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作成: 1998/05/22 井上 登美夫

データ番号   :030027
腎の核医学検査
目的      :MAG3による腎機能評価法の開発
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :Tc-99m
応用分野    :医学、診断、核医学検査

概要      :
 腎の核医学検査の最大の特徴は、左右腎総量のERPFの算出とともに、左右腎個々の定量的な腎機能検査ができることである。Tc-99m-メルカプトアセチルトリグリシンは、腎抽出率が高くシャープなレノグラムが得られる。また、ガンマカメラに適したエネルギー141 keVを持つTc-99mで標識されているため画質の良い腎動態画像が得られる。ここでは、クリアランス測定法として、1回静注採血法と1回静注ガンマカメラ法とについて紹介する。

詳細説明    :
 腎臓核医学領域での近年の話題は、Tc-99m-メルカプトアセチルトリグリシン(99mTc-mercaptoacetyltriglycine-MAG3)の実用化である。MAG3は、血中からのクリアランスが早く、かつガンマカメラに適したエネルギー141 keVを持つTc-99mで標識されているため画質の良い腎動態画像が得られる。MAG3の1回腎抽出率は、放射性ヨード(131Iまたは123I)標識ヨウ化馬尿酸(orthoiodohippuricacid-OIH)の60-70%であるが、ジエチレントリアミン五酢酸テクネチウム(99mTc)(99mTc DTPA)よりは腎抽出率が高くシャープなレノグラムが得られる。我が国では、123I OIHの販売が中止され、また131IOIHの販売も近く中止されるため、レノグラム製剤としては、MAG3が主流になりつつある。腎機能検査において、有効腎血漿流量(effective renal plasma flow-ERPF)は、腎全体の機能容量を示すものとして最適であることから、近年、様々なMAG3のクリアランス測定法が開発されるようになった。
 腎の核医学検査の最大の特徴は、左右腎総量のERPFの算出とともに、左右腎個々の定量的な分腎機能測定ができることである。ここで腎機能の理解を助けるために、腎の機能単位の構造模型を図1に示す。


図1 腎の機能単位(ネフロン)のを構造模型(原論文1より引用)

 腎臓の働きは、大きく分けると次の3つである。
�\限里梁綣媚妻�、老廃物の体外排泄機能、
��体内の電解質の保持および調節機能、
�7谿気猟汗瓠�造血ならびに骨代謝に関するホルモン分泌機能。
 尿生成・排泄に関連しては、図1に示したネフロンで行われ、糸球体からボーマン嚢への限外ろ過と、尿細管周囲毛細血管網から尿細管細胞を介する尿細管内への分泌の2つの経路がある。
 MAG3は、血中で高率に蛋白と結合するため、糸球体での濾過量が少なく、近位尿細管への分泌が中心となることから、腎血漿流量(RPF)を代表する物質といえる。そこでMAG3の腎クリアランスを測定すると、近位尿細管機能をも定量的に測定できることができる。
 パラアミノヒプラン(para-aminohippuran-PAH)に代表される古典的なクリアランス測定では、持続的に薬剤を注入して、血中の薬剤濃度が一定になった状態で尿中の薬剤排泄速度と血中濃度を求めて、両者の比(1分間当たりの尿中排泄量/血中濃度)を、その薬剤の腎クリアランスとして算出する。この方法は最も正確な手法であるが大変煩雑であり、実際の臨床検査には不向きである。
 そこで持続注入法の代用として薬剤を1回投与(1回静注)後、血液を採取し6-8回の血液サンプルデータから得た薬剤の血中濃度消失曲線を、生体内の血管内と血管外の2つのコンパートメントに分布するとした理論式にあてはめ、クリアランスを求める方法がある。
 
1.1回静注採血法
 そのモデルを図2に示す。


図2 1回静注法と2コンパートモデル。(原論文2より引用)

