心拍同期心筋SPECT

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作成： 1998/08/09 井上　登美夫データ番号　　　：030029 心拍同期心筋SPECT 目的　　　　　　：心筋SPECTの進歩放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：Tc-99m、放射性同位元素応用分野　　　　：医学、診断概要　　　　　　：　近年、ガンマカメラの性能の向上、Tc-99m標識心筋血流製剤の健康保険適用、画像解析用コンピュータの高速化といった技術開発が進み、高速で動く心臓を心電図と同期させることによって、1心拍を8-16分割した心筋断層像を撮影する技術が実用化された。この撮影法を心拍同期心筋SPECTと称する。この撮影法の導入によって、従来の心筋SPECTで得られる局所心筋血流の情報に加えて、左室局所壁運動能も解析できるようになった。詳細説明　　　　：　心筋SPECTは、核医学検査のなかで急速に検査件数の増加している検査方法であり、現在では骨シンチグラフィに続いて核医学イメージング検査として2番目に多い検査法となっている。主な対象疾患は3大成人病のひとつである心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患である。従来、Tl-201が心筋血流SPECT用製剤として用いられてきたが、物理的半減期の短いTc-99m MIBIやTc-99m TFといったTc-99m製剤が発売され、投与量を増やすことが可能となった。そこで情報量を多く必要とする心電図同期による心拍同期心筋SPECT(quantitative gated SPECT-QGS)の撮像が可能になってきた。さらに、画像解析用コンピュータの高速化といった技術開発にガンマカメラの性能の向上が加わり、高速で動く心臓を心電図と同期させることによって、1心拍を8-16分割した心筋断層像を撮影する技術が実用化された。全自動的に左室心筋の輪郭抽出を行い連続的に動く心臓の壁の変化を解析するソフトウエアがGermanoらにより実用化されるにいたり、最近急速にこの検査法が採用されるようになってきた。　実際の検査は、運動負荷時または安静時にTc-99m心筋製剤を555-740MBq静注し、バックグラウンドとしての肝胆道系の十分な洗い出しの得られる30-60分後より撮像を開始する。被験者に心電図モニタリングを行い、心電図波形の最も高いR波が発生したという情報と、Tc-99m製剤の画像データを一緒に核医学データ処理装置(コンピュータ)に転送する。R波は心筋収縮の情報であるが、R波発生時の心臓は最も拡張した状態であることから、次のR波の発生情報が入力されるまでの画像データを8-16分割してコンピュータ上の別々の記憶場所に記録する。1心拍の情報ではデータ量が少なすぎるため、実際には1方向につき20心拍前後のデータを加算してあたかも1心拍であるかのようなデータの積算を行う。したがって、撮像後、ただちに全自動的に左室心筋の輪郭を抽出することができる。図1にQGS法による左室輪郭抽出例を示す。図1　QGS法における左室輪郭抽出例　a)前壁高度欠損例、　b)肝臓高集積・前壁欠損例（原論文1より引用）　図1aは、前壁高度欠損例であり、心筋梗塞による血流欠損部があっても近似法によって自動的に輪郭が抽出されている。図1bは、肝臓高集積・前壁欠損例であり、前壁の集積低下に加えて下壁側に肝臓の集積が重なる場合であるが、心筋の輪郭が描出されている。心拍同期心筋シンチグラフィの臨床応用では、心筋梗塞症例に対し、血流イメージから梗塞部サイズを把握し、心拍同期データより左室駆出率、左室容量を同時に評価することができ、経過観察および予後評価に際し重要な情報を提供する。　これらのデータを解析して心筋の輪郭の変化を図2に示すような網目状の表示をし、3次元的に心筋壁の収縮、拡張の状態を示す。実際にはこの画像をシネモード表示によって動的に観察することができる。図２は、心筋血流イメージと局所収縮能の評価例を示す。図2　60才男性、前壁及び下壁梗塞症の左室機能解析例　a)短軸断層像及び断層モデル　b)上から見た輪郭抽出表示　c)横から見た輪郭抽出表示（原論文2より引用）　図2は前壁及び下壁心筋梗塞症例であり、図2a)の2列に並べられた通常の心筋断層像では、前壁(①→)、中隔(②→)、下壁(③→)の血流欠損像が見られる。図2b、c)は、左室機能解析例を示し、2b)は上から見た像であり、左室内腔側の輪郭は中隔(septal)側でほとんど変化せず、中隔の壁運動不良が診断できる。一方、2c)の横から見た像では、心尖部(apex)と下壁(inferior)側がほとんど動いていない。これらの結果から、前壁、心尖、下壁の壁運動不良が診断できる。　この解析法は動きの変化だけではなく、心内腔容量の変化に加えて自動的に左室駆出率(LVEF)も計算する。図3に、QGS法(gated SPECT)と心プールシンチグラフィ(MUGA)とにより算出したLVEFを示す。図3　心拍同期心筋SPECT法(gated SPECT)及び心プールシンチグラフィ(MUGA)により算出したLVEF(左室駆出率)の相関性（原論文2より引用）　QGS法で算出したLVEFは、従来の方法で算出したLVEFと非常によく相関することがわかる。相関係数r=0.91であり高い直線相関を示している。コメント　　　　：　QGS法は、心筋血流と心機能の同時評価が可能である。梗塞部局所に関して、血流低下の程度とその部位の局所収縮能を同時に把握でき、その重症度評価ならび心筋活性評価に有用である。また治療後の経過観察にも有用である。さらに、従来の心筋SPECTの評価で問題になっていたartifactによるトレーサ集積の低下による誤診を防ぐことも可能であるなど多くのメリットがある。残念ながら、心拍と同期させるため、不整脈がある患者に施行できないのが欠点である。原論文１ Data source 1： ⁹⁹^mTc-MIBI心電図同期心筋SPECTによる左室機能自動計測の信頼性の検討下津　順子、石田　良雄、村川　圭三、片淵　哲朗、福地　一樹、林田　孝平、高宮　誠国立循環器病センタ-放射線診療部核医学 34,pp1093-1099,1997. 原論文２ Data source 2：心拍同期心筋SPECT 汲田　伸一郎、中條　秀信、隈崎　達夫日本医科大学　放射線医学 SPECT機能画像-定量化の基礎と臨床-(西村恒彦　編 )pp138-143,1998. 参考資料１ Reference 1： Automatic quantitation of ejection fraction from gated myocardial perfusion SPECT. Germano G J Nucl Med、26、pp17-2,1995. キーワード：心拍同期, ECG gated, 心筋SPECT,myocardial SPECT,定量的心電図同期心筋SPECT,quantitative gated SPECT,QGS, Tc-99m製剤,Tc-99m radiopharmaceuticals,心筋梗塞症,myocardial infarct,左室容量,left ventricular volume,左室駆出率,left ventricular ejection fraction,LVEF 分類コード：030102,030301,030401
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