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作成: 1997/01/16 神立 進

データ番号   :030015
放射線診断機器
目的      :放射線診断機器の紹介
放射線の種別  :エックス線
放射線源    :X線管
応用分野    :医学、農学、考古学

概要      :
 放射線診断は,実際には画像診断と言う状況になっている。外部から人間の体内を探る検査方法には,必ずしも放射線を用いる検査ばかりではない。昔は放射線を用いる方法しかなかったが,今では,超音波を用いる診断装置や磁気共鳴現象を利用する診断装置を使うことができるようになった。それぞれの診断装置には,得手不得手があるため,これらを組み合わせて病気の画像診断をするのが今日普通になっている。

詳細説明    :
1.一般X線撮影
 X線を人体にあてて,透過してきたX線をフィルムに記録するのに用いられれるのがこの一般X線撮影装置である。検査の原理そのものは単純で,人体中でのX線の減衰の程度が組織によって異なることを利用するものでり,もっとも古くから用いられてきた。本装置では非常に短時間で検査ができるため,様々な病気において,最初に行う検査の一つとなっている。肺癌や肺結核の検診にはもっとも一般的に使用される装置である。また,骨折の診断には必須の検査装置となっている。さらに造影剤と組み合わせて,この装置で各種臓器の形態撮影も行なわれている。例えば,バリウムを口から飲んで,食道や胃の検査や肛門からバリウムを入れて大腸の検査も行うことが出来る。血管から造影剤を注入し,血管形状そのものを調べる検査や腎臓からの造影剤の排泄を検査したりすることも出来る。
 装置は,X線発生管,X線絞り,撮影台からなっている。X線を発生させるためには,高電圧が必要で,そのため制御関係の機器が大がかりになる。

2.X線透視
 X線透視装置は,別名X線テレビと言っている。過去においては,現在のようにフィルムに焼き付けるのではなく人体を透過した放射線を蛍光板で受け,その像を直接見ることを行っていた。ところが,この方法では画像が暗く,またX線技師や医師が大量に放射線を浴びることが多いため現在ほとんどこの直視法は行われていない。現在の透視法では,遮蔽された部屋の外で医師や技師が放射線を浴びることなくモニター画面を観察する。
 本装置の構成を図1に示す。


図1 X線テレビジョンの系統図(原論文1より引用)

 透視法の原理は,人体を透過してきたX線をイメージ インテンシファイア(I.I)で光に変換し,次に撮像管やCCD(固体撮像素子)によりこれを増幅してモニター画面に表示する。最近のマイクロエレクトロニクスの進歩で画像は非常に明るくかつ鮮明になってきた。
 
3.X線CT
 X線CT装置は,回転部(ガントリーと言う)、患者寝台と操作卓からなり、操作卓には計算機部分も組み込まれており装置の運転制御とともに演算処理を行う。ガントリーには人体の周囲を回転するX線管があり、そこから出たX線を人体にあてて透過してきたX線を反対側にある検出器で捕まえ、操作卓の計算機で演算処理を行い人体の2次元像を作る。X線管の移動や検出器の個数、サイズさらにX線の走査方式で第一世代から現在では第四世代まで進展している。本装置の構成および第二世代以降の走査原理を図2に示す。


図2 X線CT装置の構成と走査方式の変遷(原論文2より引用)

 第一世代は1個づつのX線管と検出器とを使用していたが、第二世代以降からは複数の検出器を利用するようになった。第二世代では、直線走査と回転を繰り返すため比較的時間がかかる。第三世代では、X線管−検出器系の回転のみであり高速のデータ収集が出来る。第四世代では、X線管のみの回転であり、かつ1,000個以上の検出器を用いるためより高速でデータ収集ができる。
 本装置では検査対象の制限がほとんどなく、かつ検査時間が短いこと、X線フィルム上の画像の濃度と物質の内容が相関していることから臓器や骨の区別が出来ることなどの特徴があり、重要な診断装置の一つである。
 
4.磁気共鳴映像法(MRI−magnetic resonance imaging)
 強い磁石の中におかれた物体に高周波を当てると,特有の原子核が共鳴し,高周波を切ると共鳴が消滅する。この消滅の時に放出される微小な電磁波を収集し再構成することにより,この物体の2次元像を作成する装置である。現在多く用いられている対象元素は,水素原子核である。MRIの系統図を図3に示す。


図3 MRIの系統図(原論文3より引用)

 主磁石がありその周りにスライス面の選択用、位置検出用としての傾斜磁場コイルやRFコイルがある。
 核磁気共鳴を得るためには、強い磁石が必要であるため永久磁石,超電導磁石が用いられている。この2種の磁石のうちで超電導磁石の方が強い磁力を得ることができる。従って一般的に,超電導磁石の方が精細な画像が得られる。超電導を保つためには超低温が必要であるため、永久磁石を用いた装置に比べて規模の大きな装置になる。これに,高周波を出力するためのコイルと共鳴の消滅時に発生する電磁波を検出するためのRFコイルが必要となる。このコイルについては出力用コイルと検出用コイルを兼ねたものも作成され、装置の小型化を図っている。MRI検査の時に,大きな振動音が発生しているが,これはこれらのコイルが振動する音である。
 MRIで得られる画像は,CTと似ているが,骨が見えないこと,CTよりも多彩な断面の像が得られることが特徴である。体内に金属が入っていると検査ができないことがあり、例えば心臓のペースメーカーは,強い磁力や電磁波に曝されると壊れてしまうため,その使用者は検査禁忌となっている。
 
5.超音波
 超音波診断装置は,超音波を人体にあてて,その反射波を検出し,2次元画像を作成する器械である。魚群探知機と同じ原理を用いている。本装置を使用しても副作用がほとんどなく,人体への侵襲もほとんどないのがたの装置に比べて有利な点であるが、空気や骨は超音波が通過できないので,その部位での検査は不可能である。一方、骨等のない肝臓等の部位の診断にはなくてはならない検査法の一つとなっている。

コメント    :
 エレクトロニクス関係の進展により、各種装置は小型化されるとともに検査も短時間で終了できるように装置の開発が進展している。 

原論文1 Data source 1:
X線機械装置
原内 一
大阪大学医学部
診療放射線技術(上巻 改訂第9版)、立入弘、稲邑清也監修、山下一也、速水昭宗編集,p.51-58,南江堂1996

原論文2 Data source 2:
X線CT
遠藤真広
放射線医学総合研究所重粒子線研究部
放射線利用技術ハンドブック、編集者 石榑顕吉、舘野之男、富永洋、中澤正治、山口彦之、p.429-432,朝倉書店 1990

原論文3 Data source 3:
NMRによる診断
池平博夫
放射線医学総合研究所臨床研究部
放射線利用技術ハンドブック、編集者 石榑顕吉、舘野之男、富永洋、中澤正治、山口彦之、p.653-659,朝倉書店 1990

キーワード:一般X線撮影装置、X線透視装置、X線CT、MRI、超音波診断装置、radiograph,fluorosacope,X-ray computed tomography,magnetic resonance imaging,ultrasonic diagnostic
分類コード:030401,030102,030103,040301

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