密封小線源治療用核種の種類と特徴

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作成： 1998/02/28 佐方　周防データ番号　　　：030056 密封小線源治療用核種の種類と特徴目的　　　　　　：密封小線源治療に用いる線源核種の種類と性質の説明放射線の種別　　：エックス線,ベータ線,ガンマ線,中性子放射線源　　　　：放射性核種線量（率）　　　：0.2Gy/hr～10Gy/min 利用施設名　　　：病院等の放射線治療部門照射条件　　　　：人体組織内、人体腔内、人体皮膚表面応用分野　　　　：医学, 放射線治療概要　　　　　　：　密封小線源治療に用いられる核種は従来Raのみであったが、放射性同位元素工学の発展により、現在ではいくつかより治療に適した核種が開発されている。密封小線源とは、少量のこれら核種の放射性同位元素を小型の容器(カプセルという)に密封したもので、臨床上の要求に応えるため、種々の形状(針,管,ワイヤ,ピン,シードおよびRALS用など)や、エネルギー、線量率および半減期を持つ線源が製作され利用されている。詳細説明　　　　：　密封小線源(以下, 小線源とする)治療とは、比較的小寸法・少量の放射性核種を体組織内に挿入したり、あるいは極近傍に配置して放射線照射を行うものである。この治療に用いられる線源は、「医療法施行規則」の診療用放射線器具(RALS装置で3.7GBq以上の線源を装備するものは診療用放射線治療装置)に相当するもので、その使用に当たっては「医療法」、「放射性同位元素による放射線障害の防止に関する法律」およびその他関連の法律の規制を受ける。　一般的に、小線源に求められる条件としては、①化学的に安定であること、②コストが納得できる範囲であること、③γおよびβ線のエネルギーが低いあるいはβ線を放出しない(被曝防護のための遮蔽および線源容器を簡単にできる)こと、④比放射能が高くサイズおよび形状等の線源製作上での柔軟性が高いこと、⑤破損時の処理が容易なこと、などが挙げられる。現在、これらの条件を満たすいくつかの核種が開発され治療に供されている。表1に主な小線源用核種およびその性質を示す。表1　小線源治療に用いられる核種とその特性。（原論文1より引用） ----------------------------------------------------------------------------- 半価層 (cm) 照射線量 γ線の平均エ ------------------ 核種壊変形式半減期率定数^* ネルギー(MeV) 鉛コンクリート ----------------------------------------------------------------------------- ⁶⁰Co β^- 5.271年 2.532 1.25 1.3 6.2 ¹³⁷Cs β^- 30.17年 0.634 0.662 0.65 5.0 ¹⁹²Ir β^- 74.0 日 0.908 0.35 0.57 4.1 Ra ウラン系列 1600 年 1.600 0.78 1.7 7.0 ----------------------------------------------------------------------------- ¹⁹⁸Au β^- 2.696日 0.462 0.41 0.51 4.1 ¹²⁵I EC 60.2日 0.281 0.028 0.002 0.3 ¹⁰³Pd EC 17.0日 0.287 0.021 0.001 ²²²Rn ウラン系列 3.824日 1.600 0.78 1.7 7.0 ----------------------------------------------------------------------------- ²⁵²Cf α 2.64年 γ:1.14 γ:0.8 5cm (水) Fission n:2.13 n:2.348 ⁹⁰Sr β^- 28.8年 β:2.27 ----------------------------------------------------------------------------- *単位：x10^-¹⁸Ckg^-¹m²s^-¹Bq^-¹. Raは 0.5mmPt濾過後の値, ²²²Rn は癌研供給値、その他は無濾過　ここでRaおよびその娘核種である ²²²Raの使用は現在急速に減少しつつあるが、他の核種との比較のため表１に示した。