肝胆道系シンチグラフィ用注射剤

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作成： 1996/12/01 鷲野　弘明データ番号　　　：030019 肝胆道系シンチグラフィ用注射剤目的　　　　　　：肝胆道系シンチグラフィ用注射剤の特徴の説明放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：⁹⁹^mTc 応用分野　　　　：医学概要　　　　　　：肝胆道系シンチグラフィ用注射剤は、肝胆道系疾患の診断を目的とした診断用医薬品で、我国ではN-ピリドキシル-5-メチルトリプトファンテクネチウム(⁹⁹^mTc)注射液のみが製造販売されている。本注射液は、静脈内注射後速やかに血液中から消失して肝臓に集積し、次いで胆道系を経て腸管内に排泄される。肝胆道系に種々の疾患や機能障害がある場合、肝臓集積低下や腸管内排泄遅延などがシンチグラム上で観察でき、肝胆道系疾患及び機能の診断に有用である。詳細説明　　　　：　肝胆道系シンチグラフィ用注射剤は、肝胆道系疾患及び肝胆道機能診断を目的とした診断用医薬品である。我国では、現在N-ピリドキシル-5-メチルトリプトファンテクネチウム(⁹⁹^mTc)注射液(以下⁹⁹^mTc-PMT注射液)のみが製造販売されている。　本注射液は、肝胆道系が正常の場合、静脈内に注射されると速やかに血液中から消失してその大部分が肝臓に集積し、次いで胆道系を経て腸管内に排泄される。肝胆道系に種々の疾患や機能障害がある場合、その程度に応じて肝臓集積低下や腸管内排泄遅延など異常動態がシンチグラム上で観察でき、肝胆道系疾患及び機能の診断に有用である。特に、血中ビリルビンとの拮抗性及び尿中排泄率が過去の肝胆道診断薬と比べて低いため、血中ビリルビンが比較的高値の場合でも腎描出のほとんどない明瞭なシンチグラムが得られる。本注射液中のテクネチウム-99m(⁹⁹^mTc)は、物理的半減期(6.01時間)が短くβ線を放出しないため被検者の被曝が少なくてすみ、放出されるγ線のエネルギーがシンチレーションカメラに適しているため鮮明なシンチグラムをとることができる。 1. N-ピリドキシル-5-メチルトリプトファンテクネチウム(⁹⁹^mTc)注射液の組成　本注射液は、水性の注射液で、⁹⁹^mTcをN-ピリドキシル-5-メチルトリプトファンテクネチウムの形で含む。注射液の組成や特徴は、表1に示した。表1　N-ピリドキシル-5-メチルトリプトファンテクネチウム(⁹⁹^mTc)注射液の組成（原論文2より引用） ----------------------------------------------------------------- 組成　　　⁹⁹^mTcとして(検定日時において)　　　 185 MBq/2ml 　　　　　N-ピリドキシル-5-メチルトリプトファン 3.324 mg/2ml 　　　　　添加物　無水塩化第一スズ　　　　　　　　 0.142 mg/2ml 　　　　　添加物　アスコルビン酸　　　　　　　　　 19.814 mg/2ml ----------------------------------------------------------------- 性状　　　微黄色澄明の液ｐＨ　　　8.0～9.5 浸透圧比　約 0.7(0.9 %塩化ナトリウム溶液に対する比) ----------------------------------------------------------------- 2. ⁹⁹^mTc-PMT注射液の効能又は効果　肝胆道系疾患及び機能の診断。 3. ⁹⁹^mTc-PMT注射液の用法及び用量　通常、成人には本注射液74～185 MBqを静脈内に注射し、投与直後から適当な間隔をおいてシンチレーションカメラで経時的に肝胆道系シンチグラムをとる。投与量は、年齢、体重により適宜増減する。 4. ⁹⁹^mTc-PMT注射液の薬効薬理　本注射液は、静脈内投与されると速やかに血液中から消失し、肝・胆道系へ移行した後小腸へ排出される。腸管からの再吸収(腸管循環)は認められず、また、尿中排泄は少ない。血清ビリルビンに対する低い拮抗性を有し、高度黄疸例にも適用することができる。 