喉頭癌の放射線治療

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作成： 1997/12/05 幡野　和男データ番号　　　：030046 喉頭癌の放射線治療目的　　　　　　：喉頭癌治療における放射線治療の実際と役割放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：直線加速器応用分野　　　　：医学、治療概要　　　　　　：　喉頭癌は発生部位により声門上、声門、声門下癌に3分類される。発生部位により初発症状にも差が見られる。声門癌は嗄声(声のかすれ)が出やすく、比較的早期に発見されやすいのに対し、声門上、声門下癌はいずれも症状が出にくく、進んだ状態で発見されることが多い。治療は早期のものであれば放射線治療のみで十分な制御が得られるが、進行したものでは手術が必要となる。最近は、進行癌に対しても、機能温存を図る意味で多分割照射を行う施設も見られる。詳細説明　　　　：　喉頭癌は中年以降に多く発生し、男女比は9：1と男性に多い。その発生因子として、喫煙や飲酒との関連が言われているが、はっきりとはしていない。しかし、喫煙者の方が死亡率が高いことは事実である。症状としては、声門癌であれば、嗄声(声のかすれ)が主症状である。声門上、声門下癌の場合には嗄声は進行しなければあらわれにくく、咽頭痛や通過障害(つかえ感)が初期症状であることが多い。このような症状が続く場合には耳鼻咽喉科の専門医を受診することを勧める。　喉頭癌の診断はどのようになされるのかについて述べよう。まず、最も簡便な方法として、間接喉頭鏡がある。これは、歯科でも良く使われている歯の裏を観察する時に使用される柄のついた鏡だが、これを使用すれば、比較的簡単に喉頭を観察することが可能である。あるいは細いファイバースコープで観察することも多い。これで癌が疑われた場合には、次に、もっと詳しく観察し、組織を一部採取する目的で全身痲酔下で直達鏡を行う。この結果癌細胞が確認されれば治療が開始される。この他に、X線CT、MR、超音波検査などが行われる。これらの検査により癌の進展範囲がわかるのである。　さて、喉頭癌と診断されたら次にはどのような治療法があるのだろうか。一般的には、手術療法、放射線療法、あるいはその両者の組み合わせ及びレーザー治療が考えられる。　レーザー治療は声門癌でしかも声帯の中1/3に癌が限局している極初期の癌が一般的な適応であり、進行癌にはほとんど適応はない。喉頭癌に対する治療法はその病期により異なる。喉頭癌の病期のうち放射線治療の対象になっている病期の分類を表1に示す。　　　　　　　　　表１　TNM分類による喉頭癌の病期分類　病期　原発腫瘍　　　所属　　　遠隔転移　　　　　　　　　リンパ節 Ⅰ期　　T1(Tis)　　　N0　　　　M0　　T1:声帯に限局した原発腫瘍、声帯運動正常　　　　　　　　　　　　　　　　　　Tis:粘膜上皮内癌(浸潤前癌) Ⅱ期　　T2　　　　　N0　　　　M0　　T2:声門上・声門下部に進展(喉頭に限局)、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　声帯運動は正常又は障害 Ⅲ期　　T3　　　　　N0　　　　M0　　T3:片側・両側声帯の運動障害・固着(喉頭に限局) 　　　　T1-3　　　　N1　　　　M0　　N1:患側に所属リンパ節を触れるが可動　 Ⅳ期　　T4　　　　　N1-2　　　M0　　T4:直接浸潤による喉頭外進展　　　　T1-4　　　　N2-3　　　M0　　N2:反対側・両側に所属リンパ節を触れる　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　が可動　　　　T1-4　　　　N1-3　　　M1　　N3:固定性所属リンパ節を触れる　　　　　　　　　　　　　　　　　　M0:遠隔転移なし、M1:遠隔転移あり　　一般的には、T1-2N0M0は放射線治療、T3N0M0は手術もしくは放射線治療、T1-3N1-3M0の原発巣は根治的放射線治療、頚部リンパ節は手術もしくは放射線治療、T4は原則として手術、症例により術前照射を行う。　放射線治療を行う際には、まず、腫瘍の進展範囲を肉眼所見、CT、MRなどの画像から正確に診断し、どの範囲に放射線を照射すればよいのかを判断する。その後、シミュレーションという作業を行う。図１に喉頭癌放射線治療におけるシミュレーション等のための頭部固定用シェルの設置状況を示す。図1　声門癌の治療の手順　a)照射装置への患者の設置　b)照射位置決定のためのシェル作成　c)シェルの設置状況　図1a)のような状態に患者を乗せたベッドを設置する。照射位置を決定するために患者の直接体表にはマークを付けず、図1b)のように患者個々の顔の型どりをし、専用のお面(シェルという)を作成して(図1c)、この上に照射野を描く。それが終わると、いよいよ治療である。治療時に、毎回このお面を被って治療を受ける。図２に右声帯に発生した癌声門癌の例を示す。図2　声門癌の間接喉頭鏡像　a)治療前　b)治療後　　通常は、喉頭(ちょうど喉仏の裏側)に対して左右から挟み撃ちにするように照射を行う。実際に照射する時間はほんの1-2分程度である。もちろん放射線は目に見えないし、痛みも感じることはない。これを通常、月曜から金曜まで週5回行い、これを6-7週間続けるのである。こうした治療により早期のものであれば90%以上は完治する。しかし、中には治療抵抗性の腫瘍もあり、この場合には最終的には手術となる。図2a)で認められた癌巣(→)が、上記の治療で2b)ではなくなっている。　放射線治療による副作用は、通常、治療中に現れるものと、治療が終了して数ヶ月から数年して現れるものとがあり非常に個人差がある。前者を早期反応というが、これは照射開始2週前後から出現する咽頭痛、嚥下障害、皮膚のただれ、味覚障害、唾液分泌低下などである。いずれもそれほどひどいものはなく、通常治療終了後2-3ヶ月で改善するものである。一方、後者には照射部位の皮膚の萎縮や繊維化などがある。もちろん、これらは照射線量にもよるが、腫瘍が大きく照射線量が増えた場合には喉頭の一部に潰瘍を作ることもあり得る。いずれも頻度は非常に低い。コメント　　　　：　喉頭癌における放射線治療の役割は十分認められており、今後はさらに進行癌への適用の期待も高まっている。キーワード：喉頭癌,laryngeal cancer,放射線治療,radiation therapy,嗄声,hoarseness,機能温存,organ preservation,直線加速器,linear accelerator,Ｘ線照射,X-ray irradiation 分類コード：030201,030402,030703
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