なお、Raはウラン系列に属する自然放射性同位元素であり、今世紀初めより長い間人類が用いることのできる唯一の放射線治療用のγ線源であった。しかし、その壊変生成物がガス状であり、容器の破損に伴う環境汚染の可能性の高いことが指摘され,国際放射線防護委員会(ICRP)から使用を停止することが勧告されている。現在Raはその娘核種の ²²²Rnとともに、小線源用核種としての歴史的使命を終えようとしている。その他の新しい核種は, 第2次大戦後の原子炉技術の発展により登場してきたもので、Raに比べ, 壊変生成物のこと以外にも, 小線源治療用核種としていくつかの利点を有している。表1において、治療技術より見て⁶⁰Co, ¹³⁷Cs, ¹⁹²Irのように半減期の長い一時装着治療用と¹⁹⁸Au,¹²⁵I,¹⁰³Pdのような比較的半減期の短い永久刺入用に分けられる。また, 線源操作の点より分類すれば、一部または全部の操作を手作業で行う用手的治療に用いる低線量率線源と、遠隔操作式アフタローディング法 (以下, RALS-Remotely controlled Afterloading Systemとする)での使用の主流である高線量率線源の2種類となる。　一時装着治療では、線源を装着後、予定した線量が患部に与えられたらこれを抜去する。よって、線源を繰り返し使用することが可能で、半減期もおよそ1年以上の長寿命核種が用いられている(¹⁹²Irを除く)。　永久刺入治療では、低線量率の線源を体内へ永久に放置する。よって、その形状は小さい粒状であり、半減期もおよそ 100日以下と短い。過去長い間唯一の永久刺入用線源であった ²²²Rnシードは既に姿を消し、これに代わる ¹⁹⁸Auグレインが今日では広く用いられ, 欧米では低エネルギー核種である¹²⁵Iおよび ¹⁰³Pdシードによる治療も始まっている。　用手的治療に用いられる、γ線源としては⁶⁰Co,¹³⁷Cs,¹⁹²Irなどがあり、β線源には⁹⁰Srがある、また中性子線源には ²⁵²Cfなどの核種があり、いずれも低線量率の線源として用いられる。また、形状としては、臨床上の要求に合わせ、針、管、ピン、ワイヤ、シードなど多様な形状のものに加工される。RALSの大部分は高線量率治療で、線源核種として⁶⁰Coおよび ¹⁹²Irが用いられるが、一部 ¹³⁷Csを使用した中・低線量率のものもある。コメント　　　　：　従来, 密封小線源治療に用いられる核種は、Raのみであったが放射線防護上の理由によりその使用が禁止されるようになった。　低エネルギーの一時装着線源として、²⁴¹Am(59.5keV,半減期：432年)および¹⁴⁵Sm(38-45keV,半減期：340日)などが将来の線源核種の候補として挙げられている。ただ、このようなそれぞれに特性の異なった線源の使用は、dosimetry の面でやや混乱を招いていることは否めない。　⁶⁰Co遠隔治療装置や直線加速器などの高エネルギー外部照射装置の普及などにより、小線源治療の役割は一時後退した。しかし、現在では、コンピュータを用いた線量計算技術, アフタローディング法による被曝の低減化, 遠隔操作式アフタローディング法による治療の自動化と照射時間の短縮などの新技術が開発され, 小線源治療の適応は再び拡大しつつある。さらに、人工放射性核種を用いた低エネルギーかつ小型の線源の出現も将来の小線源治療の発展を可能にしつつある。原論文１ Data source 1：密封小線源治療の線量測定法佐方　周防千葉県がんセンター放射線治療部物理室放射線医学物理, Suppl. 50,6-43, 1997 参考資料１ Reference 1：治療用密封小線源佐方　周防千葉県がんセンター放射線治療部物理室石槫顕吉、館野之男、富永洋、中沢正治、山口彦之　編集、放射線応用技術ハンドブック, pp.461-467, 1990 朝倉書店参考資料２ Reference 2：密封小線源治療設備機器とその安全取扱い法佐方　周防, 内田　勲千葉県がんセンター放射線治療部物理室, 癌研究会癌研究所物理部 RADIOISOTOPES, Vol.36(3),pp.145-154, 1987 キーワード：密封小線源治療、Brachytherapy, 密封小線源、Sealed source, 放射性核種、Radioactive nuclide，一時装着治療、用手的治療分類コード：030402,030203,030702
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