 血液中の薬剤の消失曲線からクリアランスを求める。すなわち、1回静注後一定時間ごとに採血しその中のMAG3濃度を血漿濃度としてプロットする。このプロットをつなぐ曲線からクリアランス(CL)を求めるために、中心となる循環コンパートメントと血液の分布がある血管外組織のコンパートメントを想定しその間の移動平衡を考える。中心コンパートメントからMAG3は、ある速度で腎を通って尿として排泄される。これを数式に表したのが図中のMAGクリアランスCLである。
 これらの複数回採血法や持続注入法のデータをもとに1回の採血結果からクリアランスを予測する経験式にあてはめる1回採血法のCLも図1下部に示す。この方式は従来からのレノグラム製剤のOIHで行われていたので、そのままMAG3に適応する研究が重ねられ、経験式が求められ実用化されている。
 MAG3は、腎への抽出率が低いため、OIHやPAHのクリアランスのように算出されたクリアランス値をERPFと見なすことはできない。そこでMAG3クリアランス自体を尿細管機能指標として評価する。
 1回採血法の回帰式としては、BubeckあるいはRussellの式が標準的であるが、Bubeck法の正常平均±SDは約260+/-45 ml/min/1.73m2であるのに対し、Russell法は約300+/-70ml/min/1.73m2とやや高値である。
 1回採血法は、実用的なMAG3クリアランス測定法であるが、核医学検査の得意とする分腎機能評価ができない。また、レノグラム作成と同時にできるものの1回でも採血を伴うことは、インビボ核医学の検査室内の作業としては煩雑さが伴う。そこで採血しないでMAG3クリアランスをもとめるガンマカメラ法が考案され、実用化されつつある。
 
2.1回静注ガンマカメラ法
 その解析法を図3に示す。


図3 ガンマカメラ法によるクリアランス測定法。 (原論文2より引用)

 採血するかわりにガンマカメラで、腎からの薬剤の消失曲線を解析してクリアランスを求める。MAG3投与後にガンマカメラで連像撮影した腎のイメージから、バックグラウンド及び腎の深さ方向の減衰補正した、MAG3投与1-2分前後の両側腎の放射能カウントを求める。投与前後に測定したシリンジのカウント差を投与量(D1-D2)として左右腎へのトレーサの腎摂取率(%ID)=腎摂取量/投与量を算定する。
 Taylorらは、複数回採血法で求めたMAG3クリアランスと腎集積量の関係を経験式にあてはめてMAG3クリアランスを求め、また伊藤らは1回採血法のデータから経験式を求めている。織内らは、経験式ではなく1コンパートメントモデルを適応し、MAG3クリアランスを算出する方法を考案し、プロトコールの標準化を試みている。その結果10施設の29例の正常値の変動係数は13.7%となり、正常値は412.5+/-56.51ml/min/1.73m2(平均±SD)という結果を得ている。

コメント    :
 新しい製剤であるMAG3による腎機能判定法は、すぐれた検査法であり、特に採血を必要としないガンマカメラ法は実際的な方法として、さらに精度の向上が期待される。
 Tc-99m メルカプトアセチルトリグリシン(Tc-99m-MAG3)は、放射性医薬品基準ではメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンテクネチウム(Tc-99m)(mercaptoacetylglycylglycylglycinetechnetium(99mTc))と称せられている。

原論文1 Data source 1:
腎機能解析法
秀毛 範至
旭川医科大学放射線科
臨床腎臓核医学 監修 玉木 長良 pp17-30,  第一ラジオアイソトープ研究所 1997

原論文2 Data source 2:
腎の核医学診断の進歩
井上 登美夫
群馬大学 医学部
医学のあゆみ, 7月別冊,pp139-142,1997

キーワード:Tc-99m-メルカプトアセチルトリグリシン, クリアランス測定、腎動態機能検査、ガンマカメラレノグラフィ、Tc-99m-mercaptoacetyltriglycine ,Tc-99m-MAG3, clerance measurement, renal dynamic function test, gammacamera renography
分類コード:030301,030502,030704

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