5. ⁹⁹^mTc-PMT注射液の体内薬物動態　本注射液の血中消失半減期は、2.86±1.30分あるいは3.3±0.5分、また、尿中排泄率は2時間で2.10±0.91 %あるいは90分で2.1±0.3 %と報告されている。本注射液の血中停滞率と尿中排泄率を正常例とび慢性肝疾患及び軽度胆道系疾患について求めた結果を表２に示す。び慢性肝疾患の血中停滞率は正常例に比べて大きいが、軽度胆道系疾患の場合は、それほど上昇しないことがわかる。表2　肝胆道系疾患における⁹⁹^mTc-PMT注射液の動態（原論文2より引用） ----------------------------------------------------------------------- 　疾患群　　　　例数　血中停滞率(%) 尿中排泄率(%) 　 10分 40分 60分 ----------------------------------------------------------------------- 正常例　　　　 11例 8.20±1.56 2.38±0.44 1.86±0.61 び慢性肝疾患　 8例 24.2 ±9.8　 10.1 ±4.6 2.50±0.84 軽度胆道系疾患 4例 9.23±2.45 2.64±1.03 1.67±0.54 ----------------------------------------------------------------------- 6. ⁹⁹^mTc-PMT注射液の臨床適用　臨床試験において、本注射液が有効と報告された適応症は次のとおりである。 (1) 肝胆道系の形態及び機能の診断　　肝炎、肝硬変、肝癌、胆のう炎、胆石症(胆のう結石、胆管結石)、胆管癌、総胆管癌、胆道ジスキネジー、胆道拡張症、胆道閉鎖症、他 (2) 高度肝機能障害例における病変部の把握 (3) 乳児肝炎と先天性胆道閉鎖症の鑑別 (4) 胆道の完全閉塞か不完全閉塞かの鑑別 (5) PTCD後・内瘻術後のドレナージ効果の判定　代表的なシンチグラムの例を図1に示す。図1　高度肝機能障害患者の⁹⁹^mTc-PMTシンチグラム　　　　　下段は白血病で著明な黄疸を呈し、T.Bil 24.9 mg/dlと高値を示した患者のシンチグラムの例。肝臓集積低下及び胆道への排泄遅延が見られる。（原論文1より引用）健常人では、⁹⁹^mTc-PMTが５分以内に肝臓に集積し、30分後には大部分が排泄されている。しかし、肝機能障害者では、270分(6.5時間)後でも排泄されていないことがわかる。 7. ⁹⁹^mTc-PMT注射液の副作用臨床試験及び使用成績調査Ⅰ(全2,318例)において副作用が認められた例はなかった。また、現在までに副作用自発報告において、痙攣、動悸が各1件報告されている。原論文１ Data source 1：ヘパティメージ注、放射性医薬品基準　N-ピリドキシル-5-メチルトリプトファンテクネチウム(⁹⁹^mTc)注射液日本メジフィジックス株式会社パンフレット原論文２ Data source 2：放射性医薬品基準　N-ピリドキシル-5-メチルトリプトファンテクネチウム(⁹⁹^mTc)注射液 (社)日本アイソトープ協会インビボ放射性医薬品添付文書集(平成７年７月), p.114-115 参考資料１ Reference 1：油野　民雄他核医学 20，p.353-360, 1983 参考資料２ Reference 2：花栗　勝郎他基礎と臨床 17，p.1216-1226, 1983 参考資料３ Reference 3：渡辺　幸康他核医学 19，p.1589-1593, 1982 参考資料４ Reference 4：中村　和義他基礎と臨床 17，p.1227-1231, 1983 参考資料５ Reference 5：大竹　英二他画像診断 3，p.265-270, 1983 キーワード：放射性医薬品, N－ピリドキシル－5－メチルトリプトファンテクネチウム(99mTc)注射液, 肝胆道シンチグラフィ, 肝臓病, radiopharmaceutical, 99mTc-PMT, hepatobiliary scintigraphy, liver diseases 分類コード：030301,030401,030502,040204
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