中咽頭癌の放射線治療

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作成： 1998/02/18 小川　和彦データ番号　　　：030051 中咽頭癌の放射線治療目的　　　　　　：中咽頭癌の放射線治療法の紹介放射線の種別　　：エックス線,ガンマ線,電子放射線源　　　　：直線加速器、¹⁹²Ir, ¹⁹⁸Au 応用分野　　　　：医学、治療概要　　　　　　：　中咽頭は、構音、嚥下というような日常生活に必要な機能をつかさどる場所であり、従来より放射線治療が治療の第一選択として施行されてきた。しかし、進行した症例の制御は困難であるのが実情である。治療方針としては早期癌は機能温存を主眼として放射線主体で治療を行い、進行癌は手術との併用療法を実施している。詳細説明　　　　：　中咽頭は、解剖学的に前壁(舌根、喉頭蓋谷)、側壁(口蓋扁桃、扁桃窩と口蓋弓、舌扁桃溝)、後壁、上壁(軟口蓋下面、口蓋垂)の4部位に分類される。中咽頭癌は頭頸部癌患者の約10%に相当するとされている。この部位の腫瘍は口蓋扁桃(いわゆる扁桃腺)に限れば悪性リンパ腫が過半数を占めるが、中咽頭全体では扁平上皮癌が多く、腺癌も少数ではあるが存在する。中咽頭癌は50-60代もしくはそれ以上の男性に多く、飲酒、喫煙、口腔内の不衛生等が発癌に関与していと言われている。口腔内の疼痛、口腔内腫瘤や頚部腫瘤(頸部リンパ節腫大)を主訴として来院することが多い。　治療前の検査としては、口腔内の視診、触診、腫瘍から直接一部を切り取って病理学的に癌細胞を調べる生検を行い、さらに頭頸部CT・MRIにより局所の状態を調べ、胸部X線検査、骨シンチ、腹部エコーまたはCTにより、遠隔転移(他の臓器への転移)の検索をする。治療法は原則的には、進行度に従って決定する。次に咽頭癌の進行度に基づく分類を示す。　　　　　　喉頭癌の病期分類　病期　　　　　　分類説明　Ⅰ期　　T1(声帯に限局し、声帯運動は正常)，　Tis(粘膜上皮内癌-浸潤前癌)　　　　　　　T1a:片側声帯に限局, 　　　　　　T1b:両側声帯に及ぶ　　　　　N0(所属リンパ節に触れない) 　Ⅱ期　　T2(声門上または声門下部に進展しているが江東に限局、　　　　　　声帯運動は正常か若干障害) 　　　　　N0 　Ⅲ期　　T3(片側または両側声帯の運動が障害されて固着しているが喉頭に限局) 　　　　　T1,T2,T3. 　　　　　N0,N1(患部に所属リンパ節に触れるが可動) 　Ⅳ期　　T4(直接浸潤による喉頭外進展、例えば軟骨を破壊して皮膚に及んでいる場合) 　　　　　T1,T2,T3,T4. 　　　　　N0,N1,N2(片側または両側のリンパ節に触れるが可動), 　　　　　N3(固定性所属リンパ節に触れる). 　　T2までの早期例は放射線治療単独、T3以上の進行例は手術、または手術と放射線治療、化学療法を併用する。治療の手順としては、まずシェルと呼ばれる顔の型をとり、治療中に顔が動くことがなく、毎回決められた部位に正確に治療を行うことができるようにする。次に、シミュレーターと呼ばれる装置で治療範囲を決めてから放射線治療を開始する。図1に扁桃癌の放射線治療前後のX線CT画像を示す。図1　喉頭癌の放射線治療前後のX線CT画像　1a)治療前、1b)治療後　　　図1a)は、放射線治療前であり扁桃癌(矢印)とリンパ節転移(矢頭)が存在する。図1b)は、放射線治療後であり、上述の癌類は消失している。　この放射線治療は1日1回で週に5回(月ー金)行われるのが一般的である。治療の範囲は、T1N0(頚部リンパ節転移のないもの)のようなごく初期の癌では原発巣のみで良いが、それ以上の進行度では原発巣の他に予防的に頚部のリンパ節領域も含める。全体的に40-45 Gy(グレイ)を照射した後、照射野を縮小し、原発巣(元々癌ができた部位)に絞って照射を続行する。頸部リンパ節転移がある場合は、電子線を用いてリンパ節の部位にも照射を追加する。合計線量は、放射線治療単独では60-70 Gyが標準となる(合計回数は30-40回程度で6-8週間が必要である)。　外部照射単独よりも多くの治療線量を局所に投与することができる方法としては、¹⁹²Ir, ¹⁹⁸Auによる組織内部照射、軟口蓋には高エネルギー電子線口腔内照射がある。特に舌根部の症例については、¹⁹²Irワイヤーによる組織内照射を併用することによりT1, T2で80%程度の局所制御率が報告されている。　放射線治療単独での局所制御率については、全体では治癒率40-70%程度の成績が報告されているが、T3以上の進行症例では局所制御率は不良である。従って、T3以上の症例では、手術が第一選択となり、放射線治療法としては術前、術後照射が主体となる。　最近では、進行例においても根治を目指す試みとして多分割照射(1日2回週10回行う方法)や化学療法との同時併用が試みられている。頸部制御においてはN0, N1では放射線治療単独での制御は可能であるが、N2以上では制御が難しく、根治的頸部郭清術の適応となる。　放射線治療の副作用としては程度の差はあるが、口腔・咽頭の粘膜炎、唾液分泌減少、味覚傷害、皮膚炎がほぼ全例に認められる。一般的には、治療開始後約2週間で照射範囲に口内炎が起こってくる。これと同時にこの口内炎による痛みが徐々に増強してくる。痛みはの感じ方は実に個人差があり、ひどい場合には鎮痛剤の投与が必要になることも希ではない。口内炎とともに照射範囲内の皮膚に日焼けと同様な色素沈着が出現してくる。副作用があまりにも強くなると、治療の継続が難しくなることもある。コメント　　　　：　頭頸部癌の放射線治療においては、照射の休止期間が長くなると治療の効果が弱くなり、治癒率の低下を招くとされている。従って、治療中において担当医師が治療の継続が可能であると判断した場合は、できるだけ続けて治療を行うべきである。副作用は治療後数週間で改善するが、唾液分泌減少は長く続くことが多い。内部照射併用例は、照射部位に難治性潰瘍を形成することもある。参考資料１ Reference 1：呼吸器領域の主要概説折田　洋造川崎医科大学耳鼻咽喉科学腫瘍学系統概論　編者　妹尾亘明、pp.211-220, 南山堂、1986年、キーワード：中咽頭癌、放射線治療、機能温存、外部照射、内部照射、直線加速器、Ir-192, Au-198,Oropharyngeal neoplasm, radiotherapy, organ preservation 分類コード：030201,030203
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