⁶⁰Coは、金属コバルトを原子炉中で放射化して生成するので、任意の量のものが比較的安価に得られる。しかし、平均エネルギーがRaより高く、半減期も比較的短いことから、用手的治療に適した線源とはいえず、実際に使用している施設は少ない。¹³⁷Csは、半減期がRaに次いで長く、またγ線エネルギーも低いことから、 Raに代わる有力な線源の一つとして広く用いられている。医療用の ¹³⁷Cs線源は、水に不溶のセシウム塩の粉末あるいはその焼結物をPt-Ir 合金あるいはステンレス鋼のカプセルに密封してある。形状、寸法および線源強度等はRaとほぼ同等に作られており、 Raにより行われていた治療はそのまま ¹³⁷Cs線源に置き換えることができる。図2　用手的密封小線源治療に用いられる代表的な線源の形状 2. ¹⁹²Ir線源。　a)ヘヤピン:740MBq、　b)シングルピン:370MBq、　c)シード:37MBq、　d)シンワイヤ:74MBq/cm.（原論文1より引用） ¹⁹²Ir 線源は、Pt-Ir 合金をPtで被覆したものを原子炉中で照射して生成する。¹⁹²Ir が他の一時装着線源と異なる点は、 ①材質が柔軟で種々な形状(ヘヤピン、シングルピン、シンワイヤ、シードアセンブリィ等)のものが得られる、 ②アフタローディングによる組織内刺入が可能、 ③平均γ線エネルギーが¹³⁷Cs より低い、などである。よって、74.2日という短い半減期にもかかわらず、欧米では以前より用いられており、わが国でも普及が進んだ。ただし、線源形状が違うため、従来のRaによる治療とは異なる線源配列計画法を必要とする。　γ線以外の一時装着用線源には ⁹⁰Srと ²⁵²Cfがある。⁹⁰Srでは、その娘核種である⁹⁰Y のβ線が治療に用いられる。医療用線源は、円または正方形の偏平(あるいは球面)容器中に⁹⁰Srを塗布した銀板を収め、薄い遮蔽板により密閉してある。有効部の面積は1-7cm²、放射能は0.37-7.4GBq 程度である。　²⁵²Cf は自発核分裂を行う中性子線源である。医療用線源は、ワイヤ状のものをカプセルに密封し、さらにセル、針、管およびシード等の形状のPt-Ir 合金の2次容器に封入する。線源の量は、質量によって表し、およそ0.5-40μg である。図3　用手的密封小線源治療に用いられる代表的な線源の形状 3.　　a)⁹⁰Srの板状線源、　b)²⁵²Cf シード、　c)¹⁹⁸Au グレイン:185MBq、　d)一時装着および永久刺入用¹²⁵Iシード:37-1480MBq、　e)永久刺入用¹²⁵Iシード:3.7-181MBq(標準:20.4MBq).（原論文1より引用）　永久刺入用の線源としては、現在わが国では¹⁹⁸Au が広く用いられ、欧米では低エネルギー核種である¹²⁵Iによる治療も始まっている。これらの線源は、外形が小さい種子(粒)状なので、通常シードあるいはグレインと呼ばれる。¹⁹⁸Au グレインは、粒状の純金をPtで被覆し、両端をPtメッキしたものを原子炉中で放射化して得られる。²²²Rn に比べ、半減期は少し短いが、壊変生成物が無くβおよびγ線エネルギーもやや低いという利点がある。国産の¹⁹⁸Au グレインは、従来の²²²Rn シード(37MBq)を永久刺入した場合の線量に等しくするため、使用開始予定時の放射能が185MBqとなるように調整して出荷される。　¹²⁵Iより放出される光子は、その娘核種である¹²⁵Te の特性X線である。特徴は、エネルギーが低い(平均24keV)ため遮蔽が容易であること、永久刺入用線源としては60日という比較的長い半減期であるが、わが国では、法規制上の問題もあり一部での試行的な治療に止まっている。医療用線源として、Tiカプセル内に¹²⁵Iを吸着させた銀ロッドあるいは球形の樹脂を納めたシード状にしている。コメント　　　　：　最近の用手的密封小線源治療に用いられる線源の特徴は、 ①放出するγ・X線のエネルギーが低いこと、②アフタローディング法による治療ができること、などであり、放射線防護の面からみて極めて有利である。特に、組織内刺入のアフタローディング治療は、¹⁹²Ir のような柔軟で細いワイヤ状あるいはシードアセンブリィ状の線源の登場により実施しやすくなった。　将来の低エネルギー線源の核種として検討が進められいているものに、一時装着用として ²⁴¹Am (エネルギー:59.5keV、半減期:432年)および ¹⁴⁵Sm (エネルギー: 38-45keV、半減期:340日)が、永久刺入用には¹⁰³Pd(エネルギー:21keV、半減期:17.0 日)などがある。原論文１ Data source 1：密封小線源治療設備機器とその安全取扱い法佐方　周防、内田　勲千葉県がんセンター放射線治療部物理室、癌研究会癌研究所物理部 RADIOISOTOPES, Vol.36(3), pp.145-154,1987 参考資料１ Reference 1：治療用密封小線源佐方　周防千葉県がんセンター放射線治療部物理室石槫顕吉、館野之男、富永洋、中沢正治、山口彦之　編集、放射線応用技術ハンドブック, pp.461-467, 1990 朝倉書店参考資料２ Reference 2：密封小線源治療の線量測定法佐方　周防千葉県がんセンター放射線治療部物理室放射線医学物理、 Suppl.50, pp.6-43,1997 キーワード：密封小線源治療, 密封小線源, 放射性核種, 低線量率, 一時装着治療, 永久刺入治療,Brachytherapy, Sealed source, Radioactive nuclide, Low dose-rate,Temporary implant, Permanent implant, 分類コード：030402,030203,030702
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