ヘリカルCTを用いる肺がん検診

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作成： 1998/03/24 山本　和高データ番号　　　：030040 ヘリカルCTを用いる肺がん検診目的　　　　　　：高速ヘリカルCTを用いた肺癌一次検診による早期肺癌の検出放射線の種別　　：エックス線放射線源　　　　：X線管応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：　1回の呼吸停止下に全肺を撮影できる高速ヘリカルCTを用いる肺癌検診では、従来の胸部単純X線撮影による肺癌検診に比べて発見率が5～10倍になり、特に、早期肺癌の症例数の増加が認められ、肺癌の治療成績の向上につながるものと期待される。被曝線量の増加、検査費用が高価であるといった問題点も少なくはないが、胸部単純X線撮影に代って肺癌検診に広く利用されるようになるであろう。詳細説明　　　　：　肺癌は増加しており悪性新生物による死因の第1位である。肺癌による死亡を減らすためには、外科的に完全治癒切除が行える早期に発見することが重要である。喀痰細胞診と胸部単純X線撮影による肺癌検診の受診者は約700万人近くに達しているが、肺癌による死亡者数は着実に増加している。従来の肺癌検診の効果は、胃癌など他の癌検診に比べるとかなり低く、アメリカでは胸部単純X線撮影による肺癌検診を受診したグループと受診しなかったグループの間には、肺癌による死亡率の有意な差は認められなかったという報告もある。この理由として、胸部単純X線撮影では縦隔や肋骨などの正常構造と重なる肺の病変は検出困難であり、また治癒が期待できる早期の肺腺癌はコントラストが低いために明瞭な異常影として描出できないということが考えられる。従来のCTでは検査に時間がかかり、被曝線量も大きいので検診への応用は困難であったが、1回の呼吸停止の間に全肺を撮影できる高速ヘリカルCTの登場により、肺癌検診にCTが利用されるようになった。　検診でのヘリカルCTの撮影条件は装置によって少し異なるが、管電圧120kVp、管電流50mA、ベッド移動速度2cm/秒で肺尖部より上腹部まで約30cmの範囲を呼吸停止下(約15秒)に撮影し、スライス厚1cmで画像再構成するのが標準的な方法である。読影は複数の放射線科または呼吸器内科の専門医により行われる。図1に胸部Ｘ線写真を示す。図1　胸部X線写真。　a)胸部単純Ｘ線写真　b)ヘリカルCT断層像（原論文1より引用）　図1aの胸部単純Ｘ線写真では異常を指摘できないが、図1bの検診ヘリカルCT断層像では胸椎の左側、心陰影と重なる部位に腫瘤影(矢印)が認められる。後日の手術にて肺腺癌、pT1N0M0 Stage 1であることがわかった。　長野県における6341名を対象とした肺癌一次検診の結果では31名が肺癌と診断され、発見率は約0.5%であったが、これは従来の肺癌検診の発見率0.03～0.05%の約10倍である。しかも、早期の肺癌が多く発見され質的にも改善された。また、びまん性肺疾患、肺感染症、縦隔腫瘍や乳癌などの治療を必要とする肺癌以外の種々の疾患も検出された。　ヘリカルCTによる肺癌検診での被曝線量は5 mSv程度といわれており、これは従来の胸部X線単純間接撮影の10～20倍で、胃癌検診での線量にほぼ等しい。ヘリカルCTによる肺癌検診における利益(ベネフィット)と被曝による危険性(リスク)の関係では、男性では35歳以上、女性では40歳以上になるとベネフィットがリスクを上回ると推定されている。検診に使用される高速ヘリカルCT搭載検診車の外観を図2に示す。図2　現場における肺癌検診車（原論文2より引用）　一般肺癌検診や災害等の緊急時にも必要とされる場所で検診が可能である。自家発電システムや低消費電力システムの特徴とともに画像伝送の機能も備えている。　検診における一般的な問題として、検診の診断能を低下させないで、どこまで被曝線量を低減できるかが大きな問題である。またヘリカルCTを用いる肺癌検診は従来の方法よりも高価であり、その経済的な負担を誰がするかなど未解決の問題も少なくはないが、ヘリカルCTによる肺癌検診は、治癒の期待できる早期肺癌の発見に有効であり、肺癌の治療成績の向上につながるものと期待される。従来の胸部単純X線撮影に代わって、今後の対肺癌戦略に重要な役割をになうものと考えられる。コメント　　　　：　ヘリカルCTにより非常に小さな腫瘤も検出され、精査を行っても肺癌かどうか確定診断が困難な症例も増加している。また、軽度の炎症性変化なども含めると多くの受診者において異常が指摘される。ヘリカルCTを用いる肺癌検診において発見された病変をどのように正確に診断し、適切な治療に結びつけられるかが、今後のヘリカルCTによる肺癌検診の受診者数の増加にともない、大きな課題になるであろう。原論文１ Data source 1：高速らせんCTを用いた肺癌一次検診システムの構築-初期臨床経験- 渡　潤、田島　広之、徐　向英、他日本医科大学放射線医学教室映像情報29(14)、833-838、1997 原論文２ Data source 2： Mobile CT 日立車載CTスキャナシステム㈱日立メディコ販促パンフレットキーワード：ヘリカルCT,helical CT,肺腫瘤,pulmonary nodule,肺癌,lung cancer,がん検診分類コード：030103、030